とある少年の奮闘記

シンさん

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未確認生物

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「バスティ!起きろ!!ユーマだ!!」
「ん……?」
「起きろ!何か来たぞ!」

デカい!
熊が立って歩いてるみたいだ。
トマスの所に逃げないと!!
俺はバスティを引っ張って部屋をでた。

「トマス!トマスっ!どこだっ!!」

呼ぶとレイモンドが先に俺のもとへ来た。

「どうしました?」
「ユーマがいるっ!!」
「ゆーま?」
「わっかんねぇけど、熊みたいなの!熊人間っ!!」
「熊人間…」

レイモンドのこの顔、絶対に信じてない!!

「いるんだって!俺の部屋の窓から見えたし、もう近くに来てるかもしれない!」
「ちょっと確認してきます。」
「ダメだ!熊だったら食われるぞ!」
「バスティ、コタローをダイニングへ。」
「はい」

レイモンドに言われて、バスティは俺を肩に担いだ。

「あっ!こら!離せっ!!」
「何を騒いでるんですか?」
「おお!!トマス、いいところに!!庭に熊人間がいるんだ!レイモンドが食われるかもしれない!」
「は?熊人間?」
「いいから、レイモンドを追いかけろ!!」

そう命令してもトマスは動かない。

「おい!何で行かないんだよ!」
「私はコタローの護衛だからです。」
「俺はバスティと家にいるから大丈夫だって!」
「大丈夫かどうかは私が判断します。」
「……わかった」

トマスにギロリと睨まれて、結局俺が折れることになった。

10分ほどしてレイモンドが帰って来た。

「熊人間に襲われなかったか!?」
「そんなもの、居ませんでしたよ。」
「ええっ!?」

絶対にいた。俺は見た。熊みたいだけど顔だけ猿っぽくて、おまけに二足歩行!

「バスティ、これが何か解りますか?」
「いいえ、見た事ありません。」

レイモンドが針金みたいな物をバスティに見せている。
もしや、熊人間の毛じゃ…
いや、そうに違いない!

「ちょっとコレ借りる!」

レイモンドから針金みたいなのを奪って、俺は部屋へ戻った。

取説で何か解るかもしれない。


「この針金みたいな物の取説でてこい!」

ポンっと音を立てて出てきたのは、トランプくらいの大きさの取説。

ちっさくね…?

ユーマだぞ。熊人間なんだぞ。もっと、図鑑みたいなの出てきてもいいんじゃないか?
いや、量や大きさより質だ。

取説をペラリとめくると、1ページ目に『熊人間』と書いてある…。

「……」

ホントに役に立たない能力だな、取説魔法とやらは…。
何をどうすれば、俺が名付けた名前が取説に出てくるんだよ!

今は『熊人間』があっていたという前提で読もう。
次のページだ!

【熊人間】
ミクニレニアでジーク・アサフェルトが初めて目撃。
未確認生物に熊人間と名前をつける。

※体格
耳の形、付いてる位置は熊に近い。
聴覚、嗅覚は犬と同等。
身長は大きいもので3~4m
体重は100キロを超える。
体は針金のような太く硬い毛でおおわれており、剣や鉄砲では殺せないほど頑丈。

「これは、トマスでも倒せないんじゃ…」

激ヤバ案件だ。
こんなのに襲われたら、俺達終わりだ。


※性格

非常に温厚、マイペース、のんびり

※体質

暑さ寒さに非常に強い。
食事は1日1回。雑食、食べるものはほぼ人間と同じ。好物はバナナ。
食べた物は全て栄養として体に吸収される。よって、一生排泄をしない。


なんて画期的な生き物なんだ。熊人間こそ時代の最先端だ。


コンコン
「コタロー、朝食ですよ。」
「今行く!」

朝飯中、レイモンドに根掘り葉掘り『熊人間』について聞かれるに違いない。
取説を見せれば解るけど、『この本はどこから持ってきた?』となる。
偽物疑惑が浮上…なんて事になるかもしれない。

マジで使えねぇな、この魔法!!

「今日の朝ごはん何?」
「ポテトサラダのサンドイッチと、ヤギのミルクです。」
「……ヤギのミルク、飲まなきゃダメなのか?」
「駄目ですね。」
「今日は飲まない事にする…」
「許しません。」
「あれ飲むと腹くだす…。俺の腸はデリケートなんだ。だから、飲まないと決めた!」
「なら、朝食抜きです。」
「ゴメンナサイ」

何でお腹が緩くなるのに飲まされるんだ。
きっと、嫌がらせに違いない!

「コタロー、熊人間とは何ですか?」
「未確認生物だ。」
「では、何故熊人間と?」
「熊みたいにデカかったからだよ。見た事ないもんを見て『あれは何ですか?』って聞かれたら、見た目で答えるしかねぇし。」
「まぁそうですが、そんな大きな生き物がいるなら、コタローを当分外には出せませんね。」

えっ?
という事は、当分トマスの特訓をしなくてよくなるのか?

「コタローは、今日からお家でお勉強です。」
「熊人間なんていなかった。あれは俺の見間違いだった。寝ぼけてた。そうだ、ソウニチガイナイ。」

勉強なんて絶対に嫌だ。
今、俺が唯一日本より楽だと感じてるのは、勉強をしなくていいことなんだから!
それ以外には良かったと思える事が、この世界に1つもない。

家族にも友達にも2度と会えないし……

プチホームシックな俺。

「バスティはもう面積のもとめ方も覚えましたよ。」
「先週まで文字が読めなかったのに?」
「数字は理解出来てましたし暗算も得意、将来かなり有望です。」

賢人に褒められてる。

「バスティ、お前すげぇな。」
「俺?」
「頭いいってレイモンドが褒めてる。俺なんて怒られるか呆れられるばっかなのに。」
「レイモンドが俺を?」
「コタローと違い、真面目で素晴らしい、私の自慢の弟子ですよ。」

いつの間にか、バスティまで弟子扱いしてやがる。

「明日、皆で出かけよう。まだ農具も手に入れてないし。」

勉強と特訓から逃げるにはこれしかない。

「倉庫にありますよ。」
「え?」
「食料を届けてくれる業者に、届けて貰いました。」
「そういうのは早く言えよ。」

よし、明日からトマスの特訓じゃなくて農業をしよう。

……けど、熊人間がいたら怖いから、やめとこうかな。



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