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男色ではない

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「アリス、共に寝ると言っても俺の部屋にベッドは1つしかない。」
「知ってます。だから一緒に寝るんです。」
「一緒に…と言われても。」
「パーティーの時は一緒に寝ました!」
「…あれはお前が男だと思ってたからだ。でなければ俺はソファーで寝てた。」
「弟だと思えばいいだけの話です。」
「アリス、どんなに男の子っぽく見られても、お前は女だ。一つ一つの行動は考えるんだ。」
「だって、ハーブのやつがこの城にいるかもしれないって、丸眼鏡が言ってた…。」

また捕まるかもしれない。

「そいつが見つかるまで一緒に寝るとか言うんじゃ…、はぁ…わかった。明日からマアサの部屋で寝るんだ。だったら怖くないだろう。」
「……むぅ」
「何をふくれている。…嫌なのか?なら俺の部屋にベッドを置く。それでいいだろ。」
「王様優しい!」
「王様じゃない。」
「…ふぁびあん……。」
「同じ部屋に寝るといっても、出入りするときは自分の部屋から出るんだ。」
「一緒に出たらダメなんですか?」
「…ついこの間まで、俺との接触を避けてたのは何故だ?」
「マアサ様の計画に巻き込まれたくないからです。」
「なら、今の行動は?」

確かに…。術中にはまっている気がする。

「じゃあ、早く捕まえてください。」
「出来るならやっている。密偵だ、もういない可能性もある。」
「……とりあえず、今日は一緒に寝るんです。」
「はいはい。」
「ふぁびあんは大人だから、それくらいしてくれてもいいと思います!」
「アリスはもうすぐ18才だから、もうちょっと女らしくするといいんじゃないか?」
「ファビアンと一緒にいたいんですっ!!」

…ん?何を言ってるの?わたし。

「一緒にいたい…。どういう意味でだ?」
「…怖い時に助けてくれたから。安心する。」
「ヒーロー…みたいなものか。」
「そうです!それですっ!」
「俺以上に安心できて一緒にいたい男はいないのか?」
「お父さん。」
「父親抜きでだ。」
「う~ん、王様が1番ですね。」

私が答えると、王様が変な顔をしている。

「どうしたんですか?」
「…お前はもう少し考えてから、発言して行動しろ。」
「?」



何をキョトンとしているんだ。
勘違いするぞ。今の俺は。
アリスは男の子のようだと言われていても、近くで見ていればやはり女の子だ。今まで『近寄るな』と噛みついてた子が寄ってくれば普通に嬉しい。

まぁ、ヒーロー扱いされてる俺は『よしよし』と頭を撫でるくらいしか出来ないが…。
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