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12・図々しさが急加速しています。
しおりを挟む美味しいです!
ニジマスと違って身肉がしっかりとしていて、噛むと軽く『キュウ』と、歯を押し返してから弾ける様に『ホウワッ』と、ほぐれ、濃厚な味わいが口一杯に広がりました。
『サクッ』と砕ける皮の歯触りも心地良いですし、皮際の脂が厚くて甘味があります。
飲み込んだ後、『スッ』と、鼻腔をくすぐる爽やかな花の香りが堪りません。
白子のソテーも『カリッ』と弾けた後、直ぐに『トロ~リ』とした食感と共に旨味が絡み付く様に押し出されてきました。
魚肉自体にコクのある旨味がありますから、もう少しサッパリしたソースの方が合うかもしれません。
みんなの意見を聞こうとして……。
止めました。
とびっきりの笑顔に何か言うのは無粋でしょう。
しかし不思議です。
いえ、先程から不思議なことだらけなのですが、こと料理の事に関して、ひいては食材の事に関しては黙っている訳にはいきません。
「この魚の事なのですが」
「うむ、美味しいだろう」
そりゃ、私が作った物ですから。
「どんどん食べて下さいませ」
まぁ、そう言われずとも食べますよ、私が作った物ですから。
「うめー!」
当たり前です! 私が作った物ですから。
マリちゃん、褒めてくれているのは良く分かるのですが、さっきから『うめー!』しか言っていません。
もう少し日本語の勉強をして欲しいです。
何か、この人達からまともな返答を貰えないのでは、という気もしますが引き下がる訳にはいきません。
壮大な生命の起源と進化の話になってしまいそうですが、この魚が生物として成立しているか否かは別として、料理店主として、いち料理人として、これだけ極上質な魚は今までに食べた事が無いのは厳然たる事実です。
継続的に入手できるのであれば、是非とも手に入れたい食材であるのは間違いありません。
そんな事を考えていたら、何と! あれだけあった料理がもうありません。
しかも、マリちゃんは空になったお皿を見詰めて、どこか悲しそうです。
「日向、お茶を頼む」「あー、私も下さいませ」「日向、ちゃー!」
この娘たち、図々しさが急加速しています!
食材を持ち込んだのは良いですが、手間賃をふんだくってやりましょう。
そう思えばお客様ですから腹も立ちません。
お茶を淹れようと立ち上がると、
「あー日向、私は紅茶、アールグレイをホットでミルクを添えて頼む」「私は勿論、カフェ・ラ・テですわ。カフェは濃いめに入れて頂けますか」「マリ、ほーじちゃ、と、しおこんぶ」
ふざけるなー!
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