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3章
42-2. 幼馴染みは見ていた ギルバート
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俺もあの日、竜が空を飛ぶのを見た。
最初は気がつかなかったけれど、竜は川の辺りに急降下してきたので、その威容をはっきりと見ることができた。
竜だった。行商人が見せてくれた紙芝居に描かれていたままの竜だった。
竜を見たのは、俺だけではなかった。竜の羽ばたきは台風のように木々を打ち据えて騒々しい物音を立てたので、ほとんどの村人が竜を見た。だから、村は蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「竜なんて、どうして!?」
「いや、本当にあれは竜なのか!?」
「この村を襲うんじゃないわよね!?」
「怖い! なんとかして!」
「そっ、そうだ。ゴブリンだ! ゴブリンたちがいる!」
「おお! ゴブリンに見に行ってもらおう! いや、もう行っているはずだ!」
……一頻り大騒ぎした後は、ゴブリンたちが報告しに来てくれるだろうから、それを待とう。逆に急な報告がないということは、安心していていいということだから落ち着こう――ということで話がまとまった。
でも、ゴブリンたちがやって来ないまま三日が過ぎると、みんなもさすがに落ち着いていられなかった。
「なんの報告がないというのは、どういうことなんだ?」
「あっ、そういえば……竜が急降下したのって、ゴブリンたちの住処があるあたりじゃないか?」
「えっ、じゃあもしかして、ゴブリンたちはあれで全滅している……!?」
「それなら報告に来られないのも当然だ……!」
「ま、待て。そうとはかぎらないぞ」
「確かめないと!」
……ということで、誰かがゴブリンたちの住処まで行ってみることに決まった。その誰かに指名されたのが俺だった。まあ、納得の人選だ。
「納得だけど、貧乏くじだよな……くそっ」
村の連中どいつもこいつも、ゴブリンのことは俺に投げればいいと思っていやがる。
こんなに扱き使われているんだから、少しくらい役得があってもいいよな? ということで、あいつらの無事を確かめたら、村に報告しに来なかったことに難癖をつけて、肉の一番美味いところを食わせてもらう。それで帰りが遅くなったって構うものか。
ゴブリンたちが全滅している――なんてことは、俺は全然心配していなかった。
あの竜は、ゴブリンたちの塒ではなく渓谷に飛来した。そして、すぐに飛び去っていった。竜は火を吹くと言うけれど、そんな様子もなかったから、あの短時間で少し離れたところにいたはずのゴブリンたちをどうにかできたとは思えない。かりに犠牲が出たとしても、たまたま水場にいた一人か二人というところだろう。
「……犠牲が出てたら、あいつらどうなるんだ?」
俺が心配しているのは、そこだった。
これまでの山賊討伐で、ゴブリンたちに死人は一人も出ていない。そこそこ強い山賊と激しい斬り合いになって傷を負った奴はいたけれど、後に残るような怪我をした奴もいなかった。
他のゴブリンもそうだとは思わないけれど、少なくともあいつらは仲間が死んだら泣いたり怒ったりしそうだ。仲間を殺した相手が竜だったとしても、やり返すことを考えたりしそうな気がする……。
「それで竜を追いかけて、返り討ちに遭ってたりは……いや、それはないか」
もし戦いになっていたら、竜があの巨体で暴れることで多少なりとも森が騒がしくなるはずだ。でも、森にそんな異変は起きていない。竜が渓谷から飛び去って以降、森は普段の静けさを保っている。
となると、今まさに竜のところへ殴り込みに行く準備をしているのかもしれない。それが忙しくて、俺たちに連絡するってことを忘れているのかもしれない。
――まあ、もうじき分かることだ。
俺は何度も踏み分けられて獣道と呼ぶにははっきりしすぎるようになった道筋を、早足で進んだ。
そして、ゴブリンたちが塒に居ている洞窟の前まで来た俺が見たのは……沢山のご馳走が並ぶ中で、食ったり犯ったりしているゴブリンたちだった。
「ああ――」
連絡が来なかったのは、乱交で忙しかったからか――。
ものすごく腑に落ちる理由だった。
最初は気がつかなかったけれど、竜は川の辺りに急降下してきたので、その威容をはっきりと見ることができた。
竜だった。行商人が見せてくれた紙芝居に描かれていたままの竜だった。
竜を見たのは、俺だけではなかった。竜の羽ばたきは台風のように木々を打ち据えて騒々しい物音を立てたので、ほとんどの村人が竜を見た。だから、村は蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「竜なんて、どうして!?」
「いや、本当にあれは竜なのか!?」
「この村を襲うんじゃないわよね!?」
「怖い! なんとかして!」
「そっ、そうだ。ゴブリンだ! ゴブリンたちがいる!」
「おお! ゴブリンに見に行ってもらおう! いや、もう行っているはずだ!」
……一頻り大騒ぎした後は、ゴブリンたちが報告しに来てくれるだろうから、それを待とう。逆に急な報告がないということは、安心していていいということだから落ち着こう――ということで話がまとまった。
でも、ゴブリンたちがやって来ないまま三日が過ぎると、みんなもさすがに落ち着いていられなかった。
「なんの報告がないというのは、どういうことなんだ?」
「あっ、そういえば……竜が急降下したのって、ゴブリンたちの住処があるあたりじゃないか?」
「えっ、じゃあもしかして、ゴブリンたちはあれで全滅している……!?」
「それなら報告に来られないのも当然だ……!」
「ま、待て。そうとはかぎらないぞ」
「確かめないと!」
……ということで、誰かがゴブリンたちの住処まで行ってみることに決まった。その誰かに指名されたのが俺だった。まあ、納得の人選だ。
「納得だけど、貧乏くじだよな……くそっ」
村の連中どいつもこいつも、ゴブリンのことは俺に投げればいいと思っていやがる。
こんなに扱き使われているんだから、少しくらい役得があってもいいよな? ということで、あいつらの無事を確かめたら、村に報告しに来なかったことに難癖をつけて、肉の一番美味いところを食わせてもらう。それで帰りが遅くなったって構うものか。
ゴブリンたちが全滅している――なんてことは、俺は全然心配していなかった。
あの竜は、ゴブリンたちの塒ではなく渓谷に飛来した。そして、すぐに飛び去っていった。竜は火を吹くと言うけれど、そんな様子もなかったから、あの短時間で少し離れたところにいたはずのゴブリンたちをどうにかできたとは思えない。かりに犠牲が出たとしても、たまたま水場にいた一人か二人というところだろう。
「……犠牲が出てたら、あいつらどうなるんだ?」
俺が心配しているのは、そこだった。
これまでの山賊討伐で、ゴブリンたちに死人は一人も出ていない。そこそこ強い山賊と激しい斬り合いになって傷を負った奴はいたけれど、後に残るような怪我をした奴もいなかった。
他のゴブリンもそうだとは思わないけれど、少なくともあいつらは仲間が死んだら泣いたり怒ったりしそうだ。仲間を殺した相手が竜だったとしても、やり返すことを考えたりしそうな気がする……。
「それで竜を追いかけて、返り討ちに遭ってたりは……いや、それはないか」
もし戦いになっていたら、竜があの巨体で暴れることで多少なりとも森が騒がしくなるはずだ。でも、森にそんな異変は起きていない。竜が渓谷から飛び去って以降、森は普段の静けさを保っている。
となると、今まさに竜のところへ殴り込みに行く準備をしているのかもしれない。それが忙しくて、俺たちに連絡するってことを忘れているのかもしれない。
――まあ、もうじき分かることだ。
俺は何度も踏み分けられて獣道と呼ぶにははっきりしすぎるようになった道筋を、早足で進んだ。
そして、ゴブリンたちが塒に居ている洞窟の前まで来た俺が見たのは……沢山のご馳走が並ぶ中で、食ったり犯ったりしているゴブリンたちだった。
「ああ――」
連絡が来なかったのは、乱交で忙しかったからか――。
ものすごく腑に落ちる理由だった。
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