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55・逃げるに決まっています。

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「『黒キ支配者さん』て何者なの?」

「ご大層な異名をつけていますけど、ただのやぶ蚊ですわ」

 リコは正に蚊を追い払うかのような手付きをします。

「やぶ蚊!? 血でも吸うの」

真祖吸血鬼トゥルーヴァンパイアだ」

 ハルが忌々しそうに顔をしかめ、吐き捨てるように言いました。

「実際は血など飲まないのですわ、吸血行為では無く、血をまじ合わせる邪悪な儀式の一環なのですわ」

「何? その儀式って」

「眷属となる儀式ですわ。不老長寿になれるという事で、希望者が引きも切らさずなのですが、ここ何十年も行われていないという事ですわ。所詮、死者となるわけですから、意味があるとは思えませんが」

「人を襲う訳じゃなくて、人が自ら血を捧げるの?」

「その通りですわ」

「吸血鬼なら、十字架が駄目とか、ニンニクが嫌いとか、陽の光を浴びると灰になるとか、銀の杭を心臓に打ち込むとか、色々あるけど?」

「それ、御伽噺ですわ、そんな弱っちい奴なら苦労しませんわ」

「ぎんのくいは、いたい!」

 そりゃそうだ。

「でも、血の味わいは好きだと聞いたことがある。レバーとかが良いのじゃないかな? まあ、普段通りで余り気にする事は無い、日向の料理が気に入らないとなれば、いっそ私が……」

 ハル顔怖いよ。

「3人とも敵対心剥き出しだけど、何かあったの?」

「むっきー!」

 マリがいきなり抱き付いて来てジタバタしだしました。
 リコが顔をしかめ、肩をすくめて言います。
 
「マリは特に因縁があるみたいなのですわ。まあ、私もり合いましたけれど」

「私も闘り合った事があるのだが、そもそも、私の物理攻撃は分が悪いのに、なにせ、使役する眷属の数が多くて戦略的撤退を余儀なくされたのだ」

「負けたって事?」「戦略的撤退だ!」

 ハル顔近いよ。

「リコはアンデット系の浄化は得意なのでしょ?」

「私も戦略的撤退を余儀なくされましたわ。とんでもない眷属が出てきましたの」

「何が出て来たの?」

 リコが思いっ切り顔をしかめて。

「例の黒光りする小さいのが、うじゃうじゃと」


 あ! そりゃあ無敵だ!
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