ねがいごとはなんですか?

神楽 凛

文字の大きさ
27 / 33

27.告白のこたえ

しおりを挟む
(私、告白したよね!?)

 車に乗って数分経ったけれど、先生はなにも言ってこない。ちゃんと目を見て伝えたし、告白されたと分かっているはずなのに。
 もしかして、このまま無かった事にするつもりなのだろうか。

(それは嫌だ)

 勢いで告白してしまって計画もめちゃくちゃになったけれど、振られることになっても後悔しないって決めたのだから。

「はっきり言ってください」
「──」

 同時に声を発したらしく、先生の言葉が聞こえなくて。察した先生がもう一度口を開く。

「わかってるとは思うが、俺は教師でお前は生徒だ。たった一人の生徒を特別扱いするわけにはいかないし、常に周りの目があるから普通の恋人らしいことなんてできないだろう」

 想像していた通りのお決まりの台詞が先生の口から告げられる。納得していたつもりだったけれど、やっぱりそんな答えじゃ納得なんて出来るわけがなくて。
 確かに私は『生徒』で先生は『先生』だ。でも、生徒や先生である前に、私は『七瀬葵』で先生は『倉田亮介』なのだ。
 だから私は、先生の気持ちがはっきり聞きたかった。
 望みがないなら、ごまかさないで欲しい。卒業したらいいのかなと希望を持ってしまいそうになる。
 私がダメなら、ダメだとそう言って欲しい。そのほうが諦めもつくから。
 大丈夫、泣いたりなんてしないから。

(中途半端な優しさはいらないんだよ、先生)

「そんな当たり前のことわかってるよ。でも好きでそうなったわけじゃないし、たまたま好きになった人が先生だっただけだよ。誰にでも分け隔てなく接してる先生だってわかって好きになった。普通の恋人らしいことってなに? 例え色んなこと我慢しないといけなくても、好きな人と恋人になれる以外に幸せなことってあるの? とってつけたような理由なんていらない。生徒としか見られないならそう言えばいい」
「……ははっ」
「先生、ダメならきっぱり──」

 先生が不意に笑みをこぼす。なにか笑えることを言っただろうかと思いつつも言葉を続けると。

「だったら付き合うか?」

(…………え)

 思わず耳を疑うような言葉が聞こえて、頭が真っ白になる。

「……」
「七瀬、サン?」
「いま……付き合うかって言いました?」
「言ったな」
「あぁ、これ夢ですよね?」
「いや、現実だな」
「現実……現実?」
「なんでそんなに俺の言うことが……あー……いや、そうだよな」

 ため息混じりにそう呟いた後、徐に車を路肩に停めた先生が話し出す。

「さっき俺がお前に言ったこと訂正するわ。一番大事なこと言ってないのに『付き合うか』もクソもねぇよな」
「大事なこと?」
「七瀬」
 
 優しい声で名前を呼ばれて、先生と視線が絡み合う。

「俺もお前が好きだよ」

 ふっと微笑みながら、そう口にした。

「先生が……私を……好き?」
「あぁ」
「ほんとに?」
「本当だ」
「ほんとのほんとに?」

 先生の言葉が夢みたいで信じられなくて、何度も確かめるように言葉を重ねていると。

「……ったく」

 先生の手が私の顎をくいっと持ち上げ、軽く上を向かせられる。

「!!!」

(え!? キスされる!? 嘘!?)

 先生の顔が近づいてきて思わず目をギュッと瞑ると、柔らかなものが額に触れたのを感じた。目を開けてそれが先生の唇だとわかった瞬間、顔がカッと熱くなる。
 唇が触れていたのはほんの一瞬だったけれど、私には時が止まったようにさえ感じられた。

「せ、せせ……」
「これで信じた?」

 先生はまるで子供みたいな悪戯な笑顔でそう言って。私は思わず額を両手で押さえながら、首を縦にぶんぶん振ることしか出来なかった。

(キ、キスとかキスとかキスとか)

「で、どうする? 付き合う?」

 大人の余裕なのだろうか。私とは正反対の余裕綽々な様子で先生が聞いてくる。好きかと聞いてキスをされて、それは確かにこれ以上ないくらいの真実だけど、どうにも腑に落ちない。
 それでも──

(そんなの決まってる)

 顔を真っ赤にしたまま頷くと、先生は満足そうに笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...