一方的に婚約破棄してきたくせに私ともう一度婚約だなんて、馬鹿にしないでください

よるひこ

文字の大きさ
7 / 10

始めましょう

しおりを挟む
中庭に戻れば、紅茶を飲みながらお茶菓子をバクバク食べているエドワード様が居た。

「リリーはどうした?」
「お部屋が気に入られたようでして、まだお部屋におられますよ」
「それはいいが、お前、リリーを虐めるような事をするなよ?」
「ご心配でしたら、エドワード様もこちらにお住みになられますか?」
「そんなこと出来るわけないだろう」

一応最低限の常識は持っていたようで良かったです。だからといってエドワード様がまともだなんて微塵も思いませんが。

「しかしそろそろ戻らんといかん時間だな。おいリリーを呼んで来い」
「私の迎えでは彼女は従いませんよ。エドワード様が直々にお迎えに行かれた方が宜しいのではないでしょうか?」
「それもそうか。案内しろ」

どこまでも不遜な方ですね。たまたま王子として生まれただけですのに、あなたの何がそんなに偉いのでしょう?実力も無いくせに。

こんな男のどこが良かったのかとあらためて思いつつ、私はエドワード様の前を歩きます。
そして屋敷内の階段の前で止まりました。

「こちらですよ」
「何を言ってる、これは地下へと繋がる階段ではないか」

そう、私が指し示した先には地下への階段があります。照明も何もなく、階段の先がまるで地獄へと続いてるかのごとく、真っ暗闇で何も見えない。
顔をしかめるエドワード様にニコリと私は微笑みました。

「ですから、この先にリリー様がおられるのですよ」
「どういうことだ・・・?」

流石に何かおかしいと感じたのでしょう。怪訝な顔で私を見たその瞬間・・・

「ぐ・・・?」

突如、エドワード様の体が傾きました。
そのまま床に座るように倒れ込みます。

「な、んだ・・・視界が回る・・・立って・・・られ、ない・・・」

そのまま床に突っ伏し、意識を失ってしまいました。それを私は無表情で見下ろして、側にいた使用人に命じます。

「地下牢に繋いでおいて」
「かしこまりました」

どこの貴族でも・・・とは言いませんが、上位貴族ならば大抵お屋敷に隠し部屋を持っているものです。それはいざという時の逃げ場所であったり、見られてはまずい物を置いてたり。
そして今回のように・・・

「準備は出来てる?」
「はい、直ぐに始められるよう整えております」
「ありがとう。分かってるとは思うけど、お父様たちには内緒よ?」
「心得ております」

さすが私に忠実なだけのことはありますね。信用できる者しか常にそばに置きませんが、こういう時には実に役に立ちます。

「じゃあコレ持って来てね」

そう言って私はコレーー眠りこけるエドワード様を足で軽くこづいて、使用人が持っていたランプを受け取り階段を下りて行いきました。

長く暗い階段にコツコツと靴音だけが響き、私は無言でランプを掲げながら下ります。見知った場所でなければ足を踏み外しそうな急ですが、私にとっては慣れ親しんだ場所。子供の頃は秘密基地の気分でよく利用していたものです。ふふ、私にだってお転婆な時期もあったのですよ。

コツンと音を立てて最後の段を踏みました。やや遅れてエドワード様を担いだ使用人が続きます。

「とりあえずエドワード様は後よ。そこに繋いでおいて」
「はっ」

小気味よい返事と共に使用人がエドワード様を鎖に繋ぐ。ジャラリと音が響いたが、エドワード様が起きる様子はない。それはそうでしょう、あの薬は高いのですよ。使用人に案に命じた睡眠薬入りの紅茶を飲んだエドワード様は、ちょっとやそっとの物音では起きないはずです。即効性がないのが問題ですが、今回はそれが逆に役立ちましたね。良いタイミングで眠ってくれましたから。

未だ眠り続けるエドワード様を一瞥して、私は正面へと目線を移しました。
そこには・・・先ほど床に開いた穴から落ちたリリー様が立っていた。否、立った状態で鎖に繋がれていたのだ。こちらも眠っている・・・というより気を失っている。

私は近付いて、ペチペチとその頬を叩いた。

「うう・・・ん・・・?」

鬱陶しそうに眉をしかめた直後、ゆっくりとリリー嬢の目が開き・・・そして驚愕に見開かれた。

「ジュリアン様?・・・え、何これ、どういう状況!?」

先ほどまで公爵邸内の部屋を見ていたはずなのに、状況の変化に驚いているご様子ですね。

「おはようございます、リリー様」

場違いなまでに清々しい、美しい私の笑顔。リリー様は言葉も出ないご様子です。

「始めましょうか」
「始め・・・え、な、なんなの?一体何を・・・」

私はそばにあった小ぶりのむちを手にします。その鞭が置かれていた机には、他にも様々な器具が置かれてるのですが・・・その辺の説明は省きましょう。どうせこれから分かります。

そしてリリー嬢にも説明は不要だったようです。それらを見て、一気に顔が青ざめるのが、暗い地下室でもよく分かりましたから。

「な、何を・・・」
「始めましょう。リリー様の教育を」

さあ、楽しい授業の始まりです。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言

夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので…… 短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 このお話は小説家になろう様にも掲載しています。

何か、勘違いしてません?

シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。 マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。 それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。 しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく… ※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

処理中です...