悪魔にスカウトされました

神楽 凛

文字の大きさ
3 / 3
episode《結》

3.はじめての悪魔社会

しおりを挟む
(向こう側は別世界なんだよね……一体どんな世界なのかなぁ)

 悪魔社会っていうぐらいだし、やっぱり悪魔っぽいんだろうな。
 まず空は闇に覆われてて、空気はどんよりしているよね。それから暗い森が多い茂っていて、たくさんのカラスがバサバサ~って飛んでいる、そんな感じだと思っていたのだが——
 
(同じじゃねーか)

 悪魔社会を見て思わず心の中で突っ込んでしまった。
 空は普通に澄み渡る青空。高層ビルが立ち並んで、THE都会。私がいた世界とどこが違うのかって聞かれてもすぐには答えられないくらいには変わらない世界。

「ここがほんとに悪魔社会なの?」
「扉くぐっただろ? 頭わりぃのな、お前」
「はぁ? 初めてきたんだからわかんなくて当たり前でしょ」 
「チッ」

(舌打ちした!)
 
 契約する前からちょっと気にはなっていたけれど、この悪魔、なんだか最初と態度が違うのだが。

(はっ! まさか、こっちが本物?)
 
「マキんとこGビルの10階だっけ……こいつはまだ飛べねぇだろうし……」

 ぶつぶつ言いながら、こちらをチラ見して溜息をついてくる。

「……めんどくせぇな」
 
 そう聞こえたと思ったらいきなり腕を掴まれて。
 
「え」
 
 戸惑うまもなく肩に担がれて、飛んだ——

「って、きゃあああああああああああああ」
「うるせー」
 
 小さい頃、空を飛べたらいいなって思ってたこともある。だけど、正直まったく楽しめたものではない。
 肩に担がれているから頭に血が上るし。
 思っていたよりずっと早いし。
 
(てか、楽しめないのって、コイツのせいじゃない?)

「ちょ、おろ……」
 
 降ろしてよ、そう言おうとして止めた。
 だってそんなことを言ったら、コイツ本当にここで降ろしそうだ。こんなところで落とされたら……なんて考えたくもない。
 仕方がないのでおとなしく担がれてることにした。
 
(どこに連れて行かれるのやら)
 

 暫くすると、悪魔が止まった。窓越しにビルの中を覗いているみたいだ。

(ここに誰かいるのかな?)
 
——コンコン
 
 悪魔が窓を軽く叩くけれど、少し待ってもなにも反応がない。

「チッ……マキのやつ、やっぱり寝てやがる」
 
(マキって誰だろう?)

 そう思った次の瞬間、思い切り窓を蹴り出した。思わず耳を塞ぎたくなるような、けたたましい音が辺りに鳴り響く。
 
——ガラッ
 
「ルイ! またお前か!」 
 
 勢いよく窓が開いたかと思うと、男の人が声を上げながら顔を出した。

(この人が、マキ?)

 スーツを着こなす黒髪の男性。フォーマルな眼鏡を掛けていて、なんだかサラリーマンみたいだ。
 一見悪魔には見えないが、角が頭に生えていた。

「窓から入ってくるなと何度言ったら──」
「ハイハイ、説教はあとで聞くから。邪魔するぜ」
「ちょ、こら!」
 
 怒られているのなんかお構いなしに窓から入り、部屋の中を見回した後、ソファの上に私を降ろした。
 
(はぁ……やっと落ち着けた)
 
「この子は?」
「人間。死のうとしてたから連れてきた」
 
(え、何言ってんのコイツ)

 いつ私が死のうとしていたんだ、とそうツッコミたかったが気力がない。
 
「これで俺、Aurumになるよな? コイツで10人目だろ?」
「ん? あぁ」
「そ。じゃあ、俺は手続きしてくっから、ソイツよろしくー」
 
(なんか勝手に話進めてますけど。放置プレイですか?)
 
「ちょっと待ってよ。どうやったら願いを叶えられるの? なんもわかんないんだけど!」
 
 願いを叶えられないのなら、何のために悪魔になったのかわからない。
 部屋を出て行こうとする悪魔にそう問いかけると、直後、マキという人の空気が変わった気がした。
 
「げ……」
「ル~イ~? どういうことかな? 彼女はなんにも知らないみたいだけど、まさか説明してないってことはないよね~?」
 
(え、笑顔が怖い)
 
「窓から入ってきたことも含めて、ルイへの処分は置いといて」
「……あれは仕方がなかったんだよ」
「交通機関を利用するのが面倒くさかっただけだろう」
「チッ」
 
 名前すら知らなかったが、どうやらこの悪魔ルイという名前らしい。
 なんとなく、ルイよりマキ──さんのが強いのかな?
 
「さて……えーと、なにちゃんかな?」
「あ、結です。咲良結」
「このバカが、なにも説明せずに連れてきて悪かったね」
「いえ」

(まぁ、向こうで聞かなかった私も私だし)
 
「なにから話したらいいかな。そうだね、まず悪魔社会について話そうか」
「結ちゃんは、悪魔ってどんなイメージがある?」
「そうですね……悪いことをするよう仕向けたり、人を不幸にして喜んだり?」
「そうだね、昔は負のエネルギーが活力だったからね。でも、今は違うんだよ。そんな生き方をしていたら、長生きできないからね。悪魔も生き方を変えたんだ」
 
 負のエネルギーか。確かに集めるのが大変そうだ。
 
(悪魔も大変なんだな)
 
「どう変えたかわかるかい?」

 そう聞かれて、少し考えてみたがわからないので首を横に振る。

「恋のキューピッドだよ」
「え?」
 
(また悪魔らしからぬキーワードがでてきたよ、これ)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...