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4話
しおりを挟む「あら、しぃちゃん。今日はたっくんと一緒に帰ってこられたのね?」
「うん。そこで一緒になったんだ」
(うううっ出迎えてくれたのが美代子ばあちゃんだったら良かったのに……!)
玄関をくぐると、祥の母親である紗代子が出迎えてくれた。
紗代子は歴とした祥の祖母・美代子の実子で、一ノ宮の人間なのだが、どういうわけか霊力・霊感というものを全く持っていないらしい。その代わりなのか息子の祥は、歴代の除霊師の中でも最も強いと言われる力を持っているらしいのだが、今現在目の前で起こっている異変に全く気付いた様子を見せていない為、拓海は初めてその力を疑い始めていた。
「たっくん具合悪いの?」
「そうみたい。離れで少し様子見てくるよ。除霊を始めるかもしれないから、近づかないようにしてね」
「わかったわ~。たっくん頑張ってね? しぃちゃんも無理しないで」
(祥のやつ、気付いてない振りして実は分かっていたのか……!」
母親に「除霊」と説明する姿を見て、やはり気付いていたのかと安心して息をつく。さっきまで『こいつは本当に歴代最強の除霊師なのか?』なんて疑ってしまって悪かったな……と思いながら、離れに移動する最中、もじもじしつつも自分の腰に回った祥の腕を恍惚とした表情で撫で回す自分の姿を薄目眺めていた。
お願いだからそれ以上醜態を晒さないで欲しい。
(それにしても、相変わらず広い家だよな)
代々除霊を生業として栄えた一ノ宮家は、昔は皇族と呼べるような人たちに仕えていたこともあるそうで、その屋敷は初めて訪れた人が迷ってしまうくらいに広かった。
今向かっている離れは、除霊の仕事を行う際に使用している奥座敷があり、その部屋を祥や美代子が使っている時には屋敷にいる人は一切近寄らない決まりになっている。万が一、除霊中に暴れ出す霊がいたとして、他の人へ被害が出てしまう二次災害を防ぐためだ。
離れに向かう途中で、通いで来ているお手伝いさんなんかに、イチャついているようにしか見えない姿を微笑ましそうに眺められながら、あと少しの辛抱だと羞恥に耐えてようやく奥座敷に入る。
後ろ手に静かに襖を閉めた祥が、自らの身体に絡み付く拓海との間に少しだけ距離を広げた。
「さて、と………」
改まった顔をして拓海の顔を覗き込んだ祥に安心して息を吐く。
(これで、やっと解放される……)
「拓海はどうしてそんなに可愛くなっちゃったのかな? あの子に妬いちゃった?」
( ……… は ? )
「普段あんなに恥ずかしがり屋なのに、人前で拓海からキスされるなんて思わなかった。学校では普通だったと思うけど、矢島になにか言われたとか? そうだったら今度あいつに何か奢らなきゃな」
(い、いやいやいや! 祥さんっ⁈ 歴代最強除霊師の祥さん!! 何を言って……)
「ここにくれば誰にも邪魔されないから。いくら拓海のお誘いとはいえ、なるべく他の奴らには可愛い姿を見せたくないしね」
殴りたいのに殴れない。
そんなもどかしい思いに苦しめられる経験を、高校2年生にして初めてする拓海だった。
もしかしてコイツ。
やはり、全く気付いていないのだろうか?
決して信じたくはないが、うっすらと見えてきた事実に固まる拓海とは裏腹に、その身体は勝手に動き出してしまう。
自身の顔へと添えられた祥の手に頬ずりし、媚びるようにその手のひらへと口付けを繰り返す。
「ん…、しょう………♡」
「なぁに? ふふ、可愛いなぁ~」
二人がその場で腰を下ろすと、拓海の身体はより一層甘える仕草で、目の前にある見た目の印象よりも逞しい身体へと抱き付いていく。
割り開いた両足の間へ入り込み、その身体へと乗り上げながら、まるで子犬かのように相手の唇をぺろぺろと舐める。夢中になって自分に縋り付く拓海を両腕で抱え込みながら、祥は少しずつ、自身の身体を後ろへと倒し、閉じた襖へと寄り掛かるようにして寛いだ。
「もっと、キスしよっか」
僅かに情欲で瞳を濡らしながら、祥は優しく微笑み提案をする。
こくん、と首を縦に揺らし答える拓海の身体は、そのまま口を薄く開くと祥のそれを自ら覆った。
静かな室内に、淫靡な音だけが響く。
少しずつ、その水音を激しくしながら、互いに相手の唇を貪るように奪い合っていった。祥は自ら積極的に舌を動かす拓海の好きなようにさせながら、気まぐれにその舌を甘噛みしたり、吸い付くような仕草を見せ、与えられた快楽に跳ねまわる拓海の身体を殊更楽しそうに撫で回していた。
(ううう、何の苦行なんだ…これは……)
自分の身体が、自分の知らないところで気持ち良さそうに身悶えている。その姿を見ていると、意識だけとなっているはずなのに身体の奥底がむずむずするような、変な気分になってきた。
見ていられなくなって、睦み合う二つの身体から目を逸らしてしまう。
そうして拓海が現実逃避をしているその間にも、互いの口内を思う存分堪能していた二人は、暫くしてから漸くその唇を離す。
「ふぅ……♡ は、ふ……ン♡♡」
長い時間吸い尽くされた拓海の唇は、いやらしいほどにぽってりとして濡れそぼっている。
祥は淫らになった唇を優しく撫でながら、わずかな膨らみを見せる拓海の下肢に視線をやり、悪戯に手を触れた。
「キスだけで気持ち良くなっちゃったね」
「や、ぁん……!」
今までのぬるま湯のような心地よさとは違う、直接的な快感に拓海の身体の力が抜けた。
固い胸板へ身体を預けるようにしながら、先ほど感じた刺激を再び追い求めるように、僅かに震える自身の手で、陰茎を少しずつ擦り始める。
「ほんっと、こんな積極的な拓海なんて初めて見る」
(いい加減おかしいって気付け! バカ祥!!)
うっとりとした顔をして、己の身体に凭れ掛かりながら拙い自慰を始めた拓海の身体をじっくりと視姦する。
顔を真っ赤にさせながら、荒い息を吐き、懸命に自分自身を擦り慰めるその姿は、普段の拓海の快活な印象とかけ離れていて、どこか見てはいけないものを見ているような、淫靡で、背徳的なものに感じられた。
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