捨てられた令嬢と錬金術とミイラ

炭田おと

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20_ミイラの保管方法

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「このミイラは模造品ではなく、本物のミイラで間違いないんですね?」


 その後、王宮の地下で、私はノアム陛下と一緒に、台に乗せられたミイラと向かい合っていた。


「ええ、骨や皮に継ぎ目が見つからないので、間違いなく本物のミイラだと思います。今の技術で、これだけ精巧な人形を作るのは不可能でしょう」

 研究者が答えてくれる。

「詐欺師が仕入れた品だから、贋作がんさくの可能性も残っていたが・・・・本物なのか」

 陛下は顎に手を当て、考え込んでいた。

「石碑の欠片の文字から、南の大陸の、王族のミイラである可能性もあります」

「王族?」

「このミイラは女性です。そして石碑には、南の大陸の女王の名前が刻まれています」

「南の大陸の、女王のミイラだということか・・・・」

 陛下はそう呟いたものの、口角は皮肉を込めて吊り上がっていた。

「この国で、ミイラを見るだけでも珍しいのに、女王のミイラとは。・・・・できすぎている気がするな」

「偽造だと考えてるんですか?」

「俺達にわかるのは、ミイラが本物だということだけで、この女性が本当に王族だったのか、この石碑が本物なのか、確かめる術がない。だが嘘でも、南方の国の王族のミイラだと言い張れば、値も跳ね上がるはず」

「・・・・どれぐらいのお金が動くんでしょう?」

「一生遊んでも・・・・いや、二、三度生まれ変わっても、まだ余りある金が手に入るだろう」


 一生遊んで暮らせるお金――――よりもさらに高額となると、あまりにも大きすぎて、想像力が働かない。

 でもリモージュには、信じられないほどの資産を持っている人がいるから、そんなに高額になっても、買い手は現れるのだろう。


「しかし、贋作ではない――――となると、ますます不可解だな・・・・」

 陛下は腕を組み、考え込んだ。

「そんなに不可解ですか?」

「南の大陸ですら、ミイラなんて簡単に手に入らないし、手に入れようとすれば、大金を払う必要がある。商人に任せると、詐欺の被害にも遭うと聞いている。しかも、それが王族のミイラとなると――――」

 簡単に手に入るようなものなら、大金は動かない。希少だから、大金を支払う人がいるのだ。

「かなりの額ですよね?」

「ミイラの相場など知らないが、変わり者の成金は、ミイラを買うために、屋敷を買えるだけの金額を支払うだろうな」

「・・・・・・・・」

 金銭感覚が麻痺しそうだと思った。

「バルビエのような小物に、ミイラを買う金を払えると思うか?」

「・・・・難しいでしょうね」

「だろうな。そもそもそんな大金を持っていたのなら、つまらない詐欺師などやっていないだろう」

 ミイラをまじまじと観察して、私はあることに気づいた。


「左腕の親指が、短いですね」

 ミイラの左腕の親指は、もう一方の親指に比べて、かなり短い。


「そのようですね。ですが骨を切ったような痕跡もないので、おそらく生まれつきでしょう」


 ――――何かが、頭に引っかかった。


 でもそれが何なのか、思い出せない。


 陛下は吐息を零した。


「・・・・これ以上、収穫はないようだな。・・・・さすがにここは息が詰まる。カロル嬢、上で話そう」

「はい」


 私達は動き出そうとした。

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