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しおりを挟む「ジ、ジェイダちゃん、大丈夫…?」
「ふふ、ふふふっ!全然だいじょばない!!強制力のクソやろー!悪役令嬢なんてクソくらえ~!!」
「ジェイダちゃん落ち着いて!!」
私をなだめようと近くに来たフィエを抱きしめ、ふわふわな髪に顔を埋めて息を吸うと少し落ち着いてきた。
「ごめんね。少し取り乱したわ」
「でも、ほんとにジェイダちゃんが言った通りになってビックリしたね…」
「フィエがいないと絶対逃げられなかった…。ありがとね。大好き。」
可愛い可愛い友人の髪に頬ずりすると、少し居心地悪そうにしながらも、くふっと可愛い笑い声をあげる。
その声を聞くと、心がぽかぽかして湧いていた怒りがスっと冷めていくのが分かる。
ここは『魔法の世界、あなたと恋する1秒前』通称、恋1というチープ感が漂う名前の乙女ゲームの世界だ。
藤野緋翠という日本人だった前世の記憶を持って産まれた私は、3歳の頃初めて鏡で自分の姿を見て驚いた。
前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢と同じ容姿をしていたからだ。このゲームは転生要素なんてなかったのにと思いながらも、あまり気にしていなかった。
そしてゲームが始まる18歳。
成人を祝う為、必ず出席しなければいけないパーティーに出席した事で事件が起こる。
今回のパーティーは攻略対象者の第1王子と、ヒロインも参加しているため、会わないように気をつけていたが、何故かしっかりとかち合ってしまった。
しかも、躓いてヒロインのドレスに飲み物をこぼし、それを第1王子に見られるというイベントをこなす形で。
ヒロインは私が躓いた瞬間をしっかり見ていたのに、「ふぇぇ、ジェイダ様が私のドレスに嫉妬して…」なんてことを第1王子に言い始め呆然としていると、フィエがすぐに駆けつけてくれて正気に戻ることが出来た。
その後は魔法でヒロインのドレスから飲み物の成分だけを抜き取り綺麗にして、謝ってからその場を後にした。
そして冒頭の発言にいたる。
最悪なことにこの世界は、ジェイダの中身が藤野緋翠だろうとなんだろうと、私を悪役令嬢にしようとする強制力が働いているようだった。
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