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始めましょう
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中庭に戻れば、紅茶を飲みながらお茶菓子をバクバク食べているエドワード様が居た。
「リリーはどうした?」
「お部屋が気に入られたようでして、まだお部屋におられますよ」
「それはいいが、お前、リリーを虐めるような事をするなよ?」
「ご心配でしたら、エドワード様もこちらにお住みになられますか?」
「そんなこと出来るわけないだろう」
一応最低限の常識は持っていたようで良かったです。だからといってエドワード様がまともだなんて微塵も思いませんが。
「しかしそろそろ戻らんといかん時間だな。おいリリーを呼んで来い」
「私の迎えでは彼女は従いませんよ。エドワード様が直々にお迎えに行かれた方が宜しいのではないでしょうか?」
「それもそうか。案内しろ」
どこまでも不遜な方ですね。たまたま王子として生まれただけですのに、あなたの何がそんなに偉いのでしょう?実力も無いくせに。
こんな男のどこが良かったのかとあらためて思いつつ、私はエドワード様の前を歩きます。
そして屋敷内の階段の前で止まりました。
「こちらですよ」
「何を言ってる、これは地下へと繋がる階段ではないか」
そう、私が指し示した先には地下への階段があります。照明も何もなく、階段の先がまるで地獄へと続いてるかのごとく、真っ暗闇で何も見えない。
顔をしかめるエドワード様にニコリと私は微笑みました。
「ですから、この先にリリー様がおられるのですよ」
「どういうことだ・・・?」
流石に何かおかしいと感じたのでしょう。怪訝な顔で私を見たその瞬間・・・
「ぐ・・・?」
突如、エドワード様の体が傾きました。
そのまま床に座るように倒れ込みます。
「な、んだ・・・視界が回る・・・立って・・・られ、ない・・・」
そのまま床に突っ伏し、意識を失ってしまいました。それを私は無表情で見下ろして、側にいた使用人に命じます。
「地下牢に繋いでおいて」
「かしこまりました」
どこの貴族でも・・・とは言いませんが、上位貴族ならば大抵お屋敷に隠し部屋を持っているものです。それはいざという時の逃げ場所であったり、見られてはまずい物を置いてたり。
そして今回のように・・・
「準備は出来てる?」
「はい、直ぐに始められるよう整えております」
「ありがとう。分かってるとは思うけど、お父様たちには内緒よ?」
「心得ております」
さすが私に忠実なだけのことはありますね。信用できる者しか常にそばに置きませんが、こういう時には実に役に立ちます。
「じゃあコレ持って来てね」
そう言って私はコレーー眠りこけるエドワード様を足で軽くこづいて、使用人が持っていたランプを受け取り階段を下りて行いきました。
長く暗い階段にコツコツと靴音だけが響き、私は無言でランプを掲げながら下ります。見知った場所でなければ足を踏み外しそうな急ですが、私にとっては慣れ親しんだ場所。子供の頃は秘密基地の気分でよく利用していたものです。ふふ、私にだってお転婆な時期もあったのですよ。
コツンと音を立てて最後の段を踏みました。やや遅れてエドワード様を担いだ使用人が続きます。
「とりあえずエドワード様は後よ。そこに繋いでおいて」
「はっ」
小気味よい返事と共に使用人がエドワード様を鎖に繋ぐ。ジャラリと音が響いたが、エドワード様が起きる様子はない。それはそうでしょう、あの薬は高いのですよ。使用人に案に命じた睡眠薬入りの紅茶を飲んだエドワード様は、ちょっとやそっとの物音では起きないはずです。即効性がないのが問題ですが、今回はそれが逆に役立ちましたね。良いタイミングで眠ってくれましたから。
未だ眠り続けるエドワード様を一瞥して、私は正面へと目線を移しました。
そこには・・・先ほど床に開いた穴から落ちたリリー様が立っていた。否、立った状態で鎖に繋がれていたのだ。こちらも眠っている・・・というより気を失っている。
私は近付いて、ペチペチとその頬を叩いた。
「うう・・・ん・・・?」
鬱陶しそうに眉をしかめた直後、ゆっくりとリリー嬢の目が開き・・・そして驚愕に見開かれた。
「ジュリアン様?・・・え、何これ、どういう状況!?」
先ほどまで公爵邸内の部屋を見ていたはずなのに、状況の変化に驚いているご様子ですね。
「おはようございます、リリー様」
場違いなまでに清々しい、美しい私の笑顔。リリー様は言葉も出ないご様子です。
「始めましょうか」
「始め・・・え、な、なんなの?一体何を・・・」
私はそばにあった小ぶりの鞭を手にします。その鞭が置かれていた机には、他にも様々な器具が置かれてるのですが・・・その辺の説明は省きましょう。どうせこれから分かります。
そしてリリー嬢にも説明は不要だったようです。それらを見て、一気に顔が青ざめるのが、暗い地下室でもよく分かりましたから。
「な、何を・・・」
「始めましょう。リリー様の教育を」
さあ、楽しい授業の始まりです。
「リリーはどうした?」
「お部屋が気に入られたようでして、まだお部屋におられますよ」
「それはいいが、お前、リリーを虐めるような事をするなよ?」
「ご心配でしたら、エドワード様もこちらにお住みになられますか?」
「そんなこと出来るわけないだろう」
一応最低限の常識は持っていたようで良かったです。だからといってエドワード様がまともだなんて微塵も思いませんが。
「しかしそろそろ戻らんといかん時間だな。おいリリーを呼んで来い」
「私の迎えでは彼女は従いませんよ。エドワード様が直々にお迎えに行かれた方が宜しいのではないでしょうか?」
「それもそうか。案内しろ」
どこまでも不遜な方ですね。たまたま王子として生まれただけですのに、あなたの何がそんなに偉いのでしょう?実力も無いくせに。
こんな男のどこが良かったのかとあらためて思いつつ、私はエドワード様の前を歩きます。
そして屋敷内の階段の前で止まりました。
「こちらですよ」
「何を言ってる、これは地下へと繋がる階段ではないか」
そう、私が指し示した先には地下への階段があります。照明も何もなく、階段の先がまるで地獄へと続いてるかのごとく、真っ暗闇で何も見えない。
顔をしかめるエドワード様にニコリと私は微笑みました。
「ですから、この先にリリー様がおられるのですよ」
「どういうことだ・・・?」
流石に何かおかしいと感じたのでしょう。怪訝な顔で私を見たその瞬間・・・
「ぐ・・・?」
突如、エドワード様の体が傾きました。
そのまま床に座るように倒れ込みます。
「な、んだ・・・視界が回る・・・立って・・・られ、ない・・・」
そのまま床に突っ伏し、意識を失ってしまいました。それを私は無表情で見下ろして、側にいた使用人に命じます。
「地下牢に繋いでおいて」
「かしこまりました」
どこの貴族でも・・・とは言いませんが、上位貴族ならば大抵お屋敷に隠し部屋を持っているものです。それはいざという時の逃げ場所であったり、見られてはまずい物を置いてたり。
そして今回のように・・・
「準備は出来てる?」
「はい、直ぐに始められるよう整えております」
「ありがとう。分かってるとは思うけど、お父様たちには内緒よ?」
「心得ております」
さすが私に忠実なだけのことはありますね。信用できる者しか常にそばに置きませんが、こういう時には実に役に立ちます。
「じゃあコレ持って来てね」
そう言って私はコレーー眠りこけるエドワード様を足で軽くこづいて、使用人が持っていたランプを受け取り階段を下りて行いきました。
長く暗い階段にコツコツと靴音だけが響き、私は無言でランプを掲げながら下ります。見知った場所でなければ足を踏み外しそうな急ですが、私にとっては慣れ親しんだ場所。子供の頃は秘密基地の気分でよく利用していたものです。ふふ、私にだってお転婆な時期もあったのですよ。
コツンと音を立てて最後の段を踏みました。やや遅れてエドワード様を担いだ使用人が続きます。
「とりあえずエドワード様は後よ。そこに繋いでおいて」
「はっ」
小気味よい返事と共に使用人がエドワード様を鎖に繋ぐ。ジャラリと音が響いたが、エドワード様が起きる様子はない。それはそうでしょう、あの薬は高いのですよ。使用人に案に命じた睡眠薬入りの紅茶を飲んだエドワード様は、ちょっとやそっとの物音では起きないはずです。即効性がないのが問題ですが、今回はそれが逆に役立ちましたね。良いタイミングで眠ってくれましたから。
未だ眠り続けるエドワード様を一瞥して、私は正面へと目線を移しました。
そこには・・・先ほど床に開いた穴から落ちたリリー様が立っていた。否、立った状態で鎖に繋がれていたのだ。こちらも眠っている・・・というより気を失っている。
私は近付いて、ペチペチとその頬を叩いた。
「うう・・・ん・・・?」
鬱陶しそうに眉をしかめた直後、ゆっくりとリリー嬢の目が開き・・・そして驚愕に見開かれた。
「ジュリアン様?・・・え、何これ、どういう状況!?」
先ほどまで公爵邸内の部屋を見ていたはずなのに、状況の変化に驚いているご様子ですね。
「おはようございます、リリー様」
場違いなまでに清々しい、美しい私の笑顔。リリー様は言葉も出ないご様子です。
「始めましょうか」
「始め・・・え、な、なんなの?一体何を・・・」
私はそばにあった小ぶりの鞭を手にします。その鞭が置かれていた机には、他にも様々な器具が置かれてるのですが・・・その辺の説明は省きましょう。どうせこれから分かります。
そしてリリー嬢にも説明は不要だったようです。それらを見て、一気に顔が青ざめるのが、暗い地下室でもよく分かりましたから。
「な、何を・・・」
「始めましょう。リリー様の教育を」
さあ、楽しい授業の始まりです。
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