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11・またですか?
しおりを挟む「ありがとうございます。頂戴します」
真っ白な歯をのぞかせた、爽やかな笑顔は、魔王としてどうなのでしょうか。
「では、あ、ロキエルさん。スキットルは?」
これまた、黙って、スキットルの注ぎ口を摘まんで、魔王様の目の前でプラプラ振ってみせます。
「では、さっそく」
魔王様はマリを下ろし、ライムに手を伸ばします。その手をマリが押し止めました。
「あぁ、そういう事ですか」
魔王様が一言つぶやきました。
そういう事って、どういう事なのでしょうか?
魔王様は海老を摘まみ上げると、頭から殻ごと一口で丸かじりして、小気味いい咀嚼音を立てます。
どう考えても口と海老のサイズが合っていません。そして、私からスキットルを受け取るとマールを一気飲みです。
魔王様は膝を折ってマリと目線を合わせ、頭を撫でながら、
「マリさん、見事です。また呼んで頂けるのを、楽しみにしています」
そう言って、姿を一瞬で掻き消しました。
いや、誰も呼んでねーし。それにしても、無詠唱、無触媒で、転移魔法って、どんな化け物ですか。
マリに話しかけようとすると、何と、屋台の親爺さんが話しかけてきました。
『あ~お嬢さん』
潮でしゃがれた声が渋すぎます。
『そっちのお嬢ちゃんは、余所の国の人?』
『えぇ、そうです。こちらの言葉は良く知らないものですから、先ほどは、ご無礼を致しました』
『あぁ、気にしなくてもいい。それより、大したもんだ』
『どういう事でしょう?』
『海老ってえのは個体差が大きく、水揚げの際の取り扱い、保管状況、調理次第で、味が変わりすぎるんだ。商品としちゃあ味を均一にしなきゃいけねえから、海老自体の持ち味を殺してでも、他の物の旨いモンを足してんだ。最初に出した海老は、何せ今が旬真っ盛りだからな、もちろん自信を持って旨いと言えるけど、ある意味では、わざわざ不味くしているとも言えんだ。お嬢ちゃんの選んだ海老は超極上品で、藻塩だけで食べると、最高の味わいだろうな。お嬢ちゃんは、すぐ気づいたのだから、大したもんだと言ったのさ』
ふふふん、当然です。マリは最高の料理人なのですから。
魔王様がライムをかけなかった理由もそういう事ですか。私が一人合点していた……その時です。
おや? 今度は何でしょう。
唸りを上げて風切り音が響き、空気を震わせ、煌めきながら、何かが飛んできます。どうやら私に向かってきているようですね。軽く首を傾げて、飛んで来るものを避けるようにして、手で振り払うと、けたたまし音と共に、土ぼこりが舞い上がります。服が汚れると困りますね。
土ぼこりが収まると、半ば地面に突き刺さった剣が見えました。あ~、あれは見た事があります。
聖剣ですね。
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