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8.森田さん
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週末、私はショッピングモールに来ていた。
家にいても落ち込んでしまうから、気分転換にと思ったのだが、服や雑貨を見ても買い物に気が乗らない。
「はぁ……」
何度忘れようと思っても、頭に浮かぶのはあのことばかり。
(森田さんの言ってたことは本当なのかな……?)
先生と約束をした翌日の昼休み、同じように練習をしていると、森田さんと数名の女子生徒が体育館内に入ってきた。
真っ直ぐこちらに向かってくるし、着替えが入っているだろう袋を手に持っていたからなんとなく嫌な予感がした。
「私達もいいですかぁ?」
私のことをチラ見して、そう口にした。
昨日私が練習していたのを見て、自分もやりたいとなったらしい。当たり前だけど、先生はダメだなんて言わなかった。
でも、私に一言聞いてくれた。
「七瀬、こいつらも一緒でいいか?」
最初に練習を始めてたのが私だったからだと思うけれど、それでも気遣ってくれたのがすごく嬉しかった。
「はい、大丈夫です」
私が頷くと、先生は彼女たちに着替えてくるよう促す。すれ違いざまに横目で森田さんに睨まれて、昨日睨まれた気がしたのは、気のせいじゃなかったのだと気付く。
同時に、何度も目が合った理由もわかった。
(同じ人を見てるんだもん、合うわけだよね……たぶん、森田さんも先生が好きなんだ)
それが確信に変わったのは、一緒に練習を始めてすぐだった。
「せんせーの好きな食べ物ってなんですかぁ?」
「好きなタイプはー?」
「センセーって休日なにしてるの?」
彼女たちは練習もせず、先生にずっと話しかけていた。
「……おめぇら練習しねぇのかよ、あー……肉だ、肉」
昼休み中ということもあって、呆れてはいたけれど、軽くあしらいながら先生も接していて、そんな先生と話せて嬉しそうな笑みを浮かべる森田さんは、誰が見ても明らかだった。
それ以来昼休みの練習は、彼女たちのおかげで私が話しかけるタイミングなんてものはなく。
さすがに練習しないなら帰れと先生が窘めるも、今度はこれを教えてあれを教えてと先生を逐一呼び止めるので、先生が指導してくれる時に、二言三言言葉を交わすぐらいに変わってしまった。
それでも先生と少しでも一緒にいたくて、いつも一番乗りで練習にきた。
「七瀬、今日も早いな」
「えへへ」
努力の甲斐があって、練習を始めてから一週間後には高難易度の技が少し出来るようになっていて。
テスト前最後の授業の時には、やりたかった技を成功させた私を自分のことのように褒めて喜んでくれた先生を見て、一生懸命頑張って良かったなって思った。
だけど──
「実はあたしぃ、倉田のメアド知ってるんだけどぉ~。他に知ってる人いるのかなぁ?」
授業が終わったあと更衣室で着替えていると、背中越しに森田さんの声が聞こえた。
私に聞かせたかったのは間違いないと思うが、それを耳にした女子生徒たちで、更衣室がたちまち騒がしくなる。
「えぇ~! むっちゃん、先生のメアド知ってるの~?」
「そんな仲なの?」
「あやしぃ~」
「てか、番号知ってる人はいても、先生のメアドまで知ってる人っていないんじゃない?」
彼女はその言葉を待っていたかのように、笑みをうかべて私を見た。
「え~、やっぱりそうだよねぇ」
家にいても落ち込んでしまうから、気分転換にと思ったのだが、服や雑貨を見ても買い物に気が乗らない。
「はぁ……」
何度忘れようと思っても、頭に浮かぶのはあのことばかり。
(森田さんの言ってたことは本当なのかな……?)
先生と約束をした翌日の昼休み、同じように練習をしていると、森田さんと数名の女子生徒が体育館内に入ってきた。
真っ直ぐこちらに向かってくるし、着替えが入っているだろう袋を手に持っていたからなんとなく嫌な予感がした。
「私達もいいですかぁ?」
私のことをチラ見して、そう口にした。
昨日私が練習していたのを見て、自分もやりたいとなったらしい。当たり前だけど、先生はダメだなんて言わなかった。
でも、私に一言聞いてくれた。
「七瀬、こいつらも一緒でいいか?」
最初に練習を始めてたのが私だったからだと思うけれど、それでも気遣ってくれたのがすごく嬉しかった。
「はい、大丈夫です」
私が頷くと、先生は彼女たちに着替えてくるよう促す。すれ違いざまに横目で森田さんに睨まれて、昨日睨まれた気がしたのは、気のせいじゃなかったのだと気付く。
同時に、何度も目が合った理由もわかった。
(同じ人を見てるんだもん、合うわけだよね……たぶん、森田さんも先生が好きなんだ)
それが確信に変わったのは、一緒に練習を始めてすぐだった。
「せんせーの好きな食べ物ってなんですかぁ?」
「好きなタイプはー?」
「センセーって休日なにしてるの?」
彼女たちは練習もせず、先生にずっと話しかけていた。
「……おめぇら練習しねぇのかよ、あー……肉だ、肉」
昼休み中ということもあって、呆れてはいたけれど、軽くあしらいながら先生も接していて、そんな先生と話せて嬉しそうな笑みを浮かべる森田さんは、誰が見ても明らかだった。
それ以来昼休みの練習は、彼女たちのおかげで私が話しかけるタイミングなんてものはなく。
さすがに練習しないなら帰れと先生が窘めるも、今度はこれを教えてあれを教えてと先生を逐一呼び止めるので、先生が指導してくれる時に、二言三言言葉を交わすぐらいに変わってしまった。
それでも先生と少しでも一緒にいたくて、いつも一番乗りで練習にきた。
「七瀬、今日も早いな」
「えへへ」
努力の甲斐があって、練習を始めてから一週間後には高難易度の技が少し出来るようになっていて。
テスト前最後の授業の時には、やりたかった技を成功させた私を自分のことのように褒めて喜んでくれた先生を見て、一生懸命頑張って良かったなって思った。
だけど──
「実はあたしぃ、倉田のメアド知ってるんだけどぉ~。他に知ってる人いるのかなぁ?」
授業が終わったあと更衣室で着替えていると、背中越しに森田さんの声が聞こえた。
私に聞かせたかったのは間違いないと思うが、それを耳にした女子生徒たちで、更衣室がたちまち騒がしくなる。
「えぇ~! むっちゃん、先生のメアド知ってるの~?」
「そんな仲なの?」
「あやしぃ~」
「てか、番号知ってる人はいても、先生のメアドまで知ってる人っていないんじゃない?」
彼女はその言葉を待っていたかのように、笑みをうかべて私を見た。
「え~、やっぱりそうだよねぇ」
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