BLゲームの悪役令息に異世界転生したら攻略対象の王子に目をつけられました

ほしふり

文字の大きさ
29 / 65
【第四章】王子様は記憶を辿る

(5)王子様の挑戦

結論から言おう。

僕は剣の試合でベリルに負けた。
ベリルは試合で卑怯な手を一切使っていなかったのに、僕は負けた。
それが一番悔しかった。

ベリルは剣の技術だけで僕を追い詰めて倒した。
打っても打っても手応えのない打ち合い。
ベリルは僕の剣を読み切り、打ち込まれる攻撃を全て捌いた。
剣の打ち合いを行っているというのに、ベリルの剣に当てれば当てるだけ僕の剣は空振りしているようだった。
手応えがなかった。
実際のところ、僕が打つ剣を受けながら力の軌道を内側から外側に逃していたという事は後から知ることになる。

全てはベリルの手腕によるものだ。
兄上の審判によりそれは明白だった。
芝生の上でボロボロになったまま、寝転んだ僕の視界には大空が広がっていた。
澄み渡る空には雲ひとつ無い。
ボロボロに打ちのめされた僕は肩で息を繰り返し、大粒の汗を流しながら動けなくなっていた。
すでにベリルは兄上を連れて中庭から姿を消している。
勝者の褒美だ。

(…あぁ、僕は)

こんなにも弱かったのだ。
元々、相手の行動の意味がわからなかった。
即死魔法を何度もぶつけられたり、精神クラッシュもこの身に受けたことがある。
それにベリルは卑怯な手を使って使用人を玩具にしていたこともある。
許せないと思った。
次はフランベルク兄上を手に掛けようとしていると思って、警戒していた。

…今まで、ベリルが卑怯な手さえ使わなければ僕でも防げると思い込んでいた。
だが、それは違った。

「…ぅっ…」

僕は顔を歪めると呻いた。
唇が震えると、うまく力が入らない。

「……っ」

きゅっと眉根を寄せて、口から息を吐き出した。
悔しかった。
涙が出た。
嗚咽混じりに僕は泣いた。
涙に滲む空はどこまでも青かった。

それから、僕とベリルは毎日剣の試合を繰り返した。
審判はフランベルク兄上のため、兄上が忙しい日は保留になったが、それ以外は毎日試合が行われた。
ベリルの願いは相変わらず兄上との時間を所望していた。
対する僕はがむしゃらに体を鍛え、剣技を覚え、戦闘を学習していた。

それでも負けた。

そして、僕が勝った時の願いは一向に決まらなかった。
勝てる見通しがなかったともいえる。
だがそれでも、目の前にある強大な相手に挑み続けた。

僕は挑んでは負けていた。

負けた。

負けた。

負けた。

次の日も負けた。

負け続けていたが、また挑んだ。

負けた。

考えて、反省して、また挑んだ。

負けた。

また負けた。

兄上が忙しい日は自主練をした。

次の日には負けた。

打ちのめされた。

一体なぜ、僕はこのようなことをしているのだろうか?
わからない。
わからないのだ。

最初はベリルを止めるためだった。
だが、現在進行系でベリルを僕の手で止めることは出来なかった。
芝生の上で寝転び、体力が尽きた僕は肩で息を繰り返していた。

視界の隅では、勝者のベリルが兄上を誘ってこの場を去るところだ。
何度もその光景を目撃している。
僕はそれを見送りながら心の中でひとりつぶやく。

(…負けた)

なぜか、絶望は湧き上がらなかった。
無力感はあったが、この試合を放棄するには時間が流れすぎている。

悔しさ?

惨めさ?

愚かしさ?

そんなものは過ぎ去った。
僕は上半身をゆるりと起こし、気怠げにため息を吐く。

よし。

次にいこう。

そして。

(次こそ勝つ)

明日また挑むために、今から鍛えよう。

レブラス王国の空は今日も青かった。


あなたにおすすめの小説

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)