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31・なんてこったい!
しおりを挟む「出さないよ?」
「そうなのですか、マリさん。私はてっきり、明晩の試食会の為の試食会かと思っておりました」
「ロキ~、魔王さまと、お話ししてー!」
マリが困った顔をして、跳び付いてくるのを、抱え上げました。
試食会が終わり、魔王様が三人だけで話がしたいとの事で、執務室にいます。
魔王様に事のあらましを話すと、
「つまり、あの酒場の御主人に「ピザ」を、お教えするという事ですか?」
わずかに眉を寄せて言いました。魔王様が、こんな表情を見せるのは、とても珍しい事です。いとも簡単にピザの作り方を教えるのに、抵抗があるのは無理かなぬ事です。
「断りますか?」
「とんでもない、ひと度マリさんの名前を出したからには、約束を違えるなどと、許されるはずもありません」
「しかし、問題がありまして、ピザ作りに必須の赤茄子と赤唐辛子、というよりも、そもそも、ピザは初めに赤茄子ありきの、お料理なのですが、一般の方には入手困難だと思えます」
「マリさんは、それをどう入手したのですか?」
「魔王城の園芸課からです。食材ではなく、観葉植物として取り扱っています。マリが、どの程度の量を取り寄せたのかは分かりませんが、莫大な金額の請求書が回って来ました」
「仮に入手できたとしても、採算が合わないと」
「その通りです」
「……ふ~む。分かりました。貴重とはいえ植物ですから、大量栽培できぬはずがありません。時間はかかるにせよ、当面の間、無償で、酒場の主人に提供しましょう。ただし、赤唐辛子は「ピメントオイル」という商品として提供しましょう。商品として転売する事は決して許可しないと、釘を刺しておいて下さい。金額の問題ではなく「まかせろ!」と、仰った、マリさんの面子が潰されるのは、全力で阻止しなければ、私の気が済みません。それと開発室にも石窯を増設して、狭いようでしたら拡張工事を手配して……。いや、マリさんの負担にならないよう、別途にピザ出店準備室を立ち上げて、実験店舗の出店計画を進めましょう。あの酒場と商圏が被らなければ、何の問題もありませんし、マリさんの料理に相応しい、最高の立地条件を満たす場所を選択しましょう。カレーと違って、直ぐに一般の方に受け入れられるに違いありません。スタッフには、あの二人、ラビさんと、ウルさんが適任ですね」
え! 何だか話が大きくなっていませんか? とんでもない事になりそうです。
「あの二人ですか?」
「えぇ、二人とも素晴らしい感性をお持ちですから。特にあのウルさんのピザは、最高でした」
「ぶーぶー! ぶーぶー!」
私に抱きかかえられた、マリが親指を下に向けて、大ブーイングです。やはり「ラビスペシャル」の事は黙っておいて正解でした。
「も、もちろん、マリさんの御指導の賜物ですよ。今日は私、凄くお腹が空いていまして、こう何と言うか、ガッツリと肉が食べたいな~と思っていましたので」
ビックリです!?
魔王様が慌てふためき、言い訳する姿。長い付き合いですが、初めて見ました。
「マリ先生! あの二人では駄目ですか?」
「だいじょーぶ! マリが教える」
「あの、スープとコールスローも絶品でした。他にもピザに合う物を、教えてやって頂けますか? マリ先生!」
「うむ、よかろう!」
うわ~、マリが魔王様より偉そうだ!
拳を勢い良く突き上げて言う、マリは、そりゃあ、もう、先生呼ばわりされて有頂天で、何処までも舞い上がって行きそうです。
「では、ロキエルさん、大至急手配をお願いします。後はよろしく」
一言残して、魔王様は姿を掻き消します。
え! 全部私に丸投げ!?
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