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第十七章 絶世の美女
しおりを挟む他の勢力の覚醒者たちは一箇所集まって戦いを眺めていた。彼らは熱狂的な叫び声をあげた。
「やれ、やれ!みんな戦え!」
「ハハハ、俺は祈祷師団の勝ちに賭けるぞ!」
「金剛は何といっても第十二星殿殿主の息子だ、間違いなく最強だ!」
この時、足元の酒はすでに人々の膝より上に達していた。
氷織は彼らを眺めながら後ずさりを続け、思い出して身震いしながら言った。
「彼らは狂ってしまったみたい。お酒で酔ったとしてもあんな風にはならないはず、お酒に問題があるんだわ!」
紅丸は顔を覗かせてコンコンと鳴き、氷織の考えへの同意を示した。
「そうだ…、あいつは…」
氷織ははっとして剣一の方を見た。剣一はこの時、地面に横たわって全身が酒につかり、さらにはボコボコと口から泡も吐いているではないか!
彼女は驚いて叫んだ。
「あのバカ、溺れ死ぬわよ!」
氷織は慌てて駆け寄り、剣一を助け起こして座らせた。彼女が拳で剣一の背中を叩くと、剣一は酒を勢いよく吐き出した。意識が戻った剣一は割れるような頭痛に襲われ、手で額を押さえ、眉をひそめて言った。
「ああ、すごい頭痛だ!」
氷織は剣一の口に少し乱暴に丸薬を押し込み、
「どうして溺れ死ななかったのよ!」
とぶつぶつ言った。
剣一は完全に酔いが覚め、笑った。
「解酒丸かいしゅがんか?恩に着るよ」
氷織は手を離して立ち上がり、剣一に背を向け、冷ややかに言った。
「お大事に」
剣一も立ち上がり、眉を少し上げ、軽く笑った。
「氷織お嬢様、男装をするならもっとそれっぽくしないと、ヘヘヘ」
氷織は勢いよく振り返り、腹を立てて地団駄を踏んだ。
「どうして見破れたの?」
剣一は質問には答えずに
「それについては後だ、今の状況では生き残るためには団結するしかない」
と言ったが、内心こう思っていた。
「付け髭を付けても忘れてるぞ、胸の二つの…。なによりチビ狐が小さな頭を出して懐で動き回っていたぞ、ヘヘヘ」
氷織は気まずく思い、怒りを爆発させようとしたが、結局は冷ややかに笑うだけだった。
「信義を重んじない人とは団結したくない!」
一方、星殿の衛兵と祈祷師たちは互角の戦いを繰り広げ、殺されなければこちらが殺すといった状況で、鬨ときの声はどんどん小さくなり、地面に横たわる死体はますます増えていった。またこの時、酒はすでに人々の腰の辺りまで達していた。
ボンッ!
金剛は勢いよく拳を振り上げ、カリ祈祷師を叩き飛ばした。
カリ祈祷師はハアハア息を切らしながら起き上がり、金剛に提案した。
「やめろ、酒がどんどん満ちてくる、力を合わせて酒が湧き出す場所を探して塞がなければ、全員ここで溺れ死ぬぞ!」
金剛はもう疲れて汗だくになっており、荒い息をしながら手を振り、星殿の衛兵たちにやめるように合図した。カリ祈祷師も祈祷師たちにやめるよう合図をし、両勢力はすぐに分かれて、それぞれ金剛とカリ祈祷師の背後に立った。
金剛は他の勢力の人々を見て、冷ややかに笑った。
「酒の湧いてくる場所が見つかったら、それを塞ぐための大量の死体が必要になる。まずは協力して、ここにいる部外者を退治した後に改めて優劣を決しようではないか」
カリ祈祷師はニヤリと笑い、賛成した。
「若様、おっしゃる通りです」
人々は金剛とカリ祈祷師の方へゆっくりと近付き、先頭にいた逞たくましい男は大笑いしながら言った。
「今頃やっと我々のことを思い出すなんて、ちょっと遅すぎやしないか?あんたらはもう共倒れになるまでやり合い、人数もかなり減っているじゃないか。今のあんたらにとって我々は大いなる災難だ!ハハハ!」
周りの者たちも釣られて大笑いした。
そのたくましい男の従者は氷織と剣一を見て大声で叫んだ。
「おい!こっちに早く来ないと、お前たちも一緒に始末するぞ!」
氷織と剣一は顔を見合わせた。しばらく見つめ合った後、氷織は諦めたように言った。
「決めたわ。やはりまずあなたたちと団結して敵に立ち向かいましょう」
剣一はそれを聞くと、紅丸と共に力強く頷いた。
突然、空から薄絹を纏まとったセクシーな七人の女性が舞い降りてきた。先頭の女性は紫色の薄絹のスカートを身に着け、その他の六人はみな白い薄絹をぴったりと纏まとっていた。しなやかで美しい彼女たちの姿は、薄絹のスカートからかすかに見え隠れし、容貌は国を傾けるほど美しく、全員が絶世の美女だった。七人の女性は宙に浮いたまま、鈴を転がすような心地良い声で笑い、澄んだ眼差しを動かし、一同の方を眺めた。
覚醒者たちは彼女たちをうっとりと見つめ、誰もが驚いて叫んだ。
「あ…美女!」
「君主の第二の褒美が届いたのか?」
「な…なんてきれいなんだ!」
逞たくましい男の従者は手を伸ばして股間を押さえ、顔や真っ赤にし、よだれを流しながら言った。
「ああ!我慢できない!お…俺は…」
逞たくましい男は左右を見回してから、七人の美女を眺め、疑問を口にした。
「我々はこんなに大人数なのに、どうして女は七人だけなんだ?」
金剛は冷ややかな笑みを浮かべ、軽蔑して言った。
「まだわからないのか、最後に残った七人だけが褒美を勝ち取れるのだ!」
カリ祈祷師もそれに続いて笑った。
「生死を賭けた乱闘は必至のようだ!」
剣を手にした祈祷師が突然後ろからカリ祈祷師を突き刺した。彼が持っていた黒い剣は不気味な黒いオーラを放っており、血が垂れ続けていた。
カリ祈祷師は理解できないという表情で振り返り、弟子を見つめた。彼は徐々に体を支えられなくなり、ゆっくりと地面に倒れた。
「お、お前なぜ、こ、こんなことを?…」
祈祷師の弟子は上から目線でカリ祈祷師を見ながら、薄気味悪く笑った。
「師匠、あなたは私を一番可愛がってくれました。七人しか生きられないなら、あなたに死んでもらい、私はあなたの装備の力で最後まで生き延びることができます」
「とんでもない考えだ」
最後の言葉を吐き出すと、カリ祈祷師は呼吸が停止した。
全ての覚醒者たちは突然何かを悟り、身を翻してそばの仲間を手に掛けた。すぐさま乱闘が始まり、叩き飛ばされたり、酒で溺れ死にさせられたり、さらには相討ちで共倒れになったりしていた。あっという間に、酒は赤色に薄く染まり、血腥ちなまぐささと酒の香りが混ざり合った非常に奇妙な臭いが鼻を突いた。氷織と剣一は驚愕きょうがくしながら目の前の全てを見つめ、どうしていいのかわからなかった。
剣一はしばらく考え込んだ後、つぶやいた。
「酒…強壮作用…そしてさらに美女…」
彼は突如として驚きのあまり身震いした。
「まずい、はめられた!誰かが背後で全てを操っている、そいつが、どの勢力も強大化して最後まで生き残れないよう、俺たちを乱戦に導いたんだ!」
金剛は当然氷織のそばに瞬間移動し、剣一の背後で冷ややかに笑った。
「お前たち、まずは自分たちの命を心配したほうがいいぞ!」
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