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聖女、憧れのリゾートへ
転移の光が収まって目を開けて、俺はわあ、と声をあげた。水色に近い青の海に、白い砂浜。あれから半年ということもあって、観光客もそれなりにいる。私服に着替えてきてよかった。
俺たちが転移すると、近くのややふくよかな商人っぽい人が小走りで近寄ってくる。そしてテオと俺を見て礼をすると、笑顔を浮かべて両手を広げた。
「ようこそいらっしゃいました、テオ王子殿下、聖女タケル様。ここはモルコンタナリゾート。モルコンタナ海を一望しゆっくり楽しめる場所にございます。そして私めはここの商売を取り仕切っている責任者、バダールと申します。以後、お見知りおきを」
「バダールさん、よろしくお願いします」
「もちろん。一週間、お二人がモルコンタナリゾートを楽しめるように全力で手配させていただきますのでご安心ください。まずは荷物が邪魔でしょう。料金はいただいておりますので、ささ、こちらへ」
バダールさんが歩き出したのを見て、テオがこそっと俺に耳打ちしてくる。
「なんだか怪しいと思うのは俺だけか?」
「商売人っていうのはいつの時代もうさんくさいもんだよ。サラリーマンみたいなもん」
「サラリー……?」
「あ、こっちの話。荷物が邪魔なのは本当だし、行こうよ」
俺がバダールさんについていくと、テオも慌てて荷物を持って俺の隣に並ぶ。観光客が足を止めてテオを見る。この国の王子様だもんな。それでいて美形ときているから目を引くのも仕方ない。私服に着替えても、この国の人なら顔を知っていてもおかしくないか。
歩くことしばらく、海岸沿いに並ぶ商店街を歩いていると、とある四階建ての大きな建物の前でバダールさんは止まった。
「こちらが、モルコンタナリゾートが誇る高級ホテル、リル・モアーナでございます。全室コンシェルジュがつき、最上階のスイートから眺めるモルコンタナビーチは美しいですぞ! ワインを飲みながら月が照らす夜の海を見ると、うっとりすること間違いなし! 説明はこのくらいにして、まずはお荷物を預けましょう」
「二人一緒の部屋か?」
「そのようにうかがっております。ベッドも最高級のものが二つありますよ」
「そうか」
「他に疑問はございませんか?」
「いや、ない。すまなかった」
「とんでもないお言葉でございます。ではお荷物はコンシェルジュがお預かりいたしますので、お部屋のご案内は私めが」
バダールさんがそう言うと、大きな木のドアを開けて中に入っていく。俺たちも入って、俺はまたも驚く。エントランスはふかふかの絨毯で埋め尽くされていて、受付も現代と変わらないくらい清潔感があって綺麗だ。魔法で明かりがつけてある大きなシャンデリアがきらきらと輝いている。
すぐに白い燕尾服を着たコンシェルジュさんが二人出てきて、うやうやしく俺たちの荷物を財布以外預かってくれる。そして受付裏に下がっていったのを見計らって、バダールさんが螺旋階段を上っていった。俺たちもあとをついていくと、一階でも十分高級ホテルだというのがわかったのに階段をあがるほどにドアが質のいい木のドアに変わっていき、四階のスイートは黄金で作られた派手なドアだった。
四階で終わりの階段を上がりきって、すぐのドアの鍵をバダールさんが持っていた袋の中から取り出して開ける。頭を下げドアを開けて待っているバダールさんの前をテオが横切った。俺も続く。最後にバダールさんが入って、ドアが静かに閉められた。
中は白を基調とした清潔感のある部屋で、大きなベッドが二つある。それでも広くて、大きなテーブルにふかふかの椅子が二つ。絨毯もふかふかで、埃一つ見当たらないほど手入れが行き届いている。
テオがベランダに出ると、朝の陽ざしが綺麗な海を照らしてきらきらと輝いているのが見える、とてもいい部屋だった。なんだろう、何か月か前までただの社畜だったのにこんなに贅沢させてもらっていいのか……? 城でもいいもの食べさせてもらってたし、今さらか。
「このお部屋は特に人気が高く、スイートでも一番お値段が張るお部屋でもございます。お料理は一日中シェフが対応いたしまして、お夜食もご用意できますのでなんなりとお申しつけください」
「そうか。……この部屋、防音は?」
「防音も完璧でございます。貴重なゴムを原料にした防音材が壁の中に分厚く入っておりますので、お隣のお部屋の会話が聞こえたり、このお部屋の会話が聞こえることもございません」
「それは好都合だ」
「テオ……?」
なにか考えているらしいテオに俺が問いかけると、テオは仏頂面のまま首を横に振った。
「ん、ああ。なんでもない。部屋も確認できたし、外の観光を案内してもらおうか」
「うん」
「かしこまりました。ご朝食は?」
「まだだ」
「それでしたら、海の幸をふんだんに使った人気のレストランがございます。私めはそちらをご案内したら、一度商会ギルドに戻ります。ホテルの鍵もお渡ししますね。あと、これを」
バダールさんは真珠になにか魔道具がついているイヤリングを取り出した。耳たぶにつけると、なんとなく変な感覚がして、バダールさんの感覚が強くなる。
「それはつけている間、私めとどこにいても会話ができるという魔道具にございます。日中のご観光の間、なにかご不明点がございましたらいつでも私めを呼び出してお申しつけください」
便利だなあ、魔法があるとそんな無線みたいなことできるんだ。機械がそんなに発展してない世界だからこそ、魔法が発展したんだろうな。
今はバダールさんがいるから、このイヤリングはいらないか。胸ポケットにイヤリングをかけておくと、感覚がなくなる。本当に便利だな。
「では、参りましょう。戦争が終結して半年ですから、客足も回復してきているので少し混んでいるかもしれません。目が気になるのであれば、他にもいい店がありますが……」
「それは構わない。タケルと一緒なら人の目も気にならん」
「バカ、恥ずかしいだろ」
「ははは、仲がよろしいのはよいことですぞ! ここからほど近くですので、参りましょう」
バダールさんは愛想笑いを浮かべると、ホテルから向かって右方向に歩き出した。テオが鍵を俺の手から取って財布にしまうと、歩き始める。俺もゆっくり歩いてその隣に並んだ。朝の柔らかい日差しと海のさざ波の音の中歩くのは激務だったこの半年の疲れを癒すようで、本当にいい感じだ。テオと一緒だし……幸せ、かも。
そんなことを考えているうちに、先を歩いていたバダールさんが足を止める。ガラス張りで混んでいる店の中が見える店の前に立って、俺たちのほうを振り返った。
「こちらが、魚介をふんだんに使った料理が味わえるモルコンタナビーチ一番人気のレストランです。少々値は張りますが、今朝水揚げされた魚介を使っているので鮮度は抜群! 料理人の腕もいい。朝食にはもってこいですな。……ただ、やはり多少混んでいますな。どうされますか?」
「構わない。待つのも旅行の醍醐味だ」
「俺も、ちょっとくらいなら待てます」
「左様でございますか! ありがとうございます。では、直接のご案内は一旦ここまででございます。朝食をゆっくりご堪能ください」
「行くぞ、タケル」
「うん」
俺たちが店に入るまでバダールさんは礼をしていて、店の中の空いている席に座ったのを見届けると手を振って帰っていった。わりといい人だったな。俺たちが城の人間だからっていうのはあるかもしれないけど。
メニュー表を取ると、こっちでは魔道具で写真を取るんだけど、だいたいが白黒だ。だけどこの店は珍しく色がある。よっぽど繁盛してるみたいだ。ニョムニエールというこっちでいうクロマグロ並の高級魚の料理もあるし、お手頃なセットメニューもある。
テオはあっさり決めたみたいだけど、俺が決まらない。うんうん言って、ようやく決めたときには店の中にいたお客さんはだいたいが食べ終わって客が入れ替わっていた。ウェイターさんにそれぞれのメニューと飲み物を頼むと、俺は椅子の背もたれに体を預ける。自分のせいだけど、もう腹ペコだ。
「ごめんな。俺が優柔不断なせいで」
「構わない。悩むタケルもいいものだ。できれば、貸し切りにして悩む様子を楽しみたかったが」
「テオってたまに変なこと言うよね」
この半年の間もテオは一緒に戦争を乗り越えたからか、やたら一緒にいたがった。公務は普通にこなすんだけど、それ以外は俺にべったり。セイラさんにまで嫉妬するようになって、執着されるようになっていた。セイラさん、今ごろ衛兵さんと話ができているといいけど。
他愛ない話をしていると、メニューが届いた。俺はニョムニエールのソテーを挟んだサンドイッチ、テオは魚介とライスを料理酒とスパイスをきかせて炒めたものを頼んでいた。
「それじゃ、食べよっか」
「ああ」
「……! うま! すごい、肉じゃないのに溶けるー! 野菜と相性ばつぐん!」
「これもなかなかうまいぞ。リゾート一番の店というのも、あながち嘘ではないらしい」
俺たちは腹が減っていたのもあって、会話を楽しみながらこころゆくまで料理を楽しんだ。飲み物も貴重な茶葉を使ってブレンドした飲み物で、後味がすっきりしていて飲みやすい。大満足だ。
「おいしかった―!」
「神に感謝せねばな」
「そうだねえ。じゃあ、出ようか。俺、海入りたいから水着買いたい!」
「ここを通る途中脱衣所があったな。この近辺の店で買うといいだろう」
「テオは入らないの?」
「……泳げないんだ」
そこで爆笑したおれは間違ってない。だって、なんでも完璧なように見えるテオが泳げないって! 最高のネタでしょ! テオがいないときにセイラさんに教えてあげようっと。
お会計を済ませて、店の外に出た。俺が悩みすぎたせいで朝だったのはすっかり日中になっていて、海で泳ぐ観光客が多く見られた。家族連れから友達同士、それから……カップル。俺はカップルは見ないようにして歩いた。
戦場で好きなのを確認し合ったけど、その後手を出されなかったし、キスはしたけどそれ以上先には進まなかった。セイラさんの前でイチャイチャするのはなんか違うと思ってたし。
でも、今はセイラさんはいない。思いっきりいちゃついても、知らない人ばっかりの目で、王子と聖女という役目から外れてるからとがめられることもない。だから俺は、そっとテオの手を握った。テオはなにも言わずに握り返してくれる。横顔を見上げると、ほんの少し赤くなっていた。意識、してくれてるのかな。だったら嬉しい。
水着を売ってる店に入るまで、俺たちはそうして手をこっそり繋いでた。
俺たちが転移すると、近くのややふくよかな商人っぽい人が小走りで近寄ってくる。そしてテオと俺を見て礼をすると、笑顔を浮かべて両手を広げた。
「ようこそいらっしゃいました、テオ王子殿下、聖女タケル様。ここはモルコンタナリゾート。モルコンタナ海を一望しゆっくり楽しめる場所にございます。そして私めはここの商売を取り仕切っている責任者、バダールと申します。以後、お見知りおきを」
「バダールさん、よろしくお願いします」
「もちろん。一週間、お二人がモルコンタナリゾートを楽しめるように全力で手配させていただきますのでご安心ください。まずは荷物が邪魔でしょう。料金はいただいておりますので、ささ、こちらへ」
バダールさんが歩き出したのを見て、テオがこそっと俺に耳打ちしてくる。
「なんだか怪しいと思うのは俺だけか?」
「商売人っていうのはいつの時代もうさんくさいもんだよ。サラリーマンみたいなもん」
「サラリー……?」
「あ、こっちの話。荷物が邪魔なのは本当だし、行こうよ」
俺がバダールさんについていくと、テオも慌てて荷物を持って俺の隣に並ぶ。観光客が足を止めてテオを見る。この国の王子様だもんな。それでいて美形ときているから目を引くのも仕方ない。私服に着替えても、この国の人なら顔を知っていてもおかしくないか。
歩くことしばらく、海岸沿いに並ぶ商店街を歩いていると、とある四階建ての大きな建物の前でバダールさんは止まった。
「こちらが、モルコンタナリゾートが誇る高級ホテル、リル・モアーナでございます。全室コンシェルジュがつき、最上階のスイートから眺めるモルコンタナビーチは美しいですぞ! ワインを飲みながら月が照らす夜の海を見ると、うっとりすること間違いなし! 説明はこのくらいにして、まずはお荷物を預けましょう」
「二人一緒の部屋か?」
「そのようにうかがっております。ベッドも最高級のものが二つありますよ」
「そうか」
「他に疑問はございませんか?」
「いや、ない。すまなかった」
「とんでもないお言葉でございます。ではお荷物はコンシェルジュがお預かりいたしますので、お部屋のご案内は私めが」
バダールさんがそう言うと、大きな木のドアを開けて中に入っていく。俺たちも入って、俺はまたも驚く。エントランスはふかふかの絨毯で埋め尽くされていて、受付も現代と変わらないくらい清潔感があって綺麗だ。魔法で明かりがつけてある大きなシャンデリアがきらきらと輝いている。
すぐに白い燕尾服を着たコンシェルジュさんが二人出てきて、うやうやしく俺たちの荷物を財布以外預かってくれる。そして受付裏に下がっていったのを見計らって、バダールさんが螺旋階段を上っていった。俺たちもあとをついていくと、一階でも十分高級ホテルだというのがわかったのに階段をあがるほどにドアが質のいい木のドアに変わっていき、四階のスイートは黄金で作られた派手なドアだった。
四階で終わりの階段を上がりきって、すぐのドアの鍵をバダールさんが持っていた袋の中から取り出して開ける。頭を下げドアを開けて待っているバダールさんの前をテオが横切った。俺も続く。最後にバダールさんが入って、ドアが静かに閉められた。
中は白を基調とした清潔感のある部屋で、大きなベッドが二つある。それでも広くて、大きなテーブルにふかふかの椅子が二つ。絨毯もふかふかで、埃一つ見当たらないほど手入れが行き届いている。
テオがベランダに出ると、朝の陽ざしが綺麗な海を照らしてきらきらと輝いているのが見える、とてもいい部屋だった。なんだろう、何か月か前までただの社畜だったのにこんなに贅沢させてもらっていいのか……? 城でもいいもの食べさせてもらってたし、今さらか。
「このお部屋は特に人気が高く、スイートでも一番お値段が張るお部屋でもございます。お料理は一日中シェフが対応いたしまして、お夜食もご用意できますのでなんなりとお申しつけください」
「そうか。……この部屋、防音は?」
「防音も完璧でございます。貴重なゴムを原料にした防音材が壁の中に分厚く入っておりますので、お隣のお部屋の会話が聞こえたり、このお部屋の会話が聞こえることもございません」
「それは好都合だ」
「テオ……?」
なにか考えているらしいテオに俺が問いかけると、テオは仏頂面のまま首を横に振った。
「ん、ああ。なんでもない。部屋も確認できたし、外の観光を案内してもらおうか」
「うん」
「かしこまりました。ご朝食は?」
「まだだ」
「それでしたら、海の幸をふんだんに使った人気のレストランがございます。私めはそちらをご案内したら、一度商会ギルドに戻ります。ホテルの鍵もお渡ししますね。あと、これを」
バダールさんは真珠になにか魔道具がついているイヤリングを取り出した。耳たぶにつけると、なんとなく変な感覚がして、バダールさんの感覚が強くなる。
「それはつけている間、私めとどこにいても会話ができるという魔道具にございます。日中のご観光の間、なにかご不明点がございましたらいつでも私めを呼び出してお申しつけください」
便利だなあ、魔法があるとそんな無線みたいなことできるんだ。機械がそんなに発展してない世界だからこそ、魔法が発展したんだろうな。
今はバダールさんがいるから、このイヤリングはいらないか。胸ポケットにイヤリングをかけておくと、感覚がなくなる。本当に便利だな。
「では、参りましょう。戦争が終結して半年ですから、客足も回復してきているので少し混んでいるかもしれません。目が気になるのであれば、他にもいい店がありますが……」
「それは構わない。タケルと一緒なら人の目も気にならん」
「バカ、恥ずかしいだろ」
「ははは、仲がよろしいのはよいことですぞ! ここからほど近くですので、参りましょう」
バダールさんは愛想笑いを浮かべると、ホテルから向かって右方向に歩き出した。テオが鍵を俺の手から取って財布にしまうと、歩き始める。俺もゆっくり歩いてその隣に並んだ。朝の柔らかい日差しと海のさざ波の音の中歩くのは激務だったこの半年の疲れを癒すようで、本当にいい感じだ。テオと一緒だし……幸せ、かも。
そんなことを考えているうちに、先を歩いていたバダールさんが足を止める。ガラス張りで混んでいる店の中が見える店の前に立って、俺たちのほうを振り返った。
「こちらが、魚介をふんだんに使った料理が味わえるモルコンタナビーチ一番人気のレストランです。少々値は張りますが、今朝水揚げされた魚介を使っているので鮮度は抜群! 料理人の腕もいい。朝食にはもってこいですな。……ただ、やはり多少混んでいますな。どうされますか?」
「構わない。待つのも旅行の醍醐味だ」
「俺も、ちょっとくらいなら待てます」
「左様でございますか! ありがとうございます。では、直接のご案内は一旦ここまででございます。朝食をゆっくりご堪能ください」
「行くぞ、タケル」
「うん」
俺たちが店に入るまでバダールさんは礼をしていて、店の中の空いている席に座ったのを見届けると手を振って帰っていった。わりといい人だったな。俺たちが城の人間だからっていうのはあるかもしれないけど。
メニュー表を取ると、こっちでは魔道具で写真を取るんだけど、だいたいが白黒だ。だけどこの店は珍しく色がある。よっぽど繁盛してるみたいだ。ニョムニエールというこっちでいうクロマグロ並の高級魚の料理もあるし、お手頃なセットメニューもある。
テオはあっさり決めたみたいだけど、俺が決まらない。うんうん言って、ようやく決めたときには店の中にいたお客さんはだいたいが食べ終わって客が入れ替わっていた。ウェイターさんにそれぞれのメニューと飲み物を頼むと、俺は椅子の背もたれに体を預ける。自分のせいだけど、もう腹ペコだ。
「ごめんな。俺が優柔不断なせいで」
「構わない。悩むタケルもいいものだ。できれば、貸し切りにして悩む様子を楽しみたかったが」
「テオってたまに変なこと言うよね」
この半年の間もテオは一緒に戦争を乗り越えたからか、やたら一緒にいたがった。公務は普通にこなすんだけど、それ以外は俺にべったり。セイラさんにまで嫉妬するようになって、執着されるようになっていた。セイラさん、今ごろ衛兵さんと話ができているといいけど。
他愛ない話をしていると、メニューが届いた。俺はニョムニエールのソテーを挟んだサンドイッチ、テオは魚介とライスを料理酒とスパイスをきかせて炒めたものを頼んでいた。
「それじゃ、食べよっか」
「ああ」
「……! うま! すごい、肉じゃないのに溶けるー! 野菜と相性ばつぐん!」
「これもなかなかうまいぞ。リゾート一番の店というのも、あながち嘘ではないらしい」
俺たちは腹が減っていたのもあって、会話を楽しみながらこころゆくまで料理を楽しんだ。飲み物も貴重な茶葉を使ってブレンドした飲み物で、後味がすっきりしていて飲みやすい。大満足だ。
「おいしかった―!」
「神に感謝せねばな」
「そうだねえ。じゃあ、出ようか。俺、海入りたいから水着買いたい!」
「ここを通る途中脱衣所があったな。この近辺の店で買うといいだろう」
「テオは入らないの?」
「……泳げないんだ」
そこで爆笑したおれは間違ってない。だって、なんでも完璧なように見えるテオが泳げないって! 最高のネタでしょ! テオがいないときにセイラさんに教えてあげようっと。
お会計を済ませて、店の外に出た。俺が悩みすぎたせいで朝だったのはすっかり日中になっていて、海で泳ぐ観光客が多く見られた。家族連れから友達同士、それから……カップル。俺はカップルは見ないようにして歩いた。
戦場で好きなのを確認し合ったけど、その後手を出されなかったし、キスはしたけどそれ以上先には進まなかった。セイラさんの前でイチャイチャするのはなんか違うと思ってたし。
でも、今はセイラさんはいない。思いっきりいちゃついても、知らない人ばっかりの目で、王子と聖女という役目から外れてるからとがめられることもない。だから俺は、そっとテオの手を握った。テオはなにも言わずに握り返してくれる。横顔を見上げると、ほんの少し赤くなっていた。意識、してくれてるのかな。だったら嬉しい。
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