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52・白いワンピースがとても似合っています。
しおりを挟む「いよいよ私の出番ですわ!」
朝から嫌な予感がします。
咲ちゃんが試験の為今日はお休みです。
普段は無理をして出勤してくれていたのですが、ハルのおかげで営業に余裕が出来ましたので、休んでもらう事にしたのですが、リコが大張り切りです。
ハル以上にお客様がドン引きすること請け合いですので、絶対にカウンターから出ない様にと念を押しましたが、リコが張り切れば張り切る程、不安が募ります。
開店準備が終わり、賄いも食べ終わり、天気も良いので、テラスでのんびり皆でお茶をしていると、店の前に大きな装甲車が止まりました。
「お早う!」
『何事!』と、思う間もなく、アンがズタ袋を引きずって、こちらに向かって来ますが、何やら動いていますし、妙な呻き声がします。
嫌な確信しかしません。
マリも敏感に察したのでしょう。
私の背中に隠れるように、しがみ付いてきました。
「日向、珍しい物が手に入ったの」
「何ですか?」
非常に困ります。
生きている食材のお持ち込みは、お断りです。
好奇心には勝てなかったのでしょか、マリが躊躇いながらも近づくと、突然『プギィーツ』と、甲高い鳴き声が上がりました。
「い~や~!」
私の膝の上に正座をするように、飛び跳ねて抱き付いてきましたが、飛び跳ねたいのは私です。
「アン! 何それ!?」
「双頭の魔犬の目撃情報があって、残念ながら見つからなかったのだけれど、代わりと言っては何ですけれど、群れからはぐれたらしくて……」
アンは言葉を切ると、紐を解いてズタ袋の口を開け、無造作に手を差し入れると、なにやら赤い物を取り出しました。
首根っこを捕まえて、誇らしげに中から取り出したのは。
「ジャジャーン! ゲリュオネウスの赤牛よ」
腕、腕、腕、咬まれています!
成る程、身体の色こそ鮮やかな赤ですが、見慣れた一般的な仔牛です。
「何! 本当か、それは凄い」「凄いですわ!」「マリが殺る!」
3人娘、大興奮ですが、マリの発言は許せません。
「あ゛ばばば」
『下品な言葉は使ってはいけない』と、何度も言ってありますので頬をつねって、お仕置きです。
リコが難しい顔をして説明してくれます。
「日向はケルベロスってご存知?」
「あー、3つの頭の地獄の番犬ね」
「その弟が双頭の魔犬ですわ」
「え! 弟さんいるんだ」
「ゲリュオネウスは3頭6腕2脚のギリシャ神話に出て来る異形の巨人。怪物のくせに牧場で牛を飼っていて、その番犬が双頭の魔犬。赤牛は大変希少な美食家垂涎の食材と言われていますわ」
思わず叫んでしまいました。
「美味しいの!?」
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