26 / 41
26_思いがけない顔ぶれ
その日も陛下に食事に誘われたので、食堂に向かった私は、そこで信じられない光景を目にした。
「やあ、カロル嬢」
その日、食堂のテーブルには、ノアム陛下以外にも、数人の男女が座っていた。
ベンジャミン、アデレード、マテオおじさん――――それに、ブラウリオ叔父さんまで、私に関係する人が一堂に会している。しかもベンジャミンやアデレードの両親まで、同席していた。
私は驚いて、立ち尽くしてしまう。
「どうしたんだ、カロル嬢」
動けずにいる私に、陛下がにこにこしながら近づいてきた。
「あ、あの、陛下。どうして、ベンジャミン達がいるんでしょうか?」
ベンジャミン達の手前、必死に笑顔を浮かべながらも、私は強い眼力で、陛下に説明を求める。
「その話は、食事をしながらしよう」
(説明はなし!?)
「さあ、座ってくれ」
陛下には、あっさり流されてしまった。
仕方なく、私は座る席を捜す。
八人もいるので、空席なのは二つだけ、陛下の隣と、ベンジャミンの隣だけだ。陛下の隣に座るわけにはいかないので、私は嫌々ながら、ベンジャミンの隣の席に腰を下ろした。
「・・・・なあなあ」
着席すると、ベンジャミンが小声で話しかけてきた。
「お前、俺達のことを陛下に紹介してくれたのか?」
「・・・・そんなわけないでしょ」
するとベンジャミンは不思議そうな顔をする。
「え? それじゃ、なんで俺達はここに呼ばれたんだ?」
「・・・・知らない」
陛下の狙いが、私にわかるはずがない。
(だけど、そうか。二人とも、私の紹介で食事会に呼ばれたと思ってるんだ)
ちらりとアデレードを見る。
アデレードは、別人のように着飾っていた。化粧はいつもよりも濃く、髪は高く結い上げられ、ドレスもこの日のために新調したのだろうか、流行の色とデザインのものを着ている。胸元では、ネックレスの大きな宝石が光っていた。
――――そしてアデレードは、他は眼中にないとばかりに、陛下だけを見つめている。
「・・・・カロル嬢」
私の名前を呼ぶ、その声はやけに低かった。ひやりとして、陛下を見ると、陛下の目付きは鋭くなっていた。
「どうしてそこに座る?」
「え?」
「君の席は、ここだ」
陛下は上座に移動して、一つの椅子を引いた。
「えっ」
「え゛」
ベンジャミンやアデレードはもちろん、その場にいた他の人達も、目を丸くしていた。マテオおじさんは、口をぱくぱくさせている。
(陛下は、何を考えてるの?)
ディエレシスでは、食事会で陛下の隣に座ることを許されるのは、王妃か高官ぐらいだ。だから私が、そのに席座ることは、本来許されないこと。
「いえ、陛下、ですが――――」
「さあ、こっちへ」
「・・・・・・・・」
断ることはできないようだ。
私は戸惑いながら、立ち上がり、陛下に近づいた。全身に視線が突き刺さるのを感じる。
陛下が引いてくれた椅子に腰を降ろすと、全員と向かい合う形になり、気まずさで息が止まりそうだった。誰もが不思議そうに私を見る中、アデレードの目付きだけが鋭くて、敵意が感じられる。
「さて、それでは食事をはじめようか」
「は、はい・・・・」
微妙な空気の中、食事会がはじまった。
「やはり、王宮の料理は絶品ですな!」
オードブルを一口食べたベンジャミンのお父様が、少し大げさに料理を褒めた。
「確かに城の料理は逸品だが、シェフの腕が一流であることはみな知っているから、大げさな世辞は必要ないぞ、マルタン伯」
「いえ、それでも言わずにはいられないのです」
「君は各地に足を運び、そこで評判の料理を食べてきたんだろう? もう誰も、君の舌を満足させられないのでは?」
「確かに、私の舌は肥えているかもしれませんね。ですがそんな私でも、この料理には感服させられます。さすが、ディエレシス一のシェフが作る料理は違う」
陛下とベンジャミンのお父様、アデレードのお父様は、色々な話で盛り上がっていた。
(大事な友人だと、ベンジャミン達に見せつけることで、私を守ろうとしてくれているのかな?)
陛下達の会話を聞きながら、陛下がどうして今日、私の関係者を呼んだのか、その理由を考える。
以前、陛下は私のことを、大事な友人だと言ってくれた。
あの時、私は陛下の申し出を断ったけれど、陛下はやはり、牽制が必要だと思ったのかもしれない。
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く
禅
恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。
だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。
しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。
こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは……
※完結まで毎日投稿します
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
死にかけ令嬢の逆転
ぽんぽこ狸
恋愛
難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。
部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。
しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。
だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。
けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。
彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。