当て馬な俺が幸せになる方法

結人

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離れられない

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旬が出かけようと誘ってくれた場所は寮の近くにある別邸だった。
時々遊びに来る家だが特別何かがある建物でもない。

ソファで過ごしていると誰かが来たようで旬が迎えに出た。
旬と一緒に部屋に入ってきた人物を見て僕の心臓は早鐘のように鳴り響く

「なんで…圭くんがここにいるの?」
「佐野先輩お久しぶりです。元気でしたか?」

旬の方を見るとコチラを黙ってみたまま何も言ってこない。どういうつもりで彼をここにつれてきたのか
もしかして…彼との関係を疑われてる?
僕のせいで彼に何かあったら…そんな不安がよぎる。

「旬!違うんだ!ホントに彼とは何もないの!!お願い!何もしないで!もう勝手なことしないから!」
「理央。違うよ。彼が君に会いたいって言ったから連れてきただけだ。俺は何もしてない」

旬の冷たい声…

「なんで…来たの?もう会わないよ…メッセージも無視してたでしょ?」
「先輩が心配で来ました。先輩…今、幸せですか?」
「幸せだよ…。コレ以上無いくらい…」

ウソ…幸せなのかよくわからない。
この1週間誰にも会わず過ごしてると自分が世界から弾き出された気分になった。
旬の帰りを待つだけの日々。
高校卒業した僕に待ってる日常だ…。

「今なら俺は全てをかけてあなたを助けます。俺の手を取ってください」

圭くんは僕の目の前に手を伸ばしてくる。
すぐに拒否しなきゃいけないのに…
手を伸ばしちゃいけないのに…

目の前の手から目が離せない。

この手を取ったら旬はどうなるの?
旬と離れ離れになるってこと?
俺はどうすることが正解なの?
今まで自分で何かを選択してきたことがないからどうしたらいいのか分からないんだ。何が正解なのか…

自分で選ぶのが怖い…。

「分からないんだ…旬から離れられないのはホントなんだ。旬がいない人生なんて考えられない…。…でもこうやって誰にも会わずに旬だけ見て過ごすにはたくさんの人に出会って楽しさを知ってしまったから…もうムリなの…耐えられないんだ…」

旬の方を見る。
今までこんな事、旬に伝えてこなかった。
どんな人生でも受け入れるつもりだった。

でも…


「旬…僕これからも皆と会いたい。卒業してからもたくさんの人との関わって生きていきたい…」

「…中野先輩。俺からもお願いします。佐野先輩を世の中から隔離しないでください」

「理央…、その願いを叶えたらずっと側にいてくれるのか?」

旬の悲しそうな顔…
旬にこんな顔をさせてしまってるのは僕なのか…

「もちろん!僕は旬と離れたいわけじゃない!」

「…家の慣例を破ることになるから。根回しは必要になるかな」
「…いいの?」
「良いも悪いも…俺は理央のお願いに弱いんだ。もちろん閉じ込めておけるなら誰にも会うことなく家の中にいてて欲しい。でも理央が求めるものはなんだって叶えたい。この気持ちにもウソはない。ただ…理性が持つかって話になってくるんだよ。今回みたいに他のアルファのマーキングが理央に付いてるなんて腸が煮えくり返ったしどうやって消してやろうかと本気で考えたよ」

「それはホントにすいません。佐野先輩の婚約者がここまでアルファ性の強い方だとは思わなくて…軽い牽制のつもりでした」


話が終わった後、圭くんは帰っていった。


「理央…理央の思いはわかった。でも俺は自分では抑えられないくらいに理央に執着している自覚があるんだ。これからも理央にその思いをぶつけてしまうことがあるかもしれない…。お願いだから居なくならないでくれ…。俺から逃げないで。理央無しでは生きられない」

ソファに並んで座ると痛いほど抱きしめてくる。

「僕も旬なしでは生きられないよ。ずっと一緒にいたんだから…これからも旬の隣には僕を置いてほしい」

僕からも抱きしめ返すと首筋にキスをした。







※※※※※※※※※

いつも読んでいただきありがとうございます。
中野くんと佐野くんの回でした。
圭くんの当て馬感が…
誰か救済してあげてください(笑)
次は伊藤くんと清水くんの話です。
ギリギリで新しい話を書いてるのでこれからも不定期になると思います。なるべく毎日更新したいですが…
予定は未定。
よろしくお願いします。
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