望郷のアルカティア ~異世界漂流記~

スグロタイラ

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第09話 ガサゴソ

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(ようやく生きた人間に会えたと思ったら、ソイツ等が2人とも人殺しとはどういう事だ…)
(そもそも、先刻会ったばかりの僕に何故そんなことを易々と話す…?)
(何か企んでるのか…?)

 さすがにこれには動揺が隠せない。
 ソレを察したのか、アロイという男はすかさず言葉を放つ。

「勘違いしねぇで欲しいのは、オレぁ好きで人殺しなんかしない。ましてや、ぼっちゃんを人質にしてやろうなんかコレっぽっちも考えてねぇ。神に誓う。」
 何やらワケがありそうだ。男は寂しさを漂わせる苦々しい顔で語った。

(会話をした限り、頭のおかしい奴で無い事は何となくわかる。あらかじめ人殺しの件を打ち明けたのは善意のつもりだろうか…?まぁ多少は話のわかる奴だしな。)
 先ほど貴族扱いされ、気分が良いので寛容になっていた。
(後ろの女よりはマシか…)
 黙って話を聞いているかと思えば、彼女は何やらガサゴソ音を立てている。
 ハロルドはアロイという男の言葉を受け入れるのであった。
 これ以上余計な詮索をすれば、事を荒立て兼ねない。

「わかった。お前が悪人で無いという言葉、信じてやろう。」
 だいぶ上から目線だが、アロイは気にしていない様子。
 身分の違いを理解しているのだ。

「ありがてぇ。それにあの嬢ちゃんだって悪い子じゃねぇ。ここまで一緒に来たんならわかったでしょう。あの子にも何か事情があるはずだ。」

(確かに、あの女は初対面の自分を理由も無しに助けてくれた。しかし…今までの態度の数々をかんがみても、アイツなら好きで殺しをやっていても不思議では無い…)
 尚も彼女はガサゴソ五月蝿うるさい。

(まぁこの際、あの女のことはどうでもよいか…)
 ハロルドはコクリと頷いて返した。
 相手が人殺しで何を企んでいようと関係無い、とハロルドは考え始めていたのだ。
 それには彼のある思惑があった。
 
 しかし、気になってしまう。
(ずっと後ろでガサゴソと…さっきから何をやっているのだあの女は…?)

 振り返って彼女を見ると、何やら口をもごもごと動かしている。
 腰からぶら下げた袋の様な物に手を突っ込んでガサゴソ中を探り、掴んだかと思うとソレを口へと運ぶ。
 ガサゴソの正体であった。

(あの女…1人だけ何かを食べているな…)
 ハロルドはここまでの度重なる疲労と、前日満足に食事をしていなかったせいで、とてつもない空腹感に襲われていた。食事に一切頓着がなかった彼にとって、それは久しぶりの感覚であった。
 ゴクリと生唾を飲む。
 たまらず彼女に声を掛ける。

「お、おい…私にもソレをくれぬか…?」

 食べ物を人に乞うなど初めての経験であった為にだいぶぎこちなかった。彼女へのトラウマのせいもあったが。
 すると、以外にも彼女は素直に言う事を聞いてくれたのだ。ハロルドはなぜか感動していた。
 彼女が「んっ」と”ソレ”を手渡してくる。
 手の平に乗ったソレは、木の実なのか果物なのか瑞々みずみずしくテカリを放っていた。
 ハロルドは手に取ろうとしたが…
(動いた?)
 一瞬そのように見えたのだ。そんなはずはないとまじまじと見つめる。すると…
 ”ソレ”にはいくつもの足が生えワナワナと蠢いていた。
 パンパンに膨れ上がった虫――――

「きぃやぁあああっー!!」

 ハロルドは少女のような声を上げる。
 それを見て彼女は表情一つ変えず「フッ」と鼻で笑っていた。

「ハハッ!ぼっちゃんも腹ァ減ってんでしょう?ここまで来るのは死ぬ程大変だったはずだ。俺が食事の準備をするから、休んでてくだせぇ。」
 アロイ、なんともよくできた男である。

「う、うむっ、よろしく頼むっ」
 声が上擦りながらもハロルドは答えた。
 そして、アロイは自身の巨体には見合わない剣を携え、嬢ちゃん後は頼むとだけ言うと、さっさと樹海の奥へと消えて行った。

(え?食事は?)
 ハロルドは面食らう。
 どうやら現地調達のようであった。
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