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第14話 すごく単純な事
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「ぼっちゃん、もう充分だ。」
アロイはハロルドの運動能力に驚いているようだった。
石を持ち上げさせて筋力を測ったり、短い距離を一定の間隔で走らせてみたりと、色々やらせたのだが…
結果は散々であった。
こりゃあうちの娘の方がまだ体力あるんじゃねぇか?等と思われる程に。
あの貧相な体を見たときからある程度予想はしていた上での感想であった。
白い彼女、シアンはその様子を未だに虫を摘まみながら黙って見ていた。
「ぼっちゃんは騎士見習いと聞きましたが…何というか…」
「ま、まだっ…見習いにっ…成り立てであってな…」
息も絶え絶えにハロルドは言った。
嘘だ。もう3年近くやっている。
そしてそれは、あくまでも騎士見習いごっこだ。
ただ無闇に剣を振り、仰ぐ対象である筈の雇われ騎士におべっかを使われながら、その日の気分で続けてきた。
騎士になど成れる筈も無い。
そもそも彼の父もそう思っているように、ハロルド自身にも本気で騎士になるという気など無いのだ。
まさに騎士見習いごっこであった。
「そうだったんですねぇ。だが、将来ぼっちゃんが騎士になるってんなら尚更体力はあったほうがいいでしょう。」
こんな体力も身体も貧相な男が騎士見習いの筈は無いのだが、アロイは細かいことを気にしないらしい。
話が逸れちまいましたが、とアロイは続ける。
「ぼっちゃんを護衛しながらこの樹海を抜けるってのも、今のままじゃちょいと難しいですな…」
(なぜだ!?)
ハロルドは焦った。
「どういうことだ!ぼくっ…私の体力では足手まといになると言いたいのはわかる…だが、その為にお前達を護衛として雇うのだぞ!?報酬も払うと言った!」
(これでは何の為にお前達を騙したのかわからないではないか…)
「お前達は強いのだろう?私でも見ればわかる!」
「恥ずかしながら、オレの力じゃあ今のぼっちゃんを守りながらこの樹海を抜けるのは無理です…嬢ちゃんが居てくれる事を踏まえて考えても無理だ。動けない人間を庇いながらじゃあ圧倒的に人数が足りねぇ。」
アロイはあくまでも冷静であった。
「ただ樹海を抜けるだけだぞ?何とかなるんじゃないか!?」
尚もハロルドは食い下がる。
「そのことなんですがね…」
するとアロイは、この樹海のことを語り出したのである。
今自分達が居るこの場所は周りより低い位置にある上に、倒木や岩のおかげで外からは見え辛い。いざという時身を潜めるのに充分な洞穴もある。そのおかげで今のところ無事なのだと。
「オレと嬢ちゃんだけなら大丈夫だろうが…ぼっちゃんが外で夜を越すのは難しいだろう…」
外には奴等が居る…と。
ハロルドは何となく分かっていた。
彼が必要以上に外を警戒している事も、昨夜彼女が居なかったのも、何かを遠ざける為だったのだろう。
(そんな…それじゃあ、僕はこの樹海でただ死ぬのを待つだけなのか…?)
ハロルドはまたしても死を身近に感じていた。
そもそもこんな状況下において、あんなにぐっすり眠れる夜を過ごせた事の方がおかしいのだ。
打ちひしがれるハロルドを見てアロイは笑った。
馬鹿にしたわけじゃない。アロイが笑うときは何時だって誰かを安心させる為に笑うのだ。
「大丈夫だぼっちゃん!この問題を解決するいい方法がある。しかも飛び切り単純ときた。」
「そもそもこれを言うためにぼっちゃんにあんな事をさせたんだぜ?」
「なんだ!?その方法は!何なんだ!?」
ハロルドはアロイにすがり付く。
「ぼっちゃんが、オレ達ぐらい動けるようになればいいっ!!」
それは、これ以上に無いくらいの清清しい笑みであった。
アロイの言うようにすごく単純な事だ。単純で分かりやすい。
そして、なんとも間の抜けた答えであった。
最後まで黙って話を聞いていたシアンは、ここぞとばかりにハロルドに歩み寄り、虫を一匹差し出してきた。
彼女は飛び切りの『頑張れよ』という顔をしていたのだった。
アロイはハロルドの運動能力に驚いているようだった。
石を持ち上げさせて筋力を測ったり、短い距離を一定の間隔で走らせてみたりと、色々やらせたのだが…
結果は散々であった。
こりゃあうちの娘の方がまだ体力あるんじゃねぇか?等と思われる程に。
あの貧相な体を見たときからある程度予想はしていた上での感想であった。
白い彼女、シアンはその様子を未だに虫を摘まみながら黙って見ていた。
「ぼっちゃんは騎士見習いと聞きましたが…何というか…」
「ま、まだっ…見習いにっ…成り立てであってな…」
息も絶え絶えにハロルドは言った。
嘘だ。もう3年近くやっている。
そしてそれは、あくまでも騎士見習いごっこだ。
ただ無闇に剣を振り、仰ぐ対象である筈の雇われ騎士におべっかを使われながら、その日の気分で続けてきた。
騎士になど成れる筈も無い。
そもそも彼の父もそう思っているように、ハロルド自身にも本気で騎士になるという気など無いのだ。
まさに騎士見習いごっこであった。
「そうだったんですねぇ。だが、将来ぼっちゃんが騎士になるってんなら尚更体力はあったほうがいいでしょう。」
こんな体力も身体も貧相な男が騎士見習いの筈は無いのだが、アロイは細かいことを気にしないらしい。
話が逸れちまいましたが、とアロイは続ける。
「ぼっちゃんを護衛しながらこの樹海を抜けるってのも、今のままじゃちょいと難しいですな…」
(なぜだ!?)
ハロルドは焦った。
「どういうことだ!ぼくっ…私の体力では足手まといになると言いたいのはわかる…だが、その為にお前達を護衛として雇うのだぞ!?報酬も払うと言った!」
(これでは何の為にお前達を騙したのかわからないではないか…)
「お前達は強いのだろう?私でも見ればわかる!」
「恥ずかしながら、オレの力じゃあ今のぼっちゃんを守りながらこの樹海を抜けるのは無理です…嬢ちゃんが居てくれる事を踏まえて考えても無理だ。動けない人間を庇いながらじゃあ圧倒的に人数が足りねぇ。」
アロイはあくまでも冷静であった。
「ただ樹海を抜けるだけだぞ?何とかなるんじゃないか!?」
尚もハロルドは食い下がる。
「そのことなんですがね…」
するとアロイは、この樹海のことを語り出したのである。
今自分達が居るこの場所は周りより低い位置にある上に、倒木や岩のおかげで外からは見え辛い。いざという時身を潜めるのに充分な洞穴もある。そのおかげで今のところ無事なのだと。
「オレと嬢ちゃんだけなら大丈夫だろうが…ぼっちゃんが外で夜を越すのは難しいだろう…」
外には奴等が居る…と。
ハロルドは何となく分かっていた。
彼が必要以上に外を警戒している事も、昨夜彼女が居なかったのも、何かを遠ざける為だったのだろう。
(そんな…それじゃあ、僕はこの樹海でただ死ぬのを待つだけなのか…?)
ハロルドはまたしても死を身近に感じていた。
そもそもこんな状況下において、あんなにぐっすり眠れる夜を過ごせた事の方がおかしいのだ。
打ちひしがれるハロルドを見てアロイは笑った。
馬鹿にしたわけじゃない。アロイが笑うときは何時だって誰かを安心させる為に笑うのだ。
「大丈夫だぼっちゃん!この問題を解決するいい方法がある。しかも飛び切り単純ときた。」
「そもそもこれを言うためにぼっちゃんにあんな事をさせたんだぜ?」
「なんだ!?その方法は!何なんだ!?」
ハロルドはアロイにすがり付く。
「ぼっちゃんが、オレ達ぐらい動けるようになればいいっ!!」
それは、これ以上に無いくらいの清清しい笑みであった。
アロイの言うようにすごく単純な事だ。単純で分かりやすい。
そして、なんとも間の抜けた答えであった。
最後まで黙って話を聞いていたシアンは、ここぞとばかりにハロルドに歩み寄り、虫を一匹差し出してきた。
彼女は飛び切りの『頑張れよ』という顔をしていたのだった。
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