【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

立坂雪花

文字の大きさ
1 / 14
*仲直り編

**由希視点

しおりを挟む
 雲ひとつない青空と眩しい光を放つ太陽。
 今日は朝から天気が良くて、暖かい。

 家の玄関の隅には、実のなる気配がまだないミニトマトのポット苗が置いてある。それを持つと外に出た。ちょうど制服姿の律くんの、凛とした後ろ姿が見えた。背中を見つめていたら律くんが振り向く。一瞬だけ目が合った。

 唯一繋がれる言葉、「おはよう」が今日は言えなかったな――。

 僕たちは今年、高校一年生になった。

 九月九日に生まれた僕、綿谷 由希(わたや ゆき)と十月十日に生まれた光田 律(ひかりだ りつ)くん。生まれた日はふたりともゾロ目で一ヶ月違い。

律くんはきっと僕の誕生日を忘れていて、全く興味はないんだろうな。

「もう僕たちは仲良くなれないのかな……」と、ミニトマトに向かって呟く。

 アパート前の、日当たりが良い場所にミニトマトを置くと「元気に育ってね」と話しかけながら水をあげた。苗は返事をするように、明るい春の風に合わせて揺れた。しばらくトマトを眺めてから立ち上がる。

――さて、僕も学校に行こう。

 小さな頃から僕たちはアパートの隣同士に住んでいて、近くにいる。そして高校一年生になると、同じクラスにもなった。

 ふたりが離れることになってしまった原因は、僕だ。僕が「嫌い」と言ってしまったから。あの時の律くんの表情を思い出すたびに涙がこぼれそうになる。ずっと後悔している。仲が良かったあの頃に戻りたい。


 今はもう、太陽と影みたいに遠くて決して触れることのできない、僕たちふたりの距離――。
 
☆。.:*・゜
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

きみに会いたい、午前二時。

なつか
BL
「――もう一緒の電車に乗れないじゃん」 高校卒業を控えた智也は、これまでと同じように部活の後輩・晃成と毎朝同じ電車で登校する日々を過ごしていた。 しかし、卒業が近づくにつれ、“当たり前”だった晃成との時間に終わりが来ることを意識して眠れなくなってしまう。 この気持ちに気づいたら、今までの関係が壊れてしまうかもしれない――。 逃げるように学校に行かなくなった智也に、ある日の深夜、智也から電話がかかってくる。 眠れない冬の夜。会いたい気持ちがあふれ出す――。 まっすぐな後輩×臆病な先輩の青春ピュアBL。 ☆8話完結の短編になります。

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

先輩アイドルは僕の制服を脱がせ、次のステージへと誘う〈TOMARIGIシリーズ ツバサ×蒼真 #2〉

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ★ツバサ×蒼真 ​ツバサは大学進学とデビュー準備のため、実家を出て東京で一人暮らしを始めることに。 高校の卒業式が終わると、トップアイドルの蒼真が、満開の桜の下に颯爽と現れた。 ​蒼真はツバサの母に「俺が必ずアイドルとして輝かせます」と力強く宣言すると、ツバサを連れて都内へと車を走らせた。 ​新居は蒼真と同じマンションだった。ワンルームの部屋に到着すると、蒼真はツバサを強く抱きしめた。「最後の制服は、俺の手で脱がせたい」と熱く語る。 ​高校卒業と大学進学。「次のステージ」に立つための新生活。これは、二人の恋の続きであり、ツバサの夢の始まり……

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

欠けるほど、光る

七賀ごふん
BL
【俺が知らない四年間は、どれほど長かったんだろう。】 一途な年下×雨が怖い青年

白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい

兎束作哉
BL
――これは幼馴染ニコイチが、幼馴染から一歩進んで恋人になるまでの物語。 白雪凛は188cmの高身長の高校2年生。しかし、授業の終わりには眠ってしまう生粋の居眠り魔であり、名前も相まって“白雪姫くん”や“凛ちゃん”と弄られる。 そんな凛を起こしてくれるのは、白馬燈司という155㎝の低身長の幼馴染男子。燈司は、低身長ながらも紳士的で名前を弄って”おうじくん“と呼ばれる文武両道の優等生。 いつも通りの光景、かわいい幼馴染の声によって起こされる凛は、当たり前の日常に満足していた。 二人はクラス内で、“白雪姫カップル“と呼ばれるニコイチな関係。 また、凛は、燈司を一番知っているのは自分だと自負していた。 だが、ある日、いつものように授業終わりに起こされた凛は、燈司の言葉に耳を疑うことになる。 「俺、恋人ができたんだ」 そう告白した燈司に凛は唖然。 いつもの光景、秘密もないニコイチの関係、よく知っているはずの幼馴染に恋人が!?  動揺する凛に追い打ちをかけるよう、燈司は「恋人とのデートを成功させたいから、デート練習の相手になってほしい」と頼み込んできて……? 【攻め】白雪凛×白馬燈司【受け】 鈍感高身長攻め(平凡)×王子さま系低身長受け(美形) ※毎日12:00更新です ※現代青春BLです ※視点は攻めです

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

処理中です...