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21・スキルアップしているようです。
しおりを挟む『シニゾコナイ!』
突然のマリの叫び声です。
するとお爺さんが見違えるような動きで立ち上がり、木箆を取り出して石窯に突っ込みます。マリはお爺さんの後ろを回り込むようにして、横に積み上げられた土器の皿を両手に持って、取り出さられた紙包みを受け取ると、店の中に入り席に着きました。私は、ただ、呆気に取られて、立ちすくんでいました。
マリが手を挙げて私を呼び寄せます。満面のそれは、それは可愛らしい笑顔で、
『ロキ! グズグズシヤガッテ、ウスノロ!』
「マリ! いったい誰にそんな言葉を教わったのですか!」
言うまでもありませんが、すっ飛んで行って、マリの頬をつねり上げています。今までにも増して、酷すぎる言葉使いは、到底許されるものではありません。
「あ゛ばばば」
マリは勇者を指差しました。
あの野郎がぁあ!
怒り心頭、如何してくれようかと思った、その時です。マリは頬を摘ままれながらも、紙包みを破いたのです。
それはもう何とも言えない香りが立ち昇りました。抗う事の出来ない香りでした。勇者の事など構っている場合ではありません。私は席に着きました。
「おい俺の分は」
「勇者は耳が悪いのですか、頭が悪いのですか。どちらなのです。先程マリは二個と言ったのですよ」
「そうなのか、マリ」
「まちがえた!」
「もういいです。それより早く頂きましょう」
あぁ、これが紙包み焼きと言う料理ですね。何でしょうこの紙を破る時のワクワク感。紙を破った瞬間、荒れ狂う濁流のように勢いよく鼻腔を刺激する香り。無造作に詰め込まれた魚貝、野菜が渾然一体となって、輝いています。
突然、私の目の前から皿が消えました。
「ロキエルさんは、カレーの話をしていた時に、魚貝を複数使うと、味が濁ると言っていましたね、では代わりに私が頂きましょう」
魔王様!
いつの間にか、揺らぎも悟らせず、マリの隣に、寄り添うようにいるではありませんか。
「これは、美味しそうですね。おや?」
お爺さんが黙って、魔王様の前にグラスを置きました。
「白ワインですか、良い香りです。このお料理に合いそうですね。では早速」
え! それ私の、私のだよね!
魔王様は一口だけ含んだ白ワインで、唇を湿らすと、あっという間に食べ終わります。
「素晴らしいですね。個性の強い海老や貝が喧嘩せずに、お互いを高め合っています、何よりも、主役となるべき白身魚の存在感がやはり際立っています。他の食材に隠れ気味なのですが、最後に淡白な味わいが舌の上に残り鼻腔をくすぐりますね。魚の下に敷いてある野菜も、ただの添え物では無くて自らの旨味を魚に与え、魚の旨味を呼び込んでいます」
ああ。そうですか。
「マリさんは、これより美味しい物を、食べさせてくれるのですか?」
「うん、もちろん!」
魔王様は、マリの頭を撫でると、
「楽しみにしています」
最後に一言残し、姿を掻き消しました。
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