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41・当たり前です。
しおりを挟む鯖を下魚などと呼ぶ輩がいます。
そんな輩とは口も利きたくありませんし、この世から消し去るのに何の躊躇いも、痛痒も感じません。
しかし、この黒鯛の塩焼き、本当に鯖には申し訳ないのですが格が違います。
口に含み歯を立てると、皮がパリパリと砕け散り香ばしく、身肉はブルっと歯を押し返したかと思うと、プツンと弾けて、ホロホロと身肉が崩れ落ち、経木の爽やかな香りと、かすかな磯の香りを漂わせながら、淡白ながらもしっかりとした旨味と、魚脂のコクとほのかな甘味が交じり合いながら、舌の上で踊ります。
惜しむらくは、量が少なすぎます。
あくまで試食ですし、私はしっかり賄いを食べさせてもらっていますから、文句を言える筋合いではありませんが、給仕長を始め、メイドの皆さんは、あからさまでは無いものの、少々残念そうな、不服そうな表情をしています。
は! いけません。
マリがメイドさん達のこの表情を見たら……って、凝視してるー!
眉根を寄せたマリの顔に、
「あれれ? おっけしーな。すげーうめーのに?」
と、はっきり書いてあります。
ここはしっかり弁明しておかないと、マリがしょぼくれるのは必定です。慌ててマリの傍に駆け寄ろうとすると、私に先んじたのは給仕長でした。
「マリサマ、ラビサンノツクッタ、シオヤキ、トンデモナクウメー! デモ、リョウガスクナクテ、アットイウマニタベオワッテ、チョットサミシイノ」
途端にマリは相好を崩して、
『ワカッター! ウル! ピザモ、ヤキヤガレ!』
と、声を弾ませました。
『っス!』
ウルちゃんが心地良い返事を返すのを聞いて、
「あれ? マリ。ピザの準備は出来ているの?」
「マリはお料理番組みてたー!」
「ん? マリは何を言っている……あ! そういう事ね」
放送時間短縮のために事前に用意してあるものを「こちらが一時間発酵させたものです」と、言って取り出すパターンですね。
『マリ様の指示っスから、作り方は後回しにして、さっそくピザを焼くっス』
ウルちゃんはそう言って矢継ぎ早にピザドゥを伸ばしていき、ラビちゃんが受け取ってピザソースを塗って、具材を並べていきますますが……早っ!
二人とも、まだ一度しか手伝ったことが無いというのに、マリの手際の良さに迫る勢いです。きっと、視覚情報をそもまま再現できる身体能力の持ち主なのですね。総料理長までもが唖然として見ているのですから、他の調理部の方々は推して知るべしです。
マリが出来上がった物を、次々と石窯の中へと入れていくと、ややあって、チーズの焼ける香りが漂ってきました。
『ロキ、いったいマリは何を作っているの?』
ココ様が疑問に思うのも当然ですが、口で説明できる物ではありませんし、マリが作る物といったら、答えは決まっています。
『美味しいお料理ですよ、ココ様』
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