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1.出会い
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魔王リュオン率いる魔界と人間界の対立が始まると、一気に争いは激化した。かれこれ対立が始まってから、百年程経つだろうか。きっかけはひとりの人間が魔界に忍び込み、盗みを働いたことだった。ただ、その人間が魔界の物を盗む瞬間を実際に見た者はいなかった。魔界が人間界を攻撃して支配するための口実で嘘かもしれない。
真実は不明だったが、それからふたつの世界のバランスは崩れ、魔王が人間界を直接攻撃し、支配しようとした。これまで、何組ものパーティーが魔王討伐にチャレンジしたが、魔王の力は強大すぎて、どのパーティーも歯が立たず。王は諦めかけ、このパーティーで挑戦して駄目なら、魔王にこの世界を明け渡そうと考えていた。
そうして最後に選ばれたパーティーが、俺、勇者ラレス と戦士ゼロス 、魔法使いエウリュ 、そして僧侶ウェスタ の、二十代の四人である。
「では、頼むぞ。そなたたちが最後の望みだ」
王に希望を託された四人は、希望に応えるべく気合いを入れて、魔王リュオンの城に乗り込み、魔王に戦いを挑んだ。
そして――。
「まさか、我が負けるとは……」
魔王リュオンは俺が振りかざした剣で背中全体を切られ、倒れた。
「わたくしたち、勝ちましたの?」と僧侶ウェスタが疑問を呟くと、戦士ゼロスがしゃがみ魔王を指でつんつんした。魔王はビクともしない。
――これから俺たちはどうすればいいのだろうか。魔王を倒せ!としか命令を受けていなかったような?
「魔王を倒したあとって、どうすればいいんだろうか……誰か聞いたか?」
俺が皆に問うも、首を振る三人。
やっぱり誰も聞いていないのか……。
魔族がかけた特殊な魔法により連絡手段が遮断されていて、魔王城の中から外部へは連絡がとれない。
「ここからじゃ、国に確認とれないよな。とりあえず、連れてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を抱きあげようとした。
「ちょっと待って! 万が一起きてしまっては、再び戦うことになるかも。その時は勝てるか保証もなく……」
僧侶ウェスタの言葉に三人は納得する。
「じゃあ、置いてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を再び床に置いた。うつぶせ状態で地面に置かれる魔王。
「その魔王のありふれた魔力が今後問題になる可能性を秘めているのなら、わたくしが掃除機のように吸いとります」
魔法使いエウリュは、うつぶせ状態の魔王の背中の前に両手をかざす。そして紫色に輝く円を作り、魔力を吸収する魔法「ドレイン」を唱えた。
黒い魔王の魔力だと思われるものがどんどん魔法使いエウリュが作った円の中に吸い込まれていった。魔法使いエウリュは「この魔力の量、すごい、すごいわ」と言いながら魔力を吸い取る作業を続ける。
俺は何も感じず、ただその光景を眺める。
魔法使いエウリュ以外は、魔王の身体の中に魔力が残っているのか見えないが、若干魔王が痩せ細ったのを確認した。
そうして、戦士ゼロスが再び魔王を「重いな」と言いながら担ぐと、王に報告するために城へ向かうことにした。
***
四人は魔王城から出る。魔法使いエウリュがテレポートを唱えると、一瞬で王がいる城の前に着いた。俺は城の扉を両手で勢いよく開けた。いつもは座ったままでいる王が、抱えられた魔王の姿を確認すると駆け寄ってきた。
「な、なんと! そなたたち、そなたたちが魔王を!!」
「あなた、落ち着いて」
いつもクールでイケオジだと庶民の中で噂となっている王が珍しく取り乱し叫ぶと、王女は王を落ち着かせた。
「はい、魔王討伐の任務を遂行致しました」と、俺は王の前でひざまつく。
「とりあえず、倒れた魔王を連れて来たけど、どうする?」
「魔力は吸い取ってありますので、暴走することはないかと……」
戦士ゼロスは魔王を床に置きながら王に問うと、魔法使いエウリュは続けて言う。
「そっか、後は任せなさい」
そう言った王は側近に目配せをする。側近は近衛隊のひとりに指示を出し、魔王は抱えられるとどこかに連れていかれた。
「もう俺らは帰っていいのか?」
「あぁ、長旅ご苦労。ゆっくりと休むがよい。報酬は後に送るとしよう。あと、今、これをやろう」
王は小さな紙をパーティーのメンバーひとりひとりに1枚ずつ配る。
「これは……?」
「これはついこないだ完成したばかりの天然の湯につかれる高級宿のチケットだ。まだ位の高い者しか入ることは出来ん」
高級宿なんて、今までの人生では無縁だったものだ。どんなものなのだろうと、若干興味が湧いた。
「早速行こうか?」と、戦士ゼロスは張り切り外に出ようとした。
「待て!」
王が強めに言うと四人は立ち止まる。
「何でしょうか?」と、俺は王に問う。
「そなた達のお陰で、この国に真の平和が訪れるだろう。そなた達は偉業を成し遂げたのだ。よし、追加でそなたたちに最高の褒美をやろうではないか。欲しい能力を述べよ」
「能力?」
パーティーのメンバーは顔を合わす。
「そうだ。こうなりたいとか、あれが出来たらいいのにとか……なんでも良い。この飴玉に願いを込めよ」
直接王からパーティーメンバーそれぞれに、透明な飴玉が手渡された。
こうなりたい、か。
今までの人生は貧しさで苦労して生きてきたから、正反対の生活を送りたい。ということは――。
立派な建物で暮らし、毎日豪華な食事を。そして好きなことばかりする生活……。
俺の頭の中で鮮明な理想の映像が浮かび上がってくる。
しばらく四人は考え、結論を出した。
俺は裕福な生活を送りたいと盛大な富を願った。戦士ゼロスは岩も碎ける程の強い腕力、魔法使いエウリュは人の心を読める能力、そして僧侶ウェスタは子を上手くあやす力を願った。
それぞれが得たい能力を述べると、それぞれ飴玉に願いを込める。願いを込めた後は、最大限の魔力が込められたガラスケースの中に並べられた。一時間後、その飴玉を飲み込むと願った能力を得られるらしい。
待ち時間に準備された豪華な食事を堪能する。あれやこれや、あっという間に時間は経っていった。飴玉があるガラスのケース前に四人は立つ。
「では、飴玉を手にとり、口にするが良い」
遂に能力を得る時が来た。
期待に胸が高まる。
金が全てを解決する。これからは豪華な人生が待っていると俺は思っていたのに――。
真実は不明だったが、それからふたつの世界のバランスは崩れ、魔王が人間界を直接攻撃し、支配しようとした。これまで、何組ものパーティーが魔王討伐にチャレンジしたが、魔王の力は強大すぎて、どのパーティーも歯が立たず。王は諦めかけ、このパーティーで挑戦して駄目なら、魔王にこの世界を明け渡そうと考えていた。
そうして最後に選ばれたパーティーが、俺、勇者ラレス と戦士ゼロス 、魔法使いエウリュ 、そして僧侶ウェスタ の、二十代の四人である。
「では、頼むぞ。そなたたちが最後の望みだ」
王に希望を託された四人は、希望に応えるべく気合いを入れて、魔王リュオンの城に乗り込み、魔王に戦いを挑んだ。
そして――。
「まさか、我が負けるとは……」
魔王リュオンは俺が振りかざした剣で背中全体を切られ、倒れた。
「わたくしたち、勝ちましたの?」と僧侶ウェスタが疑問を呟くと、戦士ゼロスがしゃがみ魔王を指でつんつんした。魔王はビクともしない。
――これから俺たちはどうすればいいのだろうか。魔王を倒せ!としか命令を受けていなかったような?
「魔王を倒したあとって、どうすればいいんだろうか……誰か聞いたか?」
俺が皆に問うも、首を振る三人。
やっぱり誰も聞いていないのか……。
魔族がかけた特殊な魔法により連絡手段が遮断されていて、魔王城の中から外部へは連絡がとれない。
「ここからじゃ、国に確認とれないよな。とりあえず、連れてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を抱きあげようとした。
「ちょっと待って! 万が一起きてしまっては、再び戦うことになるかも。その時は勝てるか保証もなく……」
僧侶ウェスタの言葉に三人は納得する。
「じゃあ、置いてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を再び床に置いた。うつぶせ状態で地面に置かれる魔王。
「その魔王のありふれた魔力が今後問題になる可能性を秘めているのなら、わたくしが掃除機のように吸いとります」
魔法使いエウリュは、うつぶせ状態の魔王の背中の前に両手をかざす。そして紫色に輝く円を作り、魔力を吸収する魔法「ドレイン」を唱えた。
黒い魔王の魔力だと思われるものがどんどん魔法使いエウリュが作った円の中に吸い込まれていった。魔法使いエウリュは「この魔力の量、すごい、すごいわ」と言いながら魔力を吸い取る作業を続ける。
俺は何も感じず、ただその光景を眺める。
魔法使いエウリュ以外は、魔王の身体の中に魔力が残っているのか見えないが、若干魔王が痩せ細ったのを確認した。
そうして、戦士ゼロスが再び魔王を「重いな」と言いながら担ぐと、王に報告するために城へ向かうことにした。
***
四人は魔王城から出る。魔法使いエウリュがテレポートを唱えると、一瞬で王がいる城の前に着いた。俺は城の扉を両手で勢いよく開けた。いつもは座ったままでいる王が、抱えられた魔王の姿を確認すると駆け寄ってきた。
「な、なんと! そなたたち、そなたたちが魔王を!!」
「あなた、落ち着いて」
いつもクールでイケオジだと庶民の中で噂となっている王が珍しく取り乱し叫ぶと、王女は王を落ち着かせた。
「はい、魔王討伐の任務を遂行致しました」と、俺は王の前でひざまつく。
「とりあえず、倒れた魔王を連れて来たけど、どうする?」
「魔力は吸い取ってありますので、暴走することはないかと……」
戦士ゼロスは魔王を床に置きながら王に問うと、魔法使いエウリュは続けて言う。
「そっか、後は任せなさい」
そう言った王は側近に目配せをする。側近は近衛隊のひとりに指示を出し、魔王は抱えられるとどこかに連れていかれた。
「もう俺らは帰っていいのか?」
「あぁ、長旅ご苦労。ゆっくりと休むがよい。報酬は後に送るとしよう。あと、今、これをやろう」
王は小さな紙をパーティーのメンバーひとりひとりに1枚ずつ配る。
「これは……?」
「これはついこないだ完成したばかりの天然の湯につかれる高級宿のチケットだ。まだ位の高い者しか入ることは出来ん」
高級宿なんて、今までの人生では無縁だったものだ。どんなものなのだろうと、若干興味が湧いた。
「早速行こうか?」と、戦士ゼロスは張り切り外に出ようとした。
「待て!」
王が強めに言うと四人は立ち止まる。
「何でしょうか?」と、俺は王に問う。
「そなた達のお陰で、この国に真の平和が訪れるだろう。そなた達は偉業を成し遂げたのだ。よし、追加でそなたたちに最高の褒美をやろうではないか。欲しい能力を述べよ」
「能力?」
パーティーのメンバーは顔を合わす。
「そうだ。こうなりたいとか、あれが出来たらいいのにとか……なんでも良い。この飴玉に願いを込めよ」
直接王からパーティーメンバーそれぞれに、透明な飴玉が手渡された。
こうなりたい、か。
今までの人生は貧しさで苦労して生きてきたから、正反対の生活を送りたい。ということは――。
立派な建物で暮らし、毎日豪華な食事を。そして好きなことばかりする生活……。
俺の頭の中で鮮明な理想の映像が浮かび上がってくる。
しばらく四人は考え、結論を出した。
俺は裕福な生活を送りたいと盛大な富を願った。戦士ゼロスは岩も碎ける程の強い腕力、魔法使いエウリュは人の心を読める能力、そして僧侶ウェスタは子を上手くあやす力を願った。
それぞれが得たい能力を述べると、それぞれ飴玉に願いを込める。願いを込めた後は、最大限の魔力が込められたガラスケースの中に並べられた。一時間後、その飴玉を飲み込むと願った能力を得られるらしい。
待ち時間に準備された豪華な食事を堪能する。あれやこれや、あっという間に時間は経っていった。飴玉があるガラスのケース前に四人は立つ。
「では、飴玉を手にとり、口にするが良い」
遂に能力を得る時が来た。
期待に胸が高まる。
金が全てを解決する。これからは豪華な人生が待っていると俺は思っていたのに――。
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