異世界グルメ紀行~魔王城のレストラン~商品開発部

ペンギン饅頭

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33・さあ、パーティーの始まりだ!

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 小会議室に居ます。

 マリの要望で、開発室に一番近い場所という事で、ここが選ばれました。上座に魔王様を据えて、その両脇の片側に、勇者、私、給仕長の順に並んでいます。勇者の正面に総料理長、となりに料理長、その他六名の幹部が居並びます。それぞれにメイドさんが一人付き、壁際に沿って待機しています。
 私の上座に勇者が偉そうな顔をして、ふんぞり返っているのは気に入りませんが、そんな事を考えている場合ではありません。

 マリが入室して来ました。

 魔王様が自らデザインされた、煌びやかな調理服に身を包み、とても凛々しく見えます。魔王様の横に立ち、堂々と、胸を張って挨拶をします。

「本日料理を担当させて頂く、マリと申します。宜しくお願い致します」

 魔王様が通訳するのを待って、綺麗に一礼して退室しました。

 マリ、立派ですよ。

 もちろん、日本語の口上ですが、涼やかな通る声は、皆の気持ちにしっかり届いた事でしょう。
 勇者が人目もはばからずに号泣しているし、給仕長も嗚咽を漏らしているので、二人に挟まれた、私まで、つられて、瞳を、潤ませてしまい、ました。勘弁して、欲しい、です。
 今日は通常の会食では無くて試食会という事で、お料理の味を見極めるため、酒精を含む飲み物は提供されません。皆の前のグラスに水が注がれ始めて、少し緊張がほぐれると、室内がざわめき始めましたが、私の前の二人、総料理長と料理長は、相変わらず硬い表情のままです。

「おい、ロキエル」

 勇者が身を乗り出して耳打ちしてきます。

「随分余裕じゃないか。何かあったのか」

 さて、どうしましょう。安心させてやるのもしゃくですが、まあいいでしょう。

「大丈夫」

「おい、どうしたんだ一体?」

「味見をしました。今日のお料理」

「何だと!」

「もう何の心配もないです、皆、ど肝抜かれるでしょう」

 扉が開き、ワゴンカートが食器の音を響かせながら、運ばれてきます。あら? ラビちゃんと、ウルちゃんでした。マリとお揃いで、色違いの調理服がとっても良く似合っています。緊張しているのでしょう、少々動きが固いのが、遠目で見ても分かります。

 頑張れ二人とも!

 皆の前に陶器製の小さなグラスが置かれ、熱湯が注がれます。皆が手にしようとするのをメイドさんが押し止めました。目の前でグラスを温める事も初めてでしょうし、ましてや事前に説明はしてあるものの、コース料理と言う習慣さえないのですから。
 こういった席に一番縁の無さそうな勇者が、誰よりも堂々としているのですから、笑ってしまいます。
 ラビちゃんとウルちゃんが、グラスの中身を小鍋に入ったスープに差し替えていきます。ほんの三、四口位です。皆が、不審げに眺め眇めつしていましたが、一人が口にすると全員それに倣い始めます。

『おい、ロキエル! これは何だ!』

 勇者が辺りもはばからず、大声を上げます。その声を合図に、皆が、私を注視しているのが分かります。
 私はゆっくりとグラスを傾け、じっくりとスープを味わい、言います。

『スープですよ、勇者様』
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