一方的に婚約破棄してきたくせに私ともう一度婚約だなんて、馬鹿にしないでください

よるひこ

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淑女教育は公爵邸にて

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私にお家事情を指摘されて不愉快そうに顔を歪ませるリリー様。エドワード様にまだ抱きしめられてますから、彼女の醜い表情をエドワード様が見る事はできません。実に残念です。

どうせ顔を上げれば、いつもの彼女・・・悲しそうに同情を求めるような顔になるのでしょうが。

案の定、リリー嬢は顔を上げて、エドワード様を見上げました。そして一筋の涙を流されました。

「エド、分かってると思うけれど、私はあなたが王太子だから好きになったわけではないのよ?あなたがあなただから・・・出会ったその瞬間に運命を感じた程に、あなたを愛してしまったのよ。むしろ王太子であるあなたとの関係はやめるべきだと理解はしてるの。でも感情が理解に追いつかないの」

何を言ってるのでしょう。調べはついてるのですよ?
あなたは学園に入ってからすぐに、数多の男性に声をかけておられたそうではありませんか。その都度『運命だわ』と言ってたそうですね。随分と軽い運命があったものです。

あくまで表面上は笑みを浮かべたまま、私は首を振って言いました。

「残念ながら貴族社会では感情だけではどうにもならない事が多々あるのです。貴女が男爵令嬢としてエドワード様の側室になられるのは可能ではあるでしょうが・・・いかんせん、お育ちが宜しくないと批判の的となるのは見えております」

実際、彼女は礼儀がなってない。礼儀知らずだ。そもそもエドワード様と知り合う事も出来ない立場のはずなのに、彼女はその無礼さをもってエドワード様に近付いた。

これまで彼女のようなタイプがそばに居なかったエドワード様は簡単に洗脳されてしまったのだ。リリー嬢のような女性はこれまで居なかった、なんと自由奔放で素晴らしい女性かと。

とんでもない。貴族女性が自由奔放でどうするのですか。私が自由奔放にやってしまったら、後々どれだけの混乱を招くとお思いで?

けれど愚かな男女は目先の欲にかられ、何も見えてません。

「どうでしょう、我が公爵家にお住まいになりませんか?そして令嬢としての様々なことを勉強なさいませんか?そうすればきっとエドワード様の横に居ても面倒ごとは減ると思いますが」

自身を虐めていた者の家に住むなんて、本来なら断る案件でしょう。
ですがきっとリリー嬢は受け入れます。だって彼女は本当は私がやってないこと、知ってるのですから。彼女の自作自演か、はたまた全くの別人がやったのかは知りません。ただその事実を私に罪をかぶせたのです。私を陥れるのに最高のシチュエーションだと、彼女は考えて行動したのです。

だからきっと・・・彼女は受け入れるでしょう。
今どれだけエドワード様と懇意にしてようとも、まだ帰る場所は男爵家。貧しい男爵家なのです。
それが一転、最高の環境が整った公爵家で生活出来るとなるのです。

きっと彼女は・・・

「私、貴女のやったことは許しません。けれど確かに私は淑女としてのマナーが勉強不足だとは思ってます。ですから・・・たとえまた虐められても、私は耐えます。耐えて、エドワード様に相応しいレディになります。・・・そのお誘い、お受けします」

その言葉に感動したのか、目に涙をためてエドワード様がリリー嬢の顔を覗き込みました。それにニコリと笑みを帰すリリー嬢。

「リリー・・・」
「待っててねエドワード様。私完璧な淑女になってみせますわ」
「ああ。君はなんて素晴らしい女性なんだ。おいジュリアン、リリーに何かしてみろ、絶対に許さないからな」

リリー嬢に向ける甘い目線と大違いの、睨むような目を向けられても私はニコニコと微笑み続けました。
話は決まりですね。

「ではリリー様、早速お部屋へご案内いたしましょう」
「え、今から?一度帰ってお父様に・・・」
「それは勿論構いませんよ。ですがお部屋の候補は複数ありますからね、準備もございますのでご希望の部屋だけでも決めていただいたほうが早く動けると思うのです」
「そ、それもそうね。複数あるの?出来るだけ広くて豪華でバルコニーのある部屋がいいわ!」
「ええございますよ。ではこちらへ・・・あ、エドワード様はしばしお待ちください」
「なぜだ」
「殿方に女性の部屋をおいそれと見せるわけにはいきません」
「む・・・」

それ以上は強く出れないと思ったのでしょう。
エドワード様はしぶしぶ椅子に腰かけて、紅茶に手を伸ばすのでした。

「ああお前、エドワード様のお茶はきっと冷めてしまってるわ。新しいのをお入れして頂戴」

近くのメイドに命じれば、すぐに彼女は動いた。
優秀なメイドは、私の命令に忠実に動く・・・。
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