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ぼくは、ぬいぐるみのワンタ!
いつもおうちにいるときも、お出かけするときも、持ち主のまみちゃんといっしょにいるよ。
まみちゃんが、一人でねるのがこわいときや、おるすばんでさみしいときに、そばにいてあげるのがぼくのやくめなんだ!
いつもまみちゃんはぼくに、
「ワンタ大すきだよ~!」
って言ってくれるんだ。
ぼくも、まみちゃんが大すきだよ。
ずっとずっとまみちゃんとなかよくできたらいいな。
でも、ぼくはぬいぐるみで、まみちゃんは人間だから…ぼくのこえはまみちゃんにはとどかないんだ。
体もうごかないから、まみちゃんがちかくにきてくれないと、まみちゃんにさわれない。
だから、ぼくがどんなにまみちゃんをすきか、まみちゃんはわからない。
そのとき、
「ワンタ!いっしょにおさんぽにいこうよ!」
と言って、ぼくをそとにつれていってくれた。
やさしいなあ、やさしいなあ。
そとのせかいも大すき。
車や、空、いえのなかにいたら見れないものが見れるから。
「ねぇワンタ。かぜの音がするね」
と、まみちゃんがつぶやいた。
「そうだね」ってこたえたいけれどぬいぐるみだから、こたえられなかった。
しばらく歩くと、車がたくさん走っている大きなとおりにでた。
ここはあぶないから、お母さんとお父さんががいないときは一人で歩かないほうがいいとおもうなあ。
言いたくても、言えないままいた。
するととつぜん、
キキーッ!
と、カーブをまがりきれなかった車がまみちゃんのほうへとすすんできたんだ!
「きゃー!!」
まみちゃんがあぶない!!
どうしてもまみちゃんをたすけたい!!
そう、つよくねがったしゅんかんだった。
ふだんはうごかないはずのぼくの体が、まみちゃんをかばうようにして、うごいたんだ。
ぼくはまっさきに、車にあたりにいって、まみちゃんをまもった。
バーーーン!!!
車は、とまった。
そのかわりに、ぼくのからだはぼろぼろになってしまった。
ぬいめがほつれて、少し中のわたがとびでてしまい、ボタンもとれてしまった。
だんだん、いしきが、うすくなっていく。
まみちゃん…ぶじだったかな?
…………
わからないいしきの中で、ぼくはこうおもった。
こんなことになる前に、もっとまみちゃんとたくさんはなしたかった。
もっといろんなばしょに、出かけたかった。
もっとたくさんおもいでが、つくりたかった。
こんなこうかい、したくなかった…。
いま、生きているじかんを、もっと大切にすればよかった!!
……
気がつくと、ぼくはまみちゃんのへやにいた。
車にぶつかって、体がだめになっちゃったはずなのに、いつのまにかなおっている。
それに…
体が、うごくようになっているんだ!!
そして、
「こえがでる…!」
なんとぼくは、しゃべれるぬいぐるみになったようだ!
そこへ、まみちゃんがへやにはいってきた。
「まみちゃん、まみちゃん!ぼくだよ。ワンタだよ!」
と、全身をつかって、おどってみせると、まみちゃんは
「ワンタ!?うごいてるの?しゃべれるの!?」
と、おどろいた。
「ぼくもびっくりなんだ!それより、けがはしなかった?まみちゃんがしんぱいで、しかたないんだ!」
と、ぼくがさけぶと。
「だいじょうぶだよ。それより、ワンタのほうがしんぱいだよ。わたしのために大けがしちゃってさ。お母さんといっしょにワンタのけが、なおしたんだよ。」
「え?これ、まみちゃんがなおしてくれたの?」
「そうだよ、つぎはぎでちがうぬのをつかったから、まえのからだとちがっているけど。」
たしかに、ぼくのからだには色のちがう、べつのぬのがついていた。
「いや、まみちゃんがなおしてくれたことがうれしすぎて、そんなの気にならないよ。」
と、ぼくが言うと、まみちゃんはてれわらいした。
ぼくは、ふだんしゃべれない。
だけど、いまはしゃべれるから、前からおもっていたことをまみちゃんにはなそうときめた。
「あのね、まみちゃん。ぼくの体から、わたがでちゃったり、ボタンがとれたときに、きもちわるいとおもわなかった?」
「びっくりしたけど、きもちわるいなんておもわないよ。はやく、なおしてあげたくなった。」
「きらいになった?」
「ならないよ。」
「じゃあさ、ぼくはいつも、まみちゃんとこんなふうにおしゃべりできないけどしょうらいまみちゃんのいえにしゃべるロボットがきても、まみちゃんはぼくとなかよくしてくれる?」
「もちろんだよ。どうしてそんなに不安がるの?わたしはずっとむかしから、ワンタのこと大事におもってるんだよ。これから、なにがあってもきらいになんかならないよ!それに、ワンタがいてくれるだけでしあわせだから。」
「ぼくも、そうおもってる。大すきだよ、まみちゃん。これから先、まみちゃんが中学生になって、おべんきょうがいそがしくなったり、ならい事や、クラブ活動がたいへんになったりしても、きらいにならないでね、ぼくのこと。」
ぼくのめからは、なぜかナミダがこぼれていた。
ぬいぐるみがなくなんて、ふしぎだけど。
「ワンタ、だいすきだよ~!!」と、まみちゃんがきつくだきしめてきた。
そのしゅんかん、まわりがあかるくなって、気づいたらぼくはまたもとの、しゃべれないぬいぐるみにもどってしまった。
もちろん、体もうごかない。
でも、いいんだ。
ぼくは、まみちゃんに大事なおもいをたくさん、たくさんつたえることができた。
いままで、まみちゃんにとどかなかったことばを、たくさんとどけることができた。
それに、まみちゃんはいてくれるだけでしあわせっていってくれたから。
まみちゃんの気持ちもしることができたし、まんぞく!
「ワンタ?しゃべれなくなっちゃったの?」
すこしだけ、かなしそうなまみちゃん。
でもすぐに、えがおになって、大きなこえでこういった。
「大すきなワンタ!またいっしょにおそと、いこ!こんどは安全なみちを歩くから!」
まみちゃんはスキップして、ぼくをふりまわしながら
「いってきまーす!!」
と言った。
いつもおうちにいるときも、お出かけするときも、持ち主のまみちゃんといっしょにいるよ。
まみちゃんが、一人でねるのがこわいときや、おるすばんでさみしいときに、そばにいてあげるのがぼくのやくめなんだ!
いつもまみちゃんはぼくに、
「ワンタ大すきだよ~!」
って言ってくれるんだ。
ぼくも、まみちゃんが大すきだよ。
ずっとずっとまみちゃんとなかよくできたらいいな。
でも、ぼくはぬいぐるみで、まみちゃんは人間だから…ぼくのこえはまみちゃんにはとどかないんだ。
体もうごかないから、まみちゃんがちかくにきてくれないと、まみちゃんにさわれない。
だから、ぼくがどんなにまみちゃんをすきか、まみちゃんはわからない。
そのとき、
「ワンタ!いっしょにおさんぽにいこうよ!」
と言って、ぼくをそとにつれていってくれた。
やさしいなあ、やさしいなあ。
そとのせかいも大すき。
車や、空、いえのなかにいたら見れないものが見れるから。
「ねぇワンタ。かぜの音がするね」
と、まみちゃんがつぶやいた。
「そうだね」ってこたえたいけれどぬいぐるみだから、こたえられなかった。
しばらく歩くと、車がたくさん走っている大きなとおりにでた。
ここはあぶないから、お母さんとお父さんががいないときは一人で歩かないほうがいいとおもうなあ。
言いたくても、言えないままいた。
するととつぜん、
キキーッ!
と、カーブをまがりきれなかった車がまみちゃんのほうへとすすんできたんだ!
「きゃー!!」
まみちゃんがあぶない!!
どうしてもまみちゃんをたすけたい!!
そう、つよくねがったしゅんかんだった。
ふだんはうごかないはずのぼくの体が、まみちゃんをかばうようにして、うごいたんだ。
ぼくはまっさきに、車にあたりにいって、まみちゃんをまもった。
バーーーン!!!
車は、とまった。
そのかわりに、ぼくのからだはぼろぼろになってしまった。
ぬいめがほつれて、少し中のわたがとびでてしまい、ボタンもとれてしまった。
だんだん、いしきが、うすくなっていく。
まみちゃん…ぶじだったかな?
…………
わからないいしきの中で、ぼくはこうおもった。
こんなことになる前に、もっとまみちゃんとたくさんはなしたかった。
もっといろんなばしょに、出かけたかった。
もっとたくさんおもいでが、つくりたかった。
こんなこうかい、したくなかった…。
いま、生きているじかんを、もっと大切にすればよかった!!
……
気がつくと、ぼくはまみちゃんのへやにいた。
車にぶつかって、体がだめになっちゃったはずなのに、いつのまにかなおっている。
それに…
体が、うごくようになっているんだ!!
そして、
「こえがでる…!」
なんとぼくは、しゃべれるぬいぐるみになったようだ!
そこへ、まみちゃんがへやにはいってきた。
「まみちゃん、まみちゃん!ぼくだよ。ワンタだよ!」
と、全身をつかって、おどってみせると、まみちゃんは
「ワンタ!?うごいてるの?しゃべれるの!?」
と、おどろいた。
「ぼくもびっくりなんだ!それより、けがはしなかった?まみちゃんがしんぱいで、しかたないんだ!」
と、ぼくがさけぶと。
「だいじょうぶだよ。それより、ワンタのほうがしんぱいだよ。わたしのために大けがしちゃってさ。お母さんといっしょにワンタのけが、なおしたんだよ。」
「え?これ、まみちゃんがなおしてくれたの?」
「そうだよ、つぎはぎでちがうぬのをつかったから、まえのからだとちがっているけど。」
たしかに、ぼくのからだには色のちがう、べつのぬのがついていた。
「いや、まみちゃんがなおしてくれたことがうれしすぎて、そんなの気にならないよ。」
と、ぼくが言うと、まみちゃんはてれわらいした。
ぼくは、ふだんしゃべれない。
だけど、いまはしゃべれるから、前からおもっていたことをまみちゃんにはなそうときめた。
「あのね、まみちゃん。ぼくの体から、わたがでちゃったり、ボタンがとれたときに、きもちわるいとおもわなかった?」
「びっくりしたけど、きもちわるいなんておもわないよ。はやく、なおしてあげたくなった。」
「きらいになった?」
「ならないよ。」
「じゃあさ、ぼくはいつも、まみちゃんとこんなふうにおしゃべりできないけどしょうらいまみちゃんのいえにしゃべるロボットがきても、まみちゃんはぼくとなかよくしてくれる?」
「もちろんだよ。どうしてそんなに不安がるの?わたしはずっとむかしから、ワンタのこと大事におもってるんだよ。これから、なにがあってもきらいになんかならないよ!それに、ワンタがいてくれるだけでしあわせだから。」
「ぼくも、そうおもってる。大すきだよ、まみちゃん。これから先、まみちゃんが中学生になって、おべんきょうがいそがしくなったり、ならい事や、クラブ活動がたいへんになったりしても、きらいにならないでね、ぼくのこと。」
ぼくのめからは、なぜかナミダがこぼれていた。
ぬいぐるみがなくなんて、ふしぎだけど。
「ワンタ、だいすきだよ~!!」と、まみちゃんがきつくだきしめてきた。
そのしゅんかん、まわりがあかるくなって、気づいたらぼくはまたもとの、しゃべれないぬいぐるみにもどってしまった。
もちろん、体もうごかない。
でも、いいんだ。
ぼくは、まみちゃんに大事なおもいをたくさん、たくさんつたえることができた。
いままで、まみちゃんにとどかなかったことばを、たくさんとどけることができた。
それに、まみちゃんはいてくれるだけでしあわせっていってくれたから。
まみちゃんの気持ちもしることができたし、まんぞく!
「ワンタ?しゃべれなくなっちゃったの?」
すこしだけ、かなしそうなまみちゃん。
でもすぐに、えがおになって、大きなこえでこういった。
「大すきなワンタ!またいっしょにおそと、いこ!こんどは安全なみちを歩くから!」
まみちゃんはスキップして、ぼくをふりまわしながら
「いってきまーす!!」
と言った。
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