望郷のアルカティア ~異世界漂流記~

スグロタイラ

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第27話 対等な関係に

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「ここを出る前に、ある洞窟へ赴きたい。そこに…とむらってやりたい者達が居るのだ…」
 ある洞窟とは、シアンと初めて出会った場所でもある。
 彼女は何かを察したような表情をしていた。
 それからハロルドは今まで避けていた、恐ろしくて話すことが出来なかった洞窟での体験を、二人に打ち明ける。
 人食いのバケモノの事。ソイツ等に食われてしまった、従者達の事を語った――――

「私一人では無理だ…お前達の手を貸して欲しい。恐らく、そのバケモノ達とは戦う事になる…」

 するとアロイが口を開く。
「こんなことを言うのもアレなんですがね…ぼっちゃんがそこまでしてやる義理はあるんですかい?」
 アロイはあえて厳しいことを言った。
 これから樹海を抜けるという危険を冒すのだ。その前にわざわざ命を掛けてまでやる事なのかと。
 彼の意見はもっともである。すでに死んでしまった者の為に、自らも死にに行くような真似をするなど…
 酷い言い方をするならば、のだ。

「義理なら…ある…」
 ハロルドは先程と打って変わってなんだか、たどたどしい。
「私は…曲がりなりにもあの隊においての代表であった。彼らを取り纏める立場にあったのだ。責任がある。それに彼らとは、その…親しかったのだ。」
 彼はいかにもそれらしい、小奇麗な理由を並べた。
 それは何ともわかり易い、咄嗟の嘘であった。
 弔ってやりたいという気持ちはハロルドにも確かにあるのだ。
 しかし、本当の目的は…
(あの悪夢を終わらせたい)というものだった。

 未だ、あの夢を見る。
 顔の無い者達…人食いのバケモノ…
 毎朝うなされながら目を覚ます。
 このまま、この樹海から去ることも出来る。
 でもそれでは、一生悪夢にさいなまれる事になるのだろう…
(あの者等を弔ってやることが出来れば…あのバケモノ達を殺すことさえ出来れば…)
 ゆるされるのではないだろうか…と。
 それは不確かなものであったが、すがる他無かった。

(僕はこいつ等に、嘘を付いてばかりだな…)
 ハロルドは、急に自分が情けなくなる。
 この期に及んで、まだ体裁を気にしている事に…

「まぁ、ぼっちゃんがそこまで言うんだ。これ以上は何も言わねぇよ。」
「それに、ぼっちゃんを屋敷へ送り届けるまで護るのがオレの仕事だしな。」
 あんな事を言ったが、アロイは初めからそのつもりであった。

 残るはシアンの了承なのだが、
「断る理由もない。付いて行く。」
 意外とあっさり許してくれた。

 それに、と彼女は続ける。
「あの洞窟には良い物が落ちてる。」
 というか、それが主な理由なのだろう。

(もしや…あの時、この女が洞窟に居たのもそれが目的だったのだろうか…?)
 ハロルドは彼女の収集癖を神に感謝した。

「そうと決まったら、色々と準備がいるだろ?忙しくなるぞ。」
 アロイはさっそく張り切っている。洞窟での捜索は彼の冒険者としての経験が役に立つはず。
 それにシアンは夜目が利く。暗い場所では彼女が頼りだ。
 そうして三人で、今後の計画を立てるのであった――――

 ハロルドは心に誓う。
(これが、洞窟での一件が片付いたならば、この二人に正直に話そう…)
 彼らを騙している事…
 伯爵家の力を使って助けてやるなどと言った事。あれは、全て嘘なのだと…
 赦して貰えるかどうかはわからない…わからないけど…
 もうこの二人には、嘘を付きたくない。
 嘘を付いたままなのは嫌だ。

 そして、出来る事なら彼らと…
 腹を割って話せるような、そんな対等な関係になりたい。
 ハロルドは一人静かに、そう心に誓った。
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