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今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)
お触り禁止
しおりを挟む「部長、みんな、後3日、くれないか」
「どうした柊崎」
「作り直す」
先日苦労して完成させたと言っていた楽譜をビリビリと破り捨てる。
メロディだけ先に聞いたが、とても素敵で、今日から練習するの、凄く楽しみにしてたのに…!
「ちょっ、柊崎先輩!?なんで」
「勝つため」
「今のでも充分いい曲なのに…!」
「それじゃだめだ。もっと、もっと良くできる」
「でももう3週間もないんですよ!?」
「もし、俺の曲のせいで負けたら、俺はどんな顔をしてお前に会えばいいんだ」
「先輩……なんで、そんな」
「真宮が今でも忙しいの、寝れてないの、見てりゃわかる。そこに条件付けたとはいえあんな奴らのためにこれ以上負担を増やす訳にはいかないだろう」
ぐしゃりと頭を雑に撫でられる。
言葉や行動は少し乱暴だけど、それは私を思う優しさなのは伝わってくる。
「だから、時間をください。形はできてるからそうかからない」
「────いいだろう。間に合わなければ前の曲でやるぞ」
「はい!────そうだ、真宮」
「なんでしょうか?」
「例の約束、ここで使わせてくれ」
「──────え?」
「条件……なにかな」
「私のメインは管弦楽部です。先程の年間スケジュール見ればわかるとおり、忙しいです。そしてそこに学年代表としての仕事も入ります」
「そうだね、間を空けずに大会や演奏会が入ってた。学年代表の仕事も後期になればもっと多くなるだろうね」
「なので私は、軽音楽部としての活動は週一10分のみとさせて頂きます」
部活動に参加しないとなると、入部したのに何故、とめんどくさいことになること間違いなし。
なら最低限の参加でよしとしてもらう方が遥かにいい。
それにこれだけなら楽器やらないという意思表示にもなる。
出来ないし。
「えっ、じゃあ楽器やらないの!?合わせらんないじゃん!」
「今はヴァイオリンで手一杯です。これ以上増やしたくない」
「でも、真宮姫愛といえば、コンクールで賞を総なめにしたという伝説のピアニストで…」
「無理です。てか弾けません。ただでさえ部長や先輩方より相当下手で凹んでるってのに…!」
「先輩抜かれるとさすがに面目丸潰れかなー?」
「大会のような校外活動がもしあれば、マネージャーみたいなのとして参加しますが、スケジュールが空いていればです。問題ないですか」
ちなみにこれはハル様にお会いしたいだけである。
一目見たら満足するから、するから!!
大会は最前ドセン取って暴れる予定です!!
「まぁ、無理を言って入ってもらうんだ。週一10分、という時間は気になるが……致し方ない」
「できれば僕の次のキーボードとして入って欲しかったんだけどね…」
「まだ入るって確定してませんけどね!」
「あとぶっちゃけ、管弦楽部勝った時のメリットが薄すぎてなにかしら欲しいですよね」
「向こうは存続と真宮入部だしな。確かに不公平だ」
「廃部になれば、空いた教室練習に使える、くらいだもんねぇ…真宮ちゃん掛けるには対価が軽すぎるよ」
「私に金輪際近付かないのは絶対としてー…」
「東妻さん」
「柊崎くん、だっけ?なにかな」
「貴方の作る曲を、作った曲を下さい」
───────?
ど、どういうことだ…?
何故柊崎先輩が遥斗の曲を…。
「それは、君名義で売るつもりなのかい?」
「違います。俺は、1年の歌声でしか聴いたことありませんが───」
ぱちり、と目が合う。
え、なんでこっち見る?
「貴方の曲を必要としてる人がいる。廃部になることで世に出ないのであれば、コネを使ってでも送り出そうと思った迄です」
「僕の、曲を…?」
もしかして、温室で諒太郎の歌を聴いた時の…?
まぁ、あの、目の前で泣きましたけれど…?
「────ボソッ」
「……そういうことなら、構わないよ」
「成立だな」
「俺達も他に浮かばないし、これでいいと思う」
「では───」
「よかったー。神前先生、中後先生、会長たちから許可頂きましたー!」
「ん、じゃあ誓約書、だっけか?作っとくわー。明日には渡せるようにしとく」
「まぁ、これを機に屋外ステージの利用者が増えてくれればいいですがね…」
「え、なんで顧問たちが」
「だって、ここだけの話にしたらなかったことにされるかもしれないじゃないですか」
「ウッ」
「誓約書作ってー、ステージで宣言してー、約束、守ってもらわないと♡」
うふふ♡と笑えば、ピッと泣き出す人が数名。…?
さーて、先生の作る誓約書にもう少し手を加えなきゃ!
とりあえず、どう転んでもお触り禁止は入れておこう…。
出来た誓約書は両部長に捺印してもらい、コピーをそれぞれ渡す。
私もコピーをもらい、原本はラミネートで改竄不可にし、寮の鍵付き引き出しにしまっておいた。
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