326 / 606
第5章 止まっていた運命が動き出す
第303話 平民1人と騎士2人
しおりを挟む
「カミル!」
「「っ!?」」
(この声、もしかしなくてもメスト様!?)
ついさっきまで話していた聞き馴染みのある男の声に、肩を震わせたカミルは咄嗟に声が聞こえた方を振り向く。
そこには、ラピスと同じく、使い込まれた全身鎧に身を包んだメストが肩で息をしながら立っていた。
「フリージア嬢。あの方ってもしかしなくても……」
「えぇ、あなたが思っている人で間違いないわ」
「本当かよ」
自分の上司であるメストを視界に入れ、双剣を下ろしたラピスは警戒するように睨みつける。
すると、息を整えたラピスが2人に合流した。
「カミル。良かった、無事で……って、君は!?」
(フォルダン家の家紋。ということは、ラピスか?!)
傷1つないカミルを見て安堵の笑みを浮かべたメストは、横にいたラピスに思わず目を見開く。
それを見たラピスは再びカミルに囁いた。
「なぁ、隊長はお前のことを……」
小さく首を横に振るカミルを見て、少しだけ眉を顰めたラピスはと小さく息を吐いた。
「まぁ、そうなるよな」
(今の隊長は、あの女と同じなのだから)
「ちょっと! 援軍なんて愚民の分際で卑怯じゃないかしら!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするぞ」
「何ですって!?」
(自分だって援軍を呼んでいるくせに何を言っているんだ?)
お門違いな文句を言ってきたダリアにラピスが淡々と言い返すと、憤慨したダリアを周囲にいた黄金の騎士達や宮廷魔法師達が宥め始める。
その様子を一瞥したカミルは、視線をメストに戻すと声をかける。
「それよりも、どうしてあなた様が?」
「もちろん、カミルを助けるためだ」
「っ!?」
(私を助けるために、わざわざ鎧姿になって戻ってきたってこと?)
メストの言葉に、カミルの中で嬉しさと同時に怒りがこみ上げる。
(助けに来てくれたことは素直に嬉しい。けれど、それと同じくらい……)
真剣な表情のメストに、カミルは冷たい目を向けて問い質す。
「だとしたら、ステインは一体どちらに? まさか、あの場所に放置したなんて言いませんよね?」
(あの子は、エドガスから受け継いだ大事な子。だから、あの子を危険に晒すような真似をしたら、いくらメスト様でも許せない!)
レイピアを持つ力が入るカミルに、メストは優しく微笑んだ。
「それなら心配するな。ちゃんと安全な場所に避難させている」
「安全な場所?」
「あぁ、あの近くに荷馬車用の馬小屋があるのは知っているよな? そこに避難させた」
「なるほど、それでしたら大丈夫そうですね」
(それに、あの馬小屋には結界魔法がかけられているから、ステインが危険な目に遭うことはないはず)
ステインが安全な場所に避難していると知ったカミルは内心安堵した。
すると、メストの視線がラピスの方に向けられた。
「ところでラピス。どうして君がここにいるんだ? それも、カミルと一緒に?」
(ラピスとカミルが親しくしているなんて話は聞いたことが無いが……)
不思議そうに小首を傾げるメストに、小さく下唇を噛んだラピスは小さく息を吐くと冷たい目を向けた。
「『カミル』ね。まぁ、今のあなたならそう呼ぶのでしょう」
「えっ?」
今のメストに、ラピスの言葉は不審がるのも無理はないとラピス自身分かっている。
それでも、記憶を取り戻したラピスは、メストがカミルを本当の名前で呼ばないことに苛立ちを感じてしまう。
だから、メストに対して八つ当たりのようなことを口にしてしまった。
それが、無駄なことだと分かっていても。
(そうか、今までフリージア嬢は、俺たちと会うたびにこんな虚しい気持ちになっていたのか)
無表情でメストを見るカミルの横顔に悔しさを覚えつつ、小さく溜息をついたラピスはメストに背を向けて双剣を構える。
「『あなたと同じ理由でここにいます』と言ったら納得してくれますか?」
「それは……」
「あと、今の俺は流れの冒険者です。そうじゃないと、あの女を騙すことが出来ませんから」
「っ!?」
ラピスの辛辣な言葉で視線を前に戻したメストは、騎士達や宮廷魔法師達に慰められているダリアを目の当たりにする。
「ダリア……」
(どうして、どうして君がこんな愚かなことをしている? 君は、この国の宰相家令嬢じゃなかったのか?)
カミルとラピスの殺気立った態度、そして、野次馬達がダリアに向けられる忌避な目に、ダリアの婚約者であるメストは言葉を失う。
そんな彼に、レイピアを構えたカミルがそっと囁く。
「言っておきますが、この事態を引き起こしたのは他ならない婚約者様です。私は……いや、私たちはそれを止めたにすぎません。ですから……」
カミルの冷たく放った一言は、メストの心に深く動揺を与えた。
「今のあなた様に、婚約者様に剣を向ける覚悟はありますか?」
「「っ!?」」
(この声、もしかしなくてもメスト様!?)
ついさっきまで話していた聞き馴染みのある男の声に、肩を震わせたカミルは咄嗟に声が聞こえた方を振り向く。
そこには、ラピスと同じく、使い込まれた全身鎧に身を包んだメストが肩で息をしながら立っていた。
「フリージア嬢。あの方ってもしかしなくても……」
「えぇ、あなたが思っている人で間違いないわ」
「本当かよ」
自分の上司であるメストを視界に入れ、双剣を下ろしたラピスは警戒するように睨みつける。
すると、息を整えたラピスが2人に合流した。
「カミル。良かった、無事で……って、君は!?」
(フォルダン家の家紋。ということは、ラピスか?!)
傷1つないカミルを見て安堵の笑みを浮かべたメストは、横にいたラピスに思わず目を見開く。
それを見たラピスは再びカミルに囁いた。
「なぁ、隊長はお前のことを……」
小さく首を横に振るカミルを見て、少しだけ眉を顰めたラピスはと小さく息を吐いた。
「まぁ、そうなるよな」
(今の隊長は、あの女と同じなのだから)
「ちょっと! 援軍なんて愚民の分際で卑怯じゃないかしら!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするぞ」
「何ですって!?」
(自分だって援軍を呼んでいるくせに何を言っているんだ?)
お門違いな文句を言ってきたダリアにラピスが淡々と言い返すと、憤慨したダリアを周囲にいた黄金の騎士達や宮廷魔法師達が宥め始める。
その様子を一瞥したカミルは、視線をメストに戻すと声をかける。
「それよりも、どうしてあなた様が?」
「もちろん、カミルを助けるためだ」
「っ!?」
(私を助けるために、わざわざ鎧姿になって戻ってきたってこと?)
メストの言葉に、カミルの中で嬉しさと同時に怒りがこみ上げる。
(助けに来てくれたことは素直に嬉しい。けれど、それと同じくらい……)
真剣な表情のメストに、カミルは冷たい目を向けて問い質す。
「だとしたら、ステインは一体どちらに? まさか、あの場所に放置したなんて言いませんよね?」
(あの子は、エドガスから受け継いだ大事な子。だから、あの子を危険に晒すような真似をしたら、いくらメスト様でも許せない!)
レイピアを持つ力が入るカミルに、メストは優しく微笑んだ。
「それなら心配するな。ちゃんと安全な場所に避難させている」
「安全な場所?」
「あぁ、あの近くに荷馬車用の馬小屋があるのは知っているよな? そこに避難させた」
「なるほど、それでしたら大丈夫そうですね」
(それに、あの馬小屋には結界魔法がかけられているから、ステインが危険な目に遭うことはないはず)
ステインが安全な場所に避難していると知ったカミルは内心安堵した。
すると、メストの視線がラピスの方に向けられた。
「ところでラピス。どうして君がここにいるんだ? それも、カミルと一緒に?」
(ラピスとカミルが親しくしているなんて話は聞いたことが無いが……)
不思議そうに小首を傾げるメストに、小さく下唇を噛んだラピスは小さく息を吐くと冷たい目を向けた。
「『カミル』ね。まぁ、今のあなたならそう呼ぶのでしょう」
「えっ?」
今のメストに、ラピスの言葉は不審がるのも無理はないとラピス自身分かっている。
それでも、記憶を取り戻したラピスは、メストがカミルを本当の名前で呼ばないことに苛立ちを感じてしまう。
だから、メストに対して八つ当たりのようなことを口にしてしまった。
それが、無駄なことだと分かっていても。
(そうか、今までフリージア嬢は、俺たちと会うたびにこんな虚しい気持ちになっていたのか)
無表情でメストを見るカミルの横顔に悔しさを覚えつつ、小さく溜息をついたラピスはメストに背を向けて双剣を構える。
「『あなたと同じ理由でここにいます』と言ったら納得してくれますか?」
「それは……」
「あと、今の俺は流れの冒険者です。そうじゃないと、あの女を騙すことが出来ませんから」
「っ!?」
ラピスの辛辣な言葉で視線を前に戻したメストは、騎士達や宮廷魔法師達に慰められているダリアを目の当たりにする。
「ダリア……」
(どうして、どうして君がこんな愚かなことをしている? 君は、この国の宰相家令嬢じゃなかったのか?)
カミルとラピスの殺気立った態度、そして、野次馬達がダリアに向けられる忌避な目に、ダリアの婚約者であるメストは言葉を失う。
そんな彼に、レイピアを構えたカミルがそっと囁く。
「言っておきますが、この事態を引き起こしたのは他ならない婚約者様です。私は……いや、私たちはそれを止めたにすぎません。ですから……」
カミルの冷たく放った一言は、メストの心に深く動揺を与えた。
「今のあなた様に、婚約者様に剣を向ける覚悟はありますか?」
7
あなたにおすすめの小説
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる