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第18話 もう嫌だ…
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ハロルドが引き篭もるに至った理由なのだが、至極単純なことであった。
『全てが嫌になった』のだ。
そもそもは、アロイからの”お許し”が出ないことに始まった。
この二ヶ月程の間、試験のようにして度々ハロルドの体力を測っていたのだが…
「ダメだな…これじゃあ安心してぼっちゃんを連れ出せねぇ。」
アロイに一切の妥協は無かった。
自分の力とシアンの助力を加味して考え、ハロルドの実力に対し冷静に、冷徹に判断を下す。
この樹海から、護衛の対象を生きまま家族の元へと帰す為に。
しかし、アロイの思いなど知らないハロルドは、まるで嫌がらせでも受けているかのように感じていたのだ。
彼の不満は日に日に募る。
そして決定的だったのは、例の悪夢だ。
鍛錬でどんなに疲れた日であろうと、それは容赦なく襲ってくる。
肉体的な疲労。夜な夜な続く悪夢による精神的な疲労。
寝不足も相まって、それらはさらに増幅されて行った。
その不満は、癒しであった食事にさえ…
最初のうちは物珍しさや空腹のおかげで美味い美味いなどと食べていた。
何か良く分からぬ生き物の肉、虫、木の実、稀に食べられる果物。
調理方法といえば焼くか、水で煮ることのみ。道具や材料の限られた樹海では高が知れていた。
ハロルドは、それらに飽き飽きしていたのだ。
このような状況で、食べるモノがあるというだけでも有難いというのに。
元々裕福な家庭で何不自由無く育った彼は、代わり映えのしない食事に贅沢にも飽きていた。
身体を作るためだと虫を無理矢理食べさせられる事にもウンザリしていた。
もう1つの癒しのはずであった朝の日課は、もはや、己の実力の無さを思い知らされるだけのモノに変わって行った――――
そしてある日、ハロルドの中で何かの糸がプツンと切れた。
(もう嫌だ…)
屋敷に帰るとか、母様とか、妹とか、もう全てどうでもいい…と。
なかば自暴自棄だ。
彼は洞穴に引き篭もるようになった。
アロイも初めの内は彼を心配して、何度も声を掛けてきた。
ハロルドはほとんど無視を決め込んでいたのだが、そのうち煩わしくなり
「全てどうでも良くなった。もう私には構うな。」
と言い放ってしまう。
「わかりやした…」
そう言うと、アロイはそれ以降無駄な干渉は一切してこなくなった。
せいぜい食事を運んでくる時ぐらいだ。
シアンは相変わらず素っ気無い態度であった。いや、前以上に無関心になったと言うべきか。
その間も食料の調達はもちろん、アロイと交代での夜の見張りは一日とて欠かすことは無かった。アロイが留守にしている間のハロルドのお守りさえ。
当の彼はそんな二人の様子を見ながら、日に日にボロボロになっていく二人を眺め、
(ざまぁみろ…)
などと思っていた。
それだけが、彼等に八つ当たりすることだけが、今の彼の唯一の愉しみであった――――
◇◇◇◇◇◇
そんな風に、ハロルドが洞穴に引き篭もるようになってどれ程経ったのか。
アロイとシアンは未だに彼と共に居た。
2人が自分を置いて去らないことを、ハロルドは不思議に思っていた。
(僕がやる気を取り戻す事を待ってるんだろうな、自分達の罪を何とかして貰えることを期待してさ…)
馬鹿な奴等だ…などと考えながらも、悪夢から目覚めて彼等が居ることに内心ホッとしていたのだった。
どうやら今日の調達はシアンのようだった。
(せいぜい頑張って集めて来い…)
ハロルドはいつものように心の中で悪態を吐きながら、二度目の眠りに付くのである。
(また悪夢で目覚めるのだろうな…)
静かに目蓋を閉じた――――
◇◇◇◇◇◇
――ぼっ…ゃ…、ぼっちゃん…!
「ぼっちゃんっ!大変だっ!」
ハロルドは悪夢のせいでは無く、アロイの叫び声で飛び起きた。
「な、なんだ…!?何があった!?」
彼の只ならぬ様子に、バケモノでも攻めて来たのかと、ハロルドはうろたえた。
「嬢ちゃんが帰ってこねぇんだよっ!」
アロイは相当に取り乱していたのだが、
あぁ…なんだそんなことか…とハロルドは安堵していた。
「アイツの事なら心配あるまい…どうせまた変なものを拾ってきているのだろう。そのうちひょっこり帰ってくる…」
(久々に悪夢を見ずに済んでいたのに…そんなことで起こすなよ…)
ハロルドは腹を立てていた。
「いくらなんでも遅過ぎる…何かあったに違いねぇ…」
(またコイツの過保護が出たな…)
ハロルドは呆れていた――――
そう、呆れていたのだ。
彼女が帰って来ないまま日が暮れる前までは…
(まさか…あの女、とうとう僕に愛想を尽かして出て行ったのか…?)
今まで散々そのように煽っておいて、ハロルドは恐ろしくなっていた。
いよいよ、一人になる時が近いのだ…と
(あの男もそのうち…僕は、どうすれば…)
とうとうその日、シアンが帰って来ることは終ぞ無かった――――
『全てが嫌になった』のだ。
そもそもは、アロイからの”お許し”が出ないことに始まった。
この二ヶ月程の間、試験のようにして度々ハロルドの体力を測っていたのだが…
「ダメだな…これじゃあ安心してぼっちゃんを連れ出せねぇ。」
アロイに一切の妥協は無かった。
自分の力とシアンの助力を加味して考え、ハロルドの実力に対し冷静に、冷徹に判断を下す。
この樹海から、護衛の対象を生きまま家族の元へと帰す為に。
しかし、アロイの思いなど知らないハロルドは、まるで嫌がらせでも受けているかのように感じていたのだ。
彼の不満は日に日に募る。
そして決定的だったのは、例の悪夢だ。
鍛錬でどんなに疲れた日であろうと、それは容赦なく襲ってくる。
肉体的な疲労。夜な夜な続く悪夢による精神的な疲労。
寝不足も相まって、それらはさらに増幅されて行った。
その不満は、癒しであった食事にさえ…
最初のうちは物珍しさや空腹のおかげで美味い美味いなどと食べていた。
何か良く分からぬ生き物の肉、虫、木の実、稀に食べられる果物。
調理方法といえば焼くか、水で煮ることのみ。道具や材料の限られた樹海では高が知れていた。
ハロルドは、それらに飽き飽きしていたのだ。
このような状況で、食べるモノがあるというだけでも有難いというのに。
元々裕福な家庭で何不自由無く育った彼は、代わり映えのしない食事に贅沢にも飽きていた。
身体を作るためだと虫を無理矢理食べさせられる事にもウンザリしていた。
もう1つの癒しのはずであった朝の日課は、もはや、己の実力の無さを思い知らされるだけのモノに変わって行った――――
そしてある日、ハロルドの中で何かの糸がプツンと切れた。
(もう嫌だ…)
屋敷に帰るとか、母様とか、妹とか、もう全てどうでもいい…と。
なかば自暴自棄だ。
彼は洞穴に引き篭もるようになった。
アロイも初めの内は彼を心配して、何度も声を掛けてきた。
ハロルドはほとんど無視を決め込んでいたのだが、そのうち煩わしくなり
「全てどうでも良くなった。もう私には構うな。」
と言い放ってしまう。
「わかりやした…」
そう言うと、アロイはそれ以降無駄な干渉は一切してこなくなった。
せいぜい食事を運んでくる時ぐらいだ。
シアンは相変わらず素っ気無い態度であった。いや、前以上に無関心になったと言うべきか。
その間も食料の調達はもちろん、アロイと交代での夜の見張りは一日とて欠かすことは無かった。アロイが留守にしている間のハロルドのお守りさえ。
当の彼はそんな二人の様子を見ながら、日に日にボロボロになっていく二人を眺め、
(ざまぁみろ…)
などと思っていた。
それだけが、彼等に八つ当たりすることだけが、今の彼の唯一の愉しみであった――――
◇◇◇◇◇◇
そんな風に、ハロルドが洞穴に引き篭もるようになってどれ程経ったのか。
アロイとシアンは未だに彼と共に居た。
2人が自分を置いて去らないことを、ハロルドは不思議に思っていた。
(僕がやる気を取り戻す事を待ってるんだろうな、自分達の罪を何とかして貰えることを期待してさ…)
馬鹿な奴等だ…などと考えながらも、悪夢から目覚めて彼等が居ることに内心ホッとしていたのだった。
どうやら今日の調達はシアンのようだった。
(せいぜい頑張って集めて来い…)
ハロルドはいつものように心の中で悪態を吐きながら、二度目の眠りに付くのである。
(また悪夢で目覚めるのだろうな…)
静かに目蓋を閉じた――――
◇◇◇◇◇◇
――ぼっ…ゃ…、ぼっちゃん…!
「ぼっちゃんっ!大変だっ!」
ハロルドは悪夢のせいでは無く、アロイの叫び声で飛び起きた。
「な、なんだ…!?何があった!?」
彼の只ならぬ様子に、バケモノでも攻めて来たのかと、ハロルドはうろたえた。
「嬢ちゃんが帰ってこねぇんだよっ!」
アロイは相当に取り乱していたのだが、
あぁ…なんだそんなことか…とハロルドは安堵していた。
「アイツの事なら心配あるまい…どうせまた変なものを拾ってきているのだろう。そのうちひょっこり帰ってくる…」
(久々に悪夢を見ずに済んでいたのに…そんなことで起こすなよ…)
ハロルドは腹を立てていた。
「いくらなんでも遅過ぎる…何かあったに違いねぇ…」
(またコイツの過保護が出たな…)
ハロルドは呆れていた――――
そう、呆れていたのだ。
彼女が帰って来ないまま日が暮れる前までは…
(まさか…あの女、とうとう僕に愛想を尽かして出て行ったのか…?)
今まで散々そのように煽っておいて、ハロルドは恐ろしくなっていた。
いよいよ、一人になる時が近いのだ…と
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