木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第180話 嵐の前

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 ルベルとの話し合いから3日後、フェビルは新たな任務を与えるべく部下達を団長室に呼んだ。

 

「……とまぁそういうことだから、突然で申し訳ないが、ラピスには派遣される宮廷魔法師達の部隊に、カトレア嬢の護衛役として任務を全うしつつ、文官の護衛騎士を手伝って欲しい」
「ハッ! このラピス・フォルダン! 王国騎士として初めての護衛任務を拝命致します!」


 綺麗に敬礼をして任務を拝命したラピスに、フェビルは目を細めて問い質す。
 
 
「ラピス。これは、お前だから任せられる特別であり極秘の任務だ。この意味、婚約者が今どういう状況なのか分かっているお前なら、言わなくても分かっているよな?」
「無論です!!」


 (そんなの痛いくらい分かっている! だからこそ、今回の任務は俺に与えられたのだろう)

 宮廷魔法師団単独での魔物討伐の後、ラピスはカトレアに纏わる噂を嫌でも耳にしていた。
 
 だからこそ、彼は初めの護衛任務に並々ならぬ情熱を持っていた。

 そんな彼が、敬礼をしていない手で拳を握り締めると、フェビルがラピスの横にいたもう1人の部下に任務を与える。


「そして、シトリンにはルベル団長の調査に協力してもらう。これは、近衛騎士としての極秘任務ではなく、ジャグロット家の人間として依頼が来たと思ってくれ」
「ハッ! シトリン・ジャクロット! 謹んで拝命致します!」


 (『ジャグロット家の人間として』……つまり、時魔法使いとしての力を借りたいってわけだね。まぁ、陛下から許可が出れば使える力だから別に良いんだけど)

 普段は使うことを禁じられている闇魔法が久しぶりに使えて、シトリンは至極真面目な顔で拝命しつつも内心ほくそ笑む。
 すると、2人の後ろにいた人物から手が上がる。


「団長。少し、よろしいでしょう?」
「何だ、メスト?」


 2人に任務を与えて一安心していたフェビルは、面倒くさげな顔をしつつも鋭い眼光で、拝命する2人の上官として呼ばれていたメストに目を向ける。


「俺も、シトリンが協力する調査に同行してもよろしいでしょうか?」
「……メスト、それはどういうことか聞いても?」


 フェビルの後ろで静かに控えていたグレアが、見定めように目でメストを見つめる。
 それに対し、メストは上げていた手を降ろすと毅然とした表情でシトリンの隣に立つ。


「実は俺、休みの日に、その魔物討伐に参加していたんです」
「「「っ!?」」」
「ほう、詳しく聞かせてもらおうか?」


 (本当は、話したくはない。だが、シトリンがあの場所で時魔法を使うなら、これは話しておかないといけない)

 メストとフェビル以外の人間が絶句する中、小さく笑みを浮かべながら机の上で両手を組んだフェビルに、メストはカミルと共に赴いた魔物討伐について話す。


 ◇◇◇◇◇

 
「……つまり、お前が例の平民の家に遊びへ行っている時に魔物が現れ、例の平民が魔物討伐に行こうとしたからお前も一緒に行ったと。そういうことだな?」
「はい」


 真剣な表情のまま一通り話し終えたメストに、フェビルは真面目な顔でメストを見つめ、グレアとシトリンは揃って頭を抱え、ラピスは唖然とした表情でメストを見た。


「そもそも、騎士なら平民を魔物討伐の場に行かせちゃダメなんだけど……まぁ、あの騎士嫌いの彼が、メストの言うことを素直に聞いてくれるはずがないよね」
「そうだな。現に魔物が現れた時、単独で行こうとしていた」
「それはまた……随分と威勢が良いねぇ。王都の騎士達にも見習って欲しいものだよ」


 (それに、あのしなやかな身のこなしと鋭い剣裁きなら、たった1人でも大勢の魔物相手に平気で渡り合えそうだし……って、1年前にたった1人で渡り合っていたね)

 メストの話を聞いて頭を抱えていたシトリンが、苦笑いを浮かべながら話すと、傍にいたグレアは酷く疲れた顔で額に手を置くと深く溜息をつく。


「まぁ、休暇中に偶然遭遇したものでしたし、第二騎士団にいた頃は休暇中に魔物討伐なんてよくあったことでしたから、わざわざ報告しなかったのでしょうけども」
「申し訳ございません、副団長。こういうことになるのでしたら、最初から報告しておくべきでした」


 深々と頭を下げるメストに、グレアは小さく溜息をつくと、真剣な表情で考え事をしていたフェビルの口角が徐に上がる。


「そういうことなら、シトリンに同行しても別に構わないぞ」
「本当ですか!?」
「団長!!」


 驚きの声を上げるメストとグレアを交互に見やったフェビルは、ニカっと白い歯を見せて笑う。


「別に良いだろ? どうせ、時魔法を使うシトリンの護衛役が必要なんだ。だったら、シトリンの直属の上官であるメストを連れて行っても問題無いだろ」
「ですがそれは団長自らがすると、この前ルベル団長に手紙で……」


 困惑するグレアを一瞥したフェビルは、背もたれにゆっくりと体を預けると両手を頭の後ろで組む。


「それじゃあ俺は、王国騎士団長として宮廷魔法師団長様を護衛する。これなら、メストを連れて行く良い口実になるだろ?」
「そんな無茶苦茶な……」


 呆れたように頭を抱えるグレアを見て、フェビルの豪快な笑い声が部屋に響き渡る。


「ガハハハッ! 何、心配するな。ルベル団長には俺から手紙で言っておく」
「それは、そうしていただきたいのですが……」
「それに、ルベル団長以外であの場所にいた奴がいれば、調査も捗るんじゃねぇのか?」
「はぁ……まぁ、そうですね」


 呆れ顔のグレアが大きく溜息をつくと、フェビルの提案を渋々了承した。

 ――その約1ヶ月後。ラピスとカトレアのことを聞いたダリアが、帝国に行く2人の壮行会を兼ねた夜会を2人が帝国へ派遣される前日に開いた。
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