19 / 21
聖女、海の生物と戯れる
いざ水着の売ってる店に入って会計を済ませようとしたとき、とある張り紙が目に入った。『海の友達、サリーニヨと遊ぼう!』……。この半年で、俺はこの世界のことも知ったし、楽しみすぎて毎日アストレア国の海のことを調べていたから知っている。
サリーニヨはまさに俺がいないかな、と思っていたイルカのような生物で、知能が高く好奇心旺盛。ちょっと荒っぽいところがあるけど、小さい子供なら背中に乗ってブリーダーさんの監視下の元乗って遊べるくらい。
そんな張り紙をじっと見ていたからか、店主のおじさんが声をかけてくる。
「お兄さん、サリーニヨが好きなのかい?」
「え? あ、えっと。乗れないのは知ってるんですけど、ちょっと興味があって……」
「それなら、ここから二件隣の受付店で次いつサリーニヨと遊べるかわかるぞ。今はちょうどここで飼ってるサリーニヨが出てる時間だ」
「そうですか……」
「金なら払う。割りこむことはできないか?」
ずい、とテオが話に割って入る。店主は頬を引きつらせながら一歩後ずさった。
「お、お兄さん、金持ちなんだねえ。今から行けば、間に合うかもしれないけど……素直に次を待ったほうが……」
「今すぐじゃないとダメだ」
「……じゃあ、店に行くんだね。おれの店はただの水着屋だから」
テオはそれだけ聞くと、銀貨を三枚置いて釣銭も受け取らずに水着を二着取って俺の手を引いて店を出た。俺のために……? で、でも、順番は守らないと。
「テオ、気持ちは嬉しいけど今遊んでる人たちの邪魔するのは悪いよ」
「……タケル、サリーニヨと遊びたくないのか?」
「……テオと遊んで待ってればすぐだし。そっちのほうが楽しいよ」
「タケル……」
テオが感動したような顔をして俺を見る。いや、感動するところかなそこ。まあ、意識してあざとくした感はあるけど、俺も。テオが俺の手を掴む状態から、指を絡めて恋人繋ぎに変えたところで、軽く引っ張られる。俺が隣に立ったのを見届けると、二件隣の店にそのまま入る。老婆の店主が俺たちを見て、ほっほ、と笑った。
「同性カップルとはのう。幸運を運ぶサリーニヨは今日も幸せを運んでくるね」
「は、はは」
サリーニヨは、この国では恋のキューピッド的な伝説がある。だからカップルがよくサリーニヨに会いにここに来るんだって。今の今まで忘れてた。っていうか、同性カップルってバレちゃったの、ちょっと気まずい。
「今はサリーニヨとは遊べないよ。そうさねえ……一時間もすれば、遊べると思うけど」
「本当ですか!?」
「ああ、サリーニヨをたくさん飼ってるからね。交代で入れ替えてるのさ。はい、この腕輪。これがうちの店で会計を済ませた証さ。二人で金貨一枚だ」
「わかりました」
俺たちがカウンターの前に立って、俺が財布から金貨を取るために一旦手を離して金貨を一枚カウンターに置く。老婆は金貨を受け取ると、銀の腕輪を差し出してきた。かけるタイプらしく、手がするりと通って手首にひっかかった。
「サリーニヨと遊んだら、係員にその腕輪を返せばそれでいいよ。それじゃ、サリーニヨのご加護があらんことを」
「ありがとうございます……」
俺はちょっと顔を赤くしながら言うと、老婆はひゃっひゃ、と笑った。脱衣所から遠くなったと思ったけど、たまたま木の影に隠れていただけで、店の目の前に脱衣所があるのを見つけた。それなりに大きい中に入ると、木でできたロッカーがある。
どうやら一番大きい銅貨を入れると鍵が外れて中身を預けられるタイプらしくて、レストランで崩した銅貨を入れて鍵を取り、財布と服と下着を入れて水着に着替える。そのころにはお昼になってビーチは日光浴する人やどこかで買ったお昼をビーチで食べる人、泳ぐ人や浅瀬ではしゃぐ親子連れなんかで溢れかえっていた。
俺たちはさっき食べたばっかりだからお昼は買わないで遊ぼう、という話になり、浅瀬に入って腰まで浸かる。ほどよく冷たくて、綺麗な海水に俺は感動していた。日本だとこういう海は東京から遠い観光地ばかりだったし、遊びに行く暇も体力もなかったから本当にリゾートに来たんだという実感がようやくわいてくる。
「サリーニヨ! つめたいよー!」
そんな小さな女の子の声がした気がして向こうを見ると、桟橋がかけられていて、イルカによく似た、ヒレがちょっと尖ってるサリーニヨに水鉄砲を食らっている女の子がいるのが見えた。他にも数匹海を泳いでいて、カップルにキスをしたり小魚をあげているのが見えた。一時間後には、あれに俺も……。
「タケル、こっちだ!」
「え……わぷっ!?」
テオのほうを振り向いたときには海水を顔面で受け止めて、しょっぱさに俺はぺっぺっ、と口に入った海水を吐き出す。テオは楽しそうに笑っていて、ぱしゃぱしゃと俺の腹に海水をかけてくる。
「やめろよー!」
「サリーニヨに気をやっているのが悪い」
「テオ、おま、ほんとに! なんかここ半年で俺に執着しすぎじゃない!? 俺なんかした!?」
「俺のことが好きだろう!」
「ばっ……! 誰が聞いてるかわからな……ぶっ!」
「あははははは!」
また海水を顔にかけられて、王子という枷が外れたテオが愉快そうに笑う。こんなテオ、初めて見た。いつも王子という枷に縛られているから、感情を表に出すことも少なかったもんな。だったら。俺も聖女っていう役職を忘れて、一人の男に戻ってやる!
「ははは……ぶはっ!?」
「お返しだ! コラー!」
「おい、タケル! ……っ、かけすぎだ!」
「先にしかけたのテオだろ! 溺れてしまえ!」
本当に溺れさせるつもりで水をかけると、筋肉に水滴がついていい体がもっといい体に見える。……俺も筋トレしたほうがいいかな。貧弱だし。
そんなことをしながら、俺は泳いで少し沖合に逃げたりしてテオを置き去りにして遊んでいたりすると、桟橋のほうから甲高い笛の音が聞こえた。子供たちがばいばーい、と手を振って、カップルや子供たちの両親が腕輪を係員さんに返しているのが見える。
「あれ、もしかして順番かなー?」
「そうかもな。行ってみるか」
海からあがって砂浜を歩きながら桟橋に近づくと、係員さんがサリーニヨを入れ替えているところだった。女性の係員さんは俺たちに気付くと、腕輪を見て眩しい笑顔を見せる。
「いらっしゃいませ! 腕輪、確認させていただきました! サリーニヨの入れ替え中ですので、少しお待ちください!」
「はい。楽しみだね、テオ」
「そうだな。元気なタケルの顔が見られるのであれば、俺は十分だ」
「……バカ」
本当に、恥ずかしいことばっかり言う。いつからだっけ。三か月前から、セイラさんの前では遠慮せずに恥ずかしいことを言うようになって、セイラさんセイラさんと慕うのにも嫉妬するようになったんだっけ。セイラさんは別腹なのに。だって、行動が俺のお袋なんだもん。
疲れたサリーニヨを女性の係員さんが海に潜ってどこかに連れていく。入れ替わるように男性の体格のいい係員さんがやってくると、待ってましたと言わんばかりにサリーニヨ目当ての家族連れやカップルが集まってくる。カップルは当然男女で……ちょっと引け目を感じるなあ。俺が女だったらな。
そんなことを考えているのがバレたのか、テオがこっそり手を繋いでくる。びっくりしてテオを見上げると、いつもの余所行き用の仏頂面で平然としている。こいつ、確信犯だ……!
俺たちが一番最初に桟橋についたから、一匹のサリーニヨがあてがわれた。ギュイッ、ギュイッ、と愛想を振りまく姿に、俺はメロメロだ。
「かわいいなあ……!」
「かわいいか?」
「こういうのはかわいいって相場が決まってるんだよ! ……サリーニヨ、テオなんて放っておいて、一緒に遊ぼう!」
「ギュイッ!」
俺が桟橋から海の中に入っていくと、サリーニヨは人懐っこく近寄って甘えてきた。イルカより鱗がちょっとあるから少し痛いけど、これもサリーニヨ目当てできたからにはかわいくて仕方ない。
「あはは、くすぐったいよー!」
「……係員、小魚をくれ」
「はい、どうぞ!」
「……サリーニヨ、これが食べたいか」
「ギュイッ!? ギュッ、ギュッ!」
テオが桟橋から小魚をぶら下げると、餌を見たサリーニヨはテオのほうに泳いでいく。そしてヒレをぱしゃぱしゃさせて芸をしながらおねだりする。
「あーっ! ずるい! 俺も小魚あげたいのに!」
「先に海に潜ったのが悪い。……どうだサリーニヨ。俺とタケル、どっちを取る」
「ダメだこいつ、早くなんとかしないと……!」
このままじゃサリーニヨを横取りされる。でも、テオは泳げない。こうなったら……!
「テオ、ごめん!」
「え……うわっ!? ガボッ、俺はっ、泳げな……っ!」
「サリーニヨ! テオを助けて!」
「ギュイッ!」
「ぶはっ! ……タケル、謀ったな!」
「サリーニヨは餌がもらえて満足、俺はテオに一泡吹かせられて満足。意地悪するテオが悪いんだよーだ!」
べー、と舌を出すと、サリーニヨの背中に乗せられたテオが頭をかいた。大きいサリーニヨだから重くないのか、小魚をもぐもぐしていてかわいい。その後は一緒に餌をあげたり、腰までの浅瀬で一緒にサリーニヨとのひと時を満喫した。腕輪を係員さんに返すのは名残惜しかったけど、テオもからかえたし、サリーニヨはかわいかったから、いいか!
さすがにそのあとは腹が減って、片手で食べられるものを買ってビーチに座って食べた。味付けの濃いホロホロの肉を刻んだ葉物野菜と小麦粉でできた薄いシート状に焼いたものを一緒に食べる。生野菜もこれならおいしく食べられるし、なんでもおいしいなここは。
そんなことをしているうちに夕方になって、オレンジ色の夕日が沈んでいくのを見ると、本当にあっという間だった。
「もう一日終わるんだね……」
「ああ。あっという間だったな。……よし、着替えてホテルに帰って風呂に入るぞ」
「うん。明日なにしよっかなー」
そんなことを言いながら脱衣所に戻って鍵を使ってロッカーを開け、服を着替えて鍵を刺す。カチッ、という音が鳴って元に戻ったのを確認してから、ホテルに向かった。テオが手を繋いできたから、暗くなってきたのを確認して俺も握り返す。……俺だって、テオのことは好きだもん。ただ、正直になるのがちょっと照れくさいだけで。
サリーニヨはまさに俺がいないかな、と思っていたイルカのような生物で、知能が高く好奇心旺盛。ちょっと荒っぽいところがあるけど、小さい子供なら背中に乗ってブリーダーさんの監視下の元乗って遊べるくらい。
そんな張り紙をじっと見ていたからか、店主のおじさんが声をかけてくる。
「お兄さん、サリーニヨが好きなのかい?」
「え? あ、えっと。乗れないのは知ってるんですけど、ちょっと興味があって……」
「それなら、ここから二件隣の受付店で次いつサリーニヨと遊べるかわかるぞ。今はちょうどここで飼ってるサリーニヨが出てる時間だ」
「そうですか……」
「金なら払う。割りこむことはできないか?」
ずい、とテオが話に割って入る。店主は頬を引きつらせながら一歩後ずさった。
「お、お兄さん、金持ちなんだねえ。今から行けば、間に合うかもしれないけど……素直に次を待ったほうが……」
「今すぐじゃないとダメだ」
「……じゃあ、店に行くんだね。おれの店はただの水着屋だから」
テオはそれだけ聞くと、銀貨を三枚置いて釣銭も受け取らずに水着を二着取って俺の手を引いて店を出た。俺のために……? で、でも、順番は守らないと。
「テオ、気持ちは嬉しいけど今遊んでる人たちの邪魔するのは悪いよ」
「……タケル、サリーニヨと遊びたくないのか?」
「……テオと遊んで待ってればすぐだし。そっちのほうが楽しいよ」
「タケル……」
テオが感動したような顔をして俺を見る。いや、感動するところかなそこ。まあ、意識してあざとくした感はあるけど、俺も。テオが俺の手を掴む状態から、指を絡めて恋人繋ぎに変えたところで、軽く引っ張られる。俺が隣に立ったのを見届けると、二件隣の店にそのまま入る。老婆の店主が俺たちを見て、ほっほ、と笑った。
「同性カップルとはのう。幸運を運ぶサリーニヨは今日も幸せを運んでくるね」
「は、はは」
サリーニヨは、この国では恋のキューピッド的な伝説がある。だからカップルがよくサリーニヨに会いにここに来るんだって。今の今まで忘れてた。っていうか、同性カップルってバレちゃったの、ちょっと気まずい。
「今はサリーニヨとは遊べないよ。そうさねえ……一時間もすれば、遊べると思うけど」
「本当ですか!?」
「ああ、サリーニヨをたくさん飼ってるからね。交代で入れ替えてるのさ。はい、この腕輪。これがうちの店で会計を済ませた証さ。二人で金貨一枚だ」
「わかりました」
俺たちがカウンターの前に立って、俺が財布から金貨を取るために一旦手を離して金貨を一枚カウンターに置く。老婆は金貨を受け取ると、銀の腕輪を差し出してきた。かけるタイプらしく、手がするりと通って手首にひっかかった。
「サリーニヨと遊んだら、係員にその腕輪を返せばそれでいいよ。それじゃ、サリーニヨのご加護があらんことを」
「ありがとうございます……」
俺はちょっと顔を赤くしながら言うと、老婆はひゃっひゃ、と笑った。脱衣所から遠くなったと思ったけど、たまたま木の影に隠れていただけで、店の目の前に脱衣所があるのを見つけた。それなりに大きい中に入ると、木でできたロッカーがある。
どうやら一番大きい銅貨を入れると鍵が外れて中身を預けられるタイプらしくて、レストランで崩した銅貨を入れて鍵を取り、財布と服と下着を入れて水着に着替える。そのころにはお昼になってビーチは日光浴する人やどこかで買ったお昼をビーチで食べる人、泳ぐ人や浅瀬ではしゃぐ親子連れなんかで溢れかえっていた。
俺たちはさっき食べたばっかりだからお昼は買わないで遊ぼう、という話になり、浅瀬に入って腰まで浸かる。ほどよく冷たくて、綺麗な海水に俺は感動していた。日本だとこういう海は東京から遠い観光地ばかりだったし、遊びに行く暇も体力もなかったから本当にリゾートに来たんだという実感がようやくわいてくる。
「サリーニヨ! つめたいよー!」
そんな小さな女の子の声がした気がして向こうを見ると、桟橋がかけられていて、イルカによく似た、ヒレがちょっと尖ってるサリーニヨに水鉄砲を食らっている女の子がいるのが見えた。他にも数匹海を泳いでいて、カップルにキスをしたり小魚をあげているのが見えた。一時間後には、あれに俺も……。
「タケル、こっちだ!」
「え……わぷっ!?」
テオのほうを振り向いたときには海水を顔面で受け止めて、しょっぱさに俺はぺっぺっ、と口に入った海水を吐き出す。テオは楽しそうに笑っていて、ぱしゃぱしゃと俺の腹に海水をかけてくる。
「やめろよー!」
「サリーニヨに気をやっているのが悪い」
「テオ、おま、ほんとに! なんかここ半年で俺に執着しすぎじゃない!? 俺なんかした!?」
「俺のことが好きだろう!」
「ばっ……! 誰が聞いてるかわからな……ぶっ!」
「あははははは!」
また海水を顔にかけられて、王子という枷が外れたテオが愉快そうに笑う。こんなテオ、初めて見た。いつも王子という枷に縛られているから、感情を表に出すことも少なかったもんな。だったら。俺も聖女っていう役職を忘れて、一人の男に戻ってやる!
「ははは……ぶはっ!?」
「お返しだ! コラー!」
「おい、タケル! ……っ、かけすぎだ!」
「先にしかけたのテオだろ! 溺れてしまえ!」
本当に溺れさせるつもりで水をかけると、筋肉に水滴がついていい体がもっといい体に見える。……俺も筋トレしたほうがいいかな。貧弱だし。
そんなことをしながら、俺は泳いで少し沖合に逃げたりしてテオを置き去りにして遊んでいたりすると、桟橋のほうから甲高い笛の音が聞こえた。子供たちがばいばーい、と手を振って、カップルや子供たちの両親が腕輪を係員さんに返しているのが見える。
「あれ、もしかして順番かなー?」
「そうかもな。行ってみるか」
海からあがって砂浜を歩きながら桟橋に近づくと、係員さんがサリーニヨを入れ替えているところだった。女性の係員さんは俺たちに気付くと、腕輪を見て眩しい笑顔を見せる。
「いらっしゃいませ! 腕輪、確認させていただきました! サリーニヨの入れ替え中ですので、少しお待ちください!」
「はい。楽しみだね、テオ」
「そうだな。元気なタケルの顔が見られるのであれば、俺は十分だ」
「……バカ」
本当に、恥ずかしいことばっかり言う。いつからだっけ。三か月前から、セイラさんの前では遠慮せずに恥ずかしいことを言うようになって、セイラさんセイラさんと慕うのにも嫉妬するようになったんだっけ。セイラさんは別腹なのに。だって、行動が俺のお袋なんだもん。
疲れたサリーニヨを女性の係員さんが海に潜ってどこかに連れていく。入れ替わるように男性の体格のいい係員さんがやってくると、待ってましたと言わんばかりにサリーニヨ目当ての家族連れやカップルが集まってくる。カップルは当然男女で……ちょっと引け目を感じるなあ。俺が女だったらな。
そんなことを考えているのがバレたのか、テオがこっそり手を繋いでくる。びっくりしてテオを見上げると、いつもの余所行き用の仏頂面で平然としている。こいつ、確信犯だ……!
俺たちが一番最初に桟橋についたから、一匹のサリーニヨがあてがわれた。ギュイッ、ギュイッ、と愛想を振りまく姿に、俺はメロメロだ。
「かわいいなあ……!」
「かわいいか?」
「こういうのはかわいいって相場が決まってるんだよ! ……サリーニヨ、テオなんて放っておいて、一緒に遊ぼう!」
「ギュイッ!」
俺が桟橋から海の中に入っていくと、サリーニヨは人懐っこく近寄って甘えてきた。イルカより鱗がちょっとあるから少し痛いけど、これもサリーニヨ目当てできたからにはかわいくて仕方ない。
「あはは、くすぐったいよー!」
「……係員、小魚をくれ」
「はい、どうぞ!」
「……サリーニヨ、これが食べたいか」
「ギュイッ!? ギュッ、ギュッ!」
テオが桟橋から小魚をぶら下げると、餌を見たサリーニヨはテオのほうに泳いでいく。そしてヒレをぱしゃぱしゃさせて芸をしながらおねだりする。
「あーっ! ずるい! 俺も小魚あげたいのに!」
「先に海に潜ったのが悪い。……どうだサリーニヨ。俺とタケル、どっちを取る」
「ダメだこいつ、早くなんとかしないと……!」
このままじゃサリーニヨを横取りされる。でも、テオは泳げない。こうなったら……!
「テオ、ごめん!」
「え……うわっ!? ガボッ、俺はっ、泳げな……っ!」
「サリーニヨ! テオを助けて!」
「ギュイッ!」
「ぶはっ! ……タケル、謀ったな!」
「サリーニヨは餌がもらえて満足、俺はテオに一泡吹かせられて満足。意地悪するテオが悪いんだよーだ!」
べー、と舌を出すと、サリーニヨの背中に乗せられたテオが頭をかいた。大きいサリーニヨだから重くないのか、小魚をもぐもぐしていてかわいい。その後は一緒に餌をあげたり、腰までの浅瀬で一緒にサリーニヨとのひと時を満喫した。腕輪を係員さんに返すのは名残惜しかったけど、テオもからかえたし、サリーニヨはかわいかったから、いいか!
さすがにそのあとは腹が減って、片手で食べられるものを買ってビーチに座って食べた。味付けの濃いホロホロの肉を刻んだ葉物野菜と小麦粉でできた薄いシート状に焼いたものを一緒に食べる。生野菜もこれならおいしく食べられるし、なんでもおいしいなここは。
そんなことをしているうちに夕方になって、オレンジ色の夕日が沈んでいくのを見ると、本当にあっという間だった。
「もう一日終わるんだね……」
「ああ。あっという間だったな。……よし、着替えてホテルに帰って風呂に入るぞ」
「うん。明日なにしよっかなー」
そんなことを言いながら脱衣所に戻って鍵を使ってロッカーを開け、服を着替えて鍵を刺す。カチッ、という音が鳴って元に戻ったのを確認してから、ホテルに向かった。テオが手を繋いできたから、暗くなってきたのを確認して俺も握り返す。……俺だって、テオのことは好きだもん。ただ、正直になるのがちょっと照れくさいだけで。
あなたにおすすめの小説
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
異世界転移した俺は今日も保護者の騎士様に甘やかされています
岩永みやび
BL
大学生のイツキ(20歳)は、ある日異世界に転移してしまう。
考える暇もなくあっという間に保護されたイツキ。どうやらこの世界、たまに異世界から色々と落ちてくるらしい。
「大丈夫。君の生活は保障します。保護者も用意しますからね」
役人にそう言われ、紹介されたのはラーシュ(26歳)という騎士だった。
最初は文字通りイツキの保護者としてあれこれ世話を焼いてくれたラーシュだが、その子供扱いにモヤモヤしはじめるイツキ。
子供扱いはやめてほしい。でも俺を甘やかすのはやめないでほしい……。
※全39話+番外編
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
悪役の運命から逃げたいのに、独占欲騎士様が離してくれません
ちとせ
BL
執着バリバリなクールイケメン騎士×一生懸命な元悪役美貌転生者
地味に生きたい転生悪役と、全力で囲い込む氷の騎士。
乙女ゲームの断罪予定悪役に転生してしまった春野奏。
新しい人生では断罪を回避して穏やかに暮らしたい——そう決意した奏ことカイ・フォン・リヒテンベルクは、善行を積み、目立たず生きることを目標にする。
だが、唯一の誤算は護衛騎士・ゼクスの存在だった。
冷静で用心深く、厳格な彼が護衛としてそばにいるということはやり直し人生前途多難だ…
そう思っていたのに───
「ご自身を大事にしない分、私が守ります」
「あなたは、すべて私のものです。
上書きが……必要ですね」
断罪回避のはずが、護衛騎士に執着されて逃げ道ゼロ!?
護られてるはずなのに、なんだか囚われている気がするのは気のせい?
警戒から始まる、甘く切なく、そしてどこまでも執着深い恋。
一生懸命な転生悪役と、独占欲モンスターな護衛騎士の、主従ラブストーリー!