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第16話 夢
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「も、もう結構だ…残りはお前達で…」
ハロルドはシアンの『とっておき』を、何とか食べる真似をしながらやり過ごそうとしていた。
「そりゃないぜぼっちゃん。嬢ちゃんがこうして気合入れて獲ってきてくれたんだ、遠慮しねぇでドンドン食べましょうぜ!」
遠慮など微塵もしていない。
「それにさっきも言ったでしょう。体力作り、いい筋肉を付ける為にも虫を食うのは良いんだ。大昔から言われてる事なんですぜ。」
そんな話聞いたことが無かった。
(こんな事ならば、例のブサイクな生き物を食わされるほうがマシだ…)
「食べないのか…?」
シアンが山盛りの虫を差し出してくる。その顔はなんとも言えない悲しい表情をしていた。
(コイツ…なんて顔だ…)
(お前が初日に僕を騙して虫を食わせようとしたこと、僕を鼻で笑ったこと、忘れてはいないぞ…)
催促したのはハロルドの方だったのだが、彼の中ではそういうことになっていた。
ハロルドの予想通り、彼女の悲しい表情は演技なのだ。
「ほら、ぼっちゃん…?」
アロイまでもが心なしか、悲しい表情をしながら虫を差し出してくる。
もう食べる演技で誤魔化す事はできない。
いつもならばここで身分の違いなどを盾に取り、頑として断っていたのだろうが、ハロルドは周りの空気に流されていた。
(せめて、せめて普通の虫を…)
追い詰められたハロルドは良く分からない思考になる。
差し出された虫の中から小指のように小さく丸まった芋虫らしきモノを選び、口へと放り込むのであった。
口の中でコロコロと転がし悪あがきをしていたのだが、口の中に虫が居るという状況を早くなんとかしたくて、たまらず噛み潰す。
食感はドロリと最悪だが、意外と…味は悪くない…すり潰した木の実のような香りとコクがある。
土臭さと青臭さに目を瞑れば食べれないことも無い。
だが、もう食べたくない…
”虫ですよ”という見た目と事実が無理なのだ。
しかし、食べたのは一匹。虫はまだ山のようにある。
(あぁ、かつてコレほどに辛い食事があっただろうか…)
ハロルドはそのうち考えるのをやめた。
ただひたすらに虫を口へと運び、噛み潰し、飲み込むだけの機械と化す。
そして彼の心と同じように、日も沈んでいった――――
◇◇◇◇◇◇
(あの女、また居なくなってるな…)
食事を終え、心を取り戻したハロルドはシアンの姿が無いことに気付いた。
恐らく昨日のように奴等、外のバケモノを見張るなり、遠ざけるなりしているのだろう。
すると、アロイが心を読んだかのように話し掛けてくる。
「嬢ちゃんなんですがね、夜目が利くらしいんですよ。そういう体質だとかで。」
血族の力の事だろう。初めて出会った時も瞳が光っていた。
(あいつの能力は夜目が利く事なのか?血族の力にしては大したことないな。)
大した力だと思うのだが、血族の中においてそうでは無いらしい。
ハロルドはなんだか安心していたのだった。
「夜の見張りはついつい嬢ちゃんの力に甘えちまう。オレもいいかげんしっかりしねぇとなぁ…」
「一緒に頑張りましょうぜぼっちゃん。」
僕はもう頑張ってるだろう、と言いたい所だったがそんな元気も無かった。眠いのだ。
「おやすみぼっちゃん。」
相変わらず火の番はアロイがやるらしい。
ハロルドは眠り眼を擦る。
(あいつ等はいつ眠っているのだろう?)
などと思いながら、ひとり洞穴で眠りに付いた――――
ハロルドは夢を見た。
あの夢だ。
真っ暗な空間、
顔の無い者達に押さえ付けられながら、
バケモノに食われる夢。
やはり、ハロルドは目を覚ます。
忘れたわけではない。
出来る事なら忘れたい。
彼らが忘れることを許してくれない。
(僕のせいじゃないのに…)
ハロルドの心は、あの洞窟に囚われたままだ。
彼はこの先、この悪夢と長い付き合いになるのであった。
ハロルドはシアンの『とっておき』を、何とか食べる真似をしながらやり過ごそうとしていた。
「そりゃないぜぼっちゃん。嬢ちゃんがこうして気合入れて獲ってきてくれたんだ、遠慮しねぇでドンドン食べましょうぜ!」
遠慮など微塵もしていない。
「それにさっきも言ったでしょう。体力作り、いい筋肉を付ける為にも虫を食うのは良いんだ。大昔から言われてる事なんですぜ。」
そんな話聞いたことが無かった。
(こんな事ならば、例のブサイクな生き物を食わされるほうがマシだ…)
「食べないのか…?」
シアンが山盛りの虫を差し出してくる。その顔はなんとも言えない悲しい表情をしていた。
(コイツ…なんて顔だ…)
(お前が初日に僕を騙して虫を食わせようとしたこと、僕を鼻で笑ったこと、忘れてはいないぞ…)
催促したのはハロルドの方だったのだが、彼の中ではそういうことになっていた。
ハロルドの予想通り、彼女の悲しい表情は演技なのだ。
「ほら、ぼっちゃん…?」
アロイまでもが心なしか、悲しい表情をしながら虫を差し出してくる。
もう食べる演技で誤魔化す事はできない。
いつもならばここで身分の違いなどを盾に取り、頑として断っていたのだろうが、ハロルドは周りの空気に流されていた。
(せめて、せめて普通の虫を…)
追い詰められたハロルドは良く分からない思考になる。
差し出された虫の中から小指のように小さく丸まった芋虫らしきモノを選び、口へと放り込むのであった。
口の中でコロコロと転がし悪あがきをしていたのだが、口の中に虫が居るという状況を早くなんとかしたくて、たまらず噛み潰す。
食感はドロリと最悪だが、意外と…味は悪くない…すり潰した木の実のような香りとコクがある。
土臭さと青臭さに目を瞑れば食べれないことも無い。
だが、もう食べたくない…
”虫ですよ”という見た目と事実が無理なのだ。
しかし、食べたのは一匹。虫はまだ山のようにある。
(あぁ、かつてコレほどに辛い食事があっただろうか…)
ハロルドはそのうち考えるのをやめた。
ただひたすらに虫を口へと運び、噛み潰し、飲み込むだけの機械と化す。
そして彼の心と同じように、日も沈んでいった――――
◇◇◇◇◇◇
(あの女、また居なくなってるな…)
食事を終え、心を取り戻したハロルドはシアンの姿が無いことに気付いた。
恐らく昨日のように奴等、外のバケモノを見張るなり、遠ざけるなりしているのだろう。
すると、アロイが心を読んだかのように話し掛けてくる。
「嬢ちゃんなんですがね、夜目が利くらしいんですよ。そういう体質だとかで。」
血族の力の事だろう。初めて出会った時も瞳が光っていた。
(あいつの能力は夜目が利く事なのか?血族の力にしては大したことないな。)
大した力だと思うのだが、血族の中においてそうでは無いらしい。
ハロルドはなんだか安心していたのだった。
「夜の見張りはついつい嬢ちゃんの力に甘えちまう。オレもいいかげんしっかりしねぇとなぁ…」
「一緒に頑張りましょうぜぼっちゃん。」
僕はもう頑張ってるだろう、と言いたい所だったがそんな元気も無かった。眠いのだ。
「おやすみぼっちゃん。」
相変わらず火の番はアロイがやるらしい。
ハロルドは眠り眼を擦る。
(あいつ等はいつ眠っているのだろう?)
などと思いながら、ひとり洞穴で眠りに付いた――――
ハロルドは夢を見た。
あの夢だ。
真っ暗な空間、
顔の無い者達に押さえ付けられながら、
バケモノに食われる夢。
やはり、ハロルドは目を覚ます。
忘れたわけではない。
出来る事なら忘れたい。
彼らが忘れることを許してくれない。
(僕のせいじゃないのに…)
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