ごめんなさい。人間に化けてた嘘つき魔王と結婚なんてムリです!

シンさん

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魔法使い

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何ということでしょう。

私はちょっとだけ魔法を使えるようになったのです。
どんなかというと、重いものを軽く持ち上げられるようになっただけよ。女の子はね、可愛げもなくワインの樽を1人で運ばないのよ!

たとえ運ぶとしても、魔法なら浮かせて持っていくとか、そういうのがいいの。
しかも、犬人間ゴマ蛇男ハク吸血鬼ヒルは持てないのよ!

どういう事?
本物の化け物が持てないのを私で補っただけ、補助よ!
ご飯を作ってほしいよりも、重いものを運んでほしいの間違いでしょ…。

「今日のご飯は何かな?」
「…………」
「何を怒ってるんだい?」
「魔法をといて。」
「何故?」
「私は人間でいたいの。魔法なんて使えなくてもいいの。」
「人間にだって魔法を使える人くらいるよ。」
「そんなの聞いた事がない。」

「そりゃ、まれな存在だからね。」
「自力ならいいと思う。けど、私のは後付けでしょう。いらないわ。」
「でも、重い物をリディアに持たせるわけには」
「重い物を持つのが前提で魔法をかけないで。もっと簡単に料理が作れる魔法とか、そんなのにしてください!」
「でもそれではリディアの料理ではなくなってしまう。」

……そうよ。魔法なんかで作ったら、それこそ何が入ってるのかわからないじゃない。この世の物体じゃない物かもしれない!

重い物を運ぶ…
家を出て男に紛れて働くかもだし、この際これでいいか…。ってそういう事じゃないんだった。

「私は人間でいたいの!」




お試し10日目

ヒマだわ。
ここから出してくれないし。出ても犬人間ゴマがついてくるし。

「リディア」
「はい。」
「お出掛けしないかい?」
「…侯爵様はお仕事は大丈夫なのですか?」
「この前の葡萄畑を視察がてらだからね。」
「…また30分位でつくんですか?」
「……そうだね。嫌かい?」

早く着くならそれはそれで楽だからいいんだけど…。それこそ人間じゃないのを再確認する事になるんだよね。

「リディア…その『侯爵様』ってやめようか。一応婚約者だからね。」

「『魔王様』」
「『侯爵様』でお願いします。」
魔王メンフィス様の世界は魔王メンフィス様がいなくて困らないんですか?」
「別に、そんなにやる事があるわけでも無いからね。」
「王様なのに?」

魔王の世界に行ってくれれば、そのうちに逃げられるんだけどな…。

「リディア、俺がこの世界からいなくなるのは、リディアと別れる時だけだよ。」

よまれてた…。

「あっ!ちょっと止まってください!」
「リディアどうしたんだ?」
「あの馬車、落石に巻き込まれてるみたいなので、様子を見てきます。」
「ああ、俺も行くよ。何かあるかもしれない。」


「カナール、ランダ、大丈夫かい?」
「あぁメンフィス様、実はこの道に落石があって、ここで立ち往生なんでさぁ。」
「そうか、何とかしよう。」
カナール、ランダ…きちんと名前を憶えてるんだ。侯爵領だなんて凄い大きいはずなのに。

「リディア、この石を谷底へ捨ててくれるかい?」

…普通に考えて無理でしょ。少し力持ちになったけど、私の背丈の3倍くらいある大岩を動かせって。出来たらもう立ち直れない。
「せーのっ!」
ガコ…ガラガラ
片手で簡単に持ち上げられた!
「おおー!お嬢ちゃん凄いなー!」
「もしかしてメンフィス様の婚約者、未来の侯爵夫人ですか?」
「ああ、そうなんだ。もうすぐ結婚を」
「っしません!」
「リディア、そんな事言わずに、ね?」
「知りません!先に馬車にもどります!!」

「メンフィス様、頑張ってくださいね。」

「彼女、この領民全て魔物だって知らねぇんですか?」

「うん…。嫌われたくないから…。」
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