468 / 606
第7章 余興と奇貨の建国祭
第437話 行ってきなさい
しおりを挟む
「あれは!」
(まさか、本当に実行するなんて!)
レクシャから『もしかすると、フリージアの家が狙われるかもしれない』と言われていたラピスは、カトレアが指差した先の木々の隙間から見えてきた灰色の煙を見て、みるみる顔を青ざめさせる。
すると、眉を顰めたライドが騎士達に指示を出すとカトレアとラピスに駆け寄る。
「カトレア嬢、どうかされたか?」
「実は……」
そう言って、おずおずと煙の見えた方を差すと目を見開いた。
「山火事か! すまない、魔物討伐に集中しすぎて見落としてしまった! ありがとう、カトレア嬢。今からそちら方に向かって……」
「いや、ここはカトレア君とラピス君に任せても良いんじゃないかな」
「マーザス殿」
のんびりとした口調で会話に入ってきたマーザスは、懐から望遠鏡を取り出すと遠くに見える灰色の煙に目をやる。
「うん、見た限り魔法でつけられたものではないし、煙の立ち方からしてまだ燃えてばかりだから今行けば間に合うかも」
「マーザス殿、ここからでも見えるのですか?」
「見えるよ。なにせ、この魔道具は遠望魔法を付与したものだから、ここからでも十分状況が把握出来るよ」
「状況までも見えるのですか?!」
顔を青ざめさせながら鬼気迫る雰囲気で詰め寄るカトレアに、僅かに眉を顰めたマーザスは笑みを潜めると視線を遠くに見える煙に戻す。
「ログハウスと小さな小屋が2つある場所に人がたくさんいるね。服装からして村人かな?」
「……恐らく、その場所に集まっている村人はリアスタ村の村人達かと」
「カトレア嬢、場所が分かるのか?」
驚いた顔をするライドに、険しい顔をしたカトレアが小さく頷く。
「あの場所は、私にとってかけがえのない友人が住んでいる場所なのです」
「それって、団長がおっしゃっていたあれか!」
カトレアの言葉を聞いて驚くライドとは反対に、静かに目を伏せたマーザスは望遠鏡型魔道具を懐に戻す。
「ならば、事情を知っている君たちが行った方が良いね」
「ですが、まだ魔法陣が……」
(いくら公爵様から『フリージアの家に何かあったら、その場から抜けていい』と言われているからとはいえ、魔法がまだ1つしか解放されただけの状況で抜けるわけが……)
「それなら問題ない」
「ライド隊長?」
不思議そうに小首を傾げるカトレアに、小さく息を吐いたライドは真剣な表情でカトレアとラピスを見やる。
「実は、こういうこともあろうかと、団長から君たちを行かせるように指示を受けている」
「団長というのは……第二騎士団の団長ですか?」
「そうだ。正確には、近衛騎士団長からなのかもしれないけど」
「それって……!?」
(公爵様がフェビルこの時のことを考えて根回しをされていたということ?)
「ここに来る前に、団長から『もしも、カトレア嬢とラピス君が抜け出したいと言った時は、遠慮なく送り出して欲しい』と」
「そんなことを……」
今聞かされたレクシャの親切心にカトレアとラピスが言葉を失っていると、マーザスが2人の肩を叩く。
「2人なら必ず友人のために動くだろうと思っていたんだろうね。まぁ、僕も友人のために来たようなものだし」
「マーザス様……」
ゆっくりと振り返った2人に、マーザスはお茶目な笑みを浮かべてウインクをする。
「安心して、ここには帝国の筆頭宮廷魔法師も、洗練された有能な騎士達も、魔力を無効化出来る精鋭もいる。だから、魔法陣のことは僕たちに任せて、君たちは君たちが助けたいものを助けてきなさい」
「そうだ。君たちには取り戻したいものがあるのだろうから」
マーザスとライドの言葉を聞き、カトレアとラピスは互いに目を合わせると静かに頷いて2人に向かって静かに頭を下げる。
「ありがとうございます! 行こう、カトレア!」
「えぇ! お2人とも後はよろしくお願いいたします!」
「あぁ、任せておけ!」
「それじゃあ、僕からの餞別として君たちをあの場所に送るよ」
「「えっ!?」」
驚いた顔をするカトレアとラピスを見て、楽しそうな笑みを浮かべたマーザスは、右手小指に嵌っている指輪に魔力を流す。
「それじゃあ、行くよ。《テレポート》」
若き宮廷魔法師と騎士を送り出したマーザスとライドは、互いに顔を見合わせると笑みを浮かべる。
「若いねぇ~。まぁ、そういうところは嫌いじゃない」
「私も同じくです」
「あ、分かっちゃいます?」
「えぇ、まぁ……さて、我々は我々の仕事をしましょう」
「そうですね」
小さく頷いた筆頭宮廷魔法師は、第二騎士団の隊長率いる騎士達や黒いフードの集団と共に次の魔法陣へと向かった。
(まさか、本当に実行するなんて!)
レクシャから『もしかすると、フリージアの家が狙われるかもしれない』と言われていたラピスは、カトレアが指差した先の木々の隙間から見えてきた灰色の煙を見て、みるみる顔を青ざめさせる。
すると、眉を顰めたライドが騎士達に指示を出すとカトレアとラピスに駆け寄る。
「カトレア嬢、どうかされたか?」
「実は……」
そう言って、おずおずと煙の見えた方を差すと目を見開いた。
「山火事か! すまない、魔物討伐に集中しすぎて見落としてしまった! ありがとう、カトレア嬢。今からそちら方に向かって……」
「いや、ここはカトレア君とラピス君に任せても良いんじゃないかな」
「マーザス殿」
のんびりとした口調で会話に入ってきたマーザスは、懐から望遠鏡を取り出すと遠くに見える灰色の煙に目をやる。
「うん、見た限り魔法でつけられたものではないし、煙の立ち方からしてまだ燃えてばかりだから今行けば間に合うかも」
「マーザス殿、ここからでも見えるのですか?」
「見えるよ。なにせ、この魔道具は遠望魔法を付与したものだから、ここからでも十分状況が把握出来るよ」
「状況までも見えるのですか?!」
顔を青ざめさせながら鬼気迫る雰囲気で詰め寄るカトレアに、僅かに眉を顰めたマーザスは笑みを潜めると視線を遠くに見える煙に戻す。
「ログハウスと小さな小屋が2つある場所に人がたくさんいるね。服装からして村人かな?」
「……恐らく、その場所に集まっている村人はリアスタ村の村人達かと」
「カトレア嬢、場所が分かるのか?」
驚いた顔をするライドに、険しい顔をしたカトレアが小さく頷く。
「あの場所は、私にとってかけがえのない友人が住んでいる場所なのです」
「それって、団長がおっしゃっていたあれか!」
カトレアの言葉を聞いて驚くライドとは反対に、静かに目を伏せたマーザスは望遠鏡型魔道具を懐に戻す。
「ならば、事情を知っている君たちが行った方が良いね」
「ですが、まだ魔法陣が……」
(いくら公爵様から『フリージアの家に何かあったら、その場から抜けていい』と言われているからとはいえ、魔法がまだ1つしか解放されただけの状況で抜けるわけが……)
「それなら問題ない」
「ライド隊長?」
不思議そうに小首を傾げるカトレアに、小さく息を吐いたライドは真剣な表情でカトレアとラピスを見やる。
「実は、こういうこともあろうかと、団長から君たちを行かせるように指示を受けている」
「団長というのは……第二騎士団の団長ですか?」
「そうだ。正確には、近衛騎士団長からなのかもしれないけど」
「それって……!?」
(公爵様がフェビルこの時のことを考えて根回しをされていたということ?)
「ここに来る前に、団長から『もしも、カトレア嬢とラピス君が抜け出したいと言った時は、遠慮なく送り出して欲しい』と」
「そんなことを……」
今聞かされたレクシャの親切心にカトレアとラピスが言葉を失っていると、マーザスが2人の肩を叩く。
「2人なら必ず友人のために動くだろうと思っていたんだろうね。まぁ、僕も友人のために来たようなものだし」
「マーザス様……」
ゆっくりと振り返った2人に、マーザスはお茶目な笑みを浮かべてウインクをする。
「安心して、ここには帝国の筆頭宮廷魔法師も、洗練された有能な騎士達も、魔力を無効化出来る精鋭もいる。だから、魔法陣のことは僕たちに任せて、君たちは君たちが助けたいものを助けてきなさい」
「そうだ。君たちには取り戻したいものがあるのだろうから」
マーザスとライドの言葉を聞き、カトレアとラピスは互いに目を合わせると静かに頷いて2人に向かって静かに頭を下げる。
「ありがとうございます! 行こう、カトレア!」
「えぇ! お2人とも後はよろしくお願いいたします!」
「あぁ、任せておけ!」
「それじゃあ、僕からの餞別として君たちをあの場所に送るよ」
「「えっ!?」」
驚いた顔をするカトレアとラピスを見て、楽しそうな笑みを浮かべたマーザスは、右手小指に嵌っている指輪に魔力を流す。
「それじゃあ、行くよ。《テレポート》」
若き宮廷魔法師と騎士を送り出したマーザスとライドは、互いに顔を見合わせると笑みを浮かべる。
「若いねぇ~。まぁ、そういうところは嫌いじゃない」
「私も同じくです」
「あ、分かっちゃいます?」
「えぇ、まぁ……さて、我々は我々の仕事をしましょう」
「そうですね」
小さく頷いた筆頭宮廷魔法師は、第二騎士団の隊長率いる騎士達や黒いフードの集団と共に次の魔法陣へと向かった。
9
あなたにおすすめの小説
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる