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19・時間外労働はお断りです。
しおりを挟む怒声が響きます。
さまざまな思考も一瞬で消し飛び、口に含んだ珈琲を噴き出してしまいました。
「日向、どういう事だ!」
ハルが物凄い剣幕で、床を踏み鳴らして入ってきましが、私は一切動じません。
「私はアジのツミレ汁など食べていないぞ!」
ええ、もう、この娘の言いそうな事は、付き合いとも言えないような短い間ですが、分かっていますし、まともに取り合ったら馬鹿を見るのはこちらの方だと、重々承知しております。
「ハルは何を仰いますの、私などアジの一欠けらも頂いておりませんわ」
リコがマリを抱きかかえて入って来ました。
ハルに負けない勢いです。
「あじのつみれじる、うめー!」
マリから聞いて食べたくなったという事でしょうが、扉にはしっかりと『CLOSED』の札を掛けてあるにも関わらず、ズカズカと入り込み、あまつさえ3人揃って席に座り込むなり、ハルが憮然とした表情で無茶を言い出します。
「アジのツミレ汁3人前と、今日のおすすめ魚料理3人前」
「私は是非、お肉料理も頂きたいですわ」
「にくも、くいてー!」
今日のおすすめは兎も角、ツミレ汁が残っている筈もありません。
5人前位はあったのですが、マリが1人でパクパク食べてしまったのです。
「今日のおすすめは何ですの? 楽しみですわ」
「日向、おなかすいた!」
昨日の二の舞は御免ですから、リコの『小首傾げニッコリ魔法』と、マリの『瞳ウルウル上目遣い魔法』の波状攻撃に殺られそうでしたが、気を取り直してハッキリと言います。
「残念ですが、もう営業時間外です。当店は3時閉店ですので」
「あら、おかしいですわね、看板はちゃんと出ていますが?」
シレッと言い募るリコの言葉によくよく見れば、店内に仕舞った筈の『おすすめメニュー』の看板がありませんし、間違いなく扉に掛けた『CLOSED』の札が店内にあります。
やりやがったな、こいつ等! 子供だましです。
いえ、子供をだませたら大した物でしょう、それこそ何の業態でも天下が取れるに違いありませんが、看板を隠すなど、この娘たちのやっている事と言ったら、呆れてしまって言葉が出ません。
何だか馬鹿らしくなってしまって、怒る気にもなれませんので、気乗りはしないですが作ってあげますか。
えぇ、気乗りはしませんが。
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