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5章
71-1. 晩夏の日々 ラヴィニエ ★
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我が故郷であり、いま私たちが生活しているこの丘陵地帯を北西に擁したアルゴーネ侯爵領。そのアルゴーネ領は、ファルケン王国の西端に位置する領地だ。
私はアルゴーネ侯爵に代々仕える、アーメイ騎士爵家の一員だ。アーメイ家はまた、家系に受け継がれる特異な魔術【巫術】を継承する【巫覡】の家系でもあり、私も【過去視】の巫術を身に宿している。
巫術というのは血筋に宿るものであり、個人に宿るものではない。すなわち、真の意味で巫覡と呼べるのは、ひとつの血筋において当主ただ一人であり、その他の血族は“当主が巫術の使用を許可するから”使えるだけなのだ。
だから、本来であれば、家門から逐電した私への使用許可は取り上げられているべきだ。許可の付与や取り消しは、相手がどれだけ離れた場所にいようとも――むしろ相手がどこにいるのか分からなくとも可能なのだから。
なのに、アーメイ家当主は――父上は、未だに私から巫術を取り上げていない。
父上は昔から身内に対して甘いところはあった。けれども、それと同じくらい、騎士の誉れを大事にしていた。
そも、我がアーメイ家はそこらの平民が金満貴族から軍役の義務――すなわち“騎士を名乗る権利”を下請けすることで名目的に爵位を買い与えられた紛い物の騎士爵家とは違って、騎士爵の位を代々受け継いできた由緒正しき家門だ。
巫覡の家系ということもあって、爵位としては最下級の騎士爵でありながらも、主家たるアルゴーネ公爵家とは古くから誼が深く、【過去視】という秘密を穿り出すのが身上の巫覡家系であるが故に忌避の目を向けられることもあったが、領内での地位は総じて安泰と言って良かっただろう。
そこにけちを付けてしまったのが私だ。
私は領主様の嫡男エミリオ様を裏切る形で逃げ出した。いちおうは、“竜に手を出そうとしたエミリオ様に考え直してもらうために、竜に威嚇行為をしてもらうよう頼みに来た”という理由はある――あった。
だけど、その理由が果たされた今もなお、私はこの地に留まっている。
一方的な頼みをしに来たのだから、二度と帰ることは諦めて、ここで一生奉公するのが筋だ――と決め込んでいたから、最初の頃はとくに考えなかったのだけど、最近はもう気づいてしまっている。
巫女様も従者様も、私が「家に帰りたい」と言ったら、べつに止めたりせずに送り出してくれるだろう。あの二人は、少しも私を縛らない。私を尊重してくれている。ゴブリンや村娘たちもそうだ。
だから、私がここに留まっているのは誰のせいでもなく、私自身の意思だ。ここに留まることが騎士として正しい行いだからだ、なんてことも思ってはいない。ただ、ここにいたいから、いるのだ。
「……私は既に騎士ではない。誇り高きアーメイ騎士爵家の女でもない。ただのラヴィニエだ。ただの……んぉっ♥ ただのぉッ♥ 牝犬ううぅッ♥♥」
――ごめんなさい、父上、母上、兄上。私はもう、皆の下へは帰れません。意固地なまでに騎士で在ろうとした娘は、もういないのです。残されたのは、虚飾を剥がれ、心を奪われて、ただこの身ひとつだけとなった女だけ――いえ、牝犬だけ♥
あぁ、ごめんなさい♥ わんわんっ♥ 私はもう、お家に帰るよりも、ここでゴブリンち○ぽずっとくんくん♥すりすり♥してるだけのほうが良いんだわん♥ わんわんって犬語で話したら可愛いからゴブさんたちも可愛がってくれますよ、って巫女様が言うからやってみたら、本当にみんなでお顔にち○ぽいっぱいゴシゴシ♥ズリズリ♥って可愛がってくれたわん♥ わんわん最高♥ わんわん素敵♥ わんわんっ、わんわんっ♥ わっわっわおおぉーんッ♥♥
……牝犬ごっこは最高だけど、終わった後で好奇心に負けて【過去視】で牝犬ごっこ満喫中の自分を視てしまうと、意味なく叫びながらのたうち回ってしまうくらい恥ずかしくて最低な気分になる。
なら視なければいいのに、と思われるかもしれない。だけど、父上が私に未だ【過去視】の巫術を残している理由を慮れば、察することはできた。こうすることが私に与えられた罰なのだ、と。
アルゴーネの騎士であることを捨て、アーメイの名を汚しただけでも飽き足らず、果ては人間であることさえ忘れようとするなど、浅ましいにも程がある。そんな我が身の浅ましさをその都度、己が目で見つめ直すがいい――父上はきっとそう仰っているのだ。
だから、私が牝犬ごっこの後にその光景を【過去視】で反芻するのは自戒と自省のためであって、けして他意はないのだ。けして、牝犬わんわんしている自分の無様な姿を見ると死にたくなるほど恥ずかしくなるのに、なぜか不思議と胸が高鳴り、腹の奥が熱くなって、そうしながら股間を弄ると病みつきになるくらい気持ちいいからではないのだ。
ないのだったら、ないのだわん。
私はアルゴーネ侯爵に代々仕える、アーメイ騎士爵家の一員だ。アーメイ家はまた、家系に受け継がれる特異な魔術【巫術】を継承する【巫覡】の家系でもあり、私も【過去視】の巫術を身に宿している。
巫術というのは血筋に宿るものであり、個人に宿るものではない。すなわち、真の意味で巫覡と呼べるのは、ひとつの血筋において当主ただ一人であり、その他の血族は“当主が巫術の使用を許可するから”使えるだけなのだ。
だから、本来であれば、家門から逐電した私への使用許可は取り上げられているべきだ。許可の付与や取り消しは、相手がどれだけ離れた場所にいようとも――むしろ相手がどこにいるのか分からなくとも可能なのだから。
なのに、アーメイ家当主は――父上は、未だに私から巫術を取り上げていない。
父上は昔から身内に対して甘いところはあった。けれども、それと同じくらい、騎士の誉れを大事にしていた。
そも、我がアーメイ家はそこらの平民が金満貴族から軍役の義務――すなわち“騎士を名乗る権利”を下請けすることで名目的に爵位を買い与えられた紛い物の騎士爵家とは違って、騎士爵の位を代々受け継いできた由緒正しき家門だ。
巫覡の家系ということもあって、爵位としては最下級の騎士爵でありながらも、主家たるアルゴーネ公爵家とは古くから誼が深く、【過去視】という秘密を穿り出すのが身上の巫覡家系であるが故に忌避の目を向けられることもあったが、領内での地位は総じて安泰と言って良かっただろう。
そこにけちを付けてしまったのが私だ。
私は領主様の嫡男エミリオ様を裏切る形で逃げ出した。いちおうは、“竜に手を出そうとしたエミリオ様に考え直してもらうために、竜に威嚇行為をしてもらうよう頼みに来た”という理由はある――あった。
だけど、その理由が果たされた今もなお、私はこの地に留まっている。
一方的な頼みをしに来たのだから、二度と帰ることは諦めて、ここで一生奉公するのが筋だ――と決め込んでいたから、最初の頃はとくに考えなかったのだけど、最近はもう気づいてしまっている。
巫女様も従者様も、私が「家に帰りたい」と言ったら、べつに止めたりせずに送り出してくれるだろう。あの二人は、少しも私を縛らない。私を尊重してくれている。ゴブリンや村娘たちもそうだ。
だから、私がここに留まっているのは誰のせいでもなく、私自身の意思だ。ここに留まることが騎士として正しい行いだからだ、なんてことも思ってはいない。ただ、ここにいたいから、いるのだ。
「……私は既に騎士ではない。誇り高きアーメイ騎士爵家の女でもない。ただのラヴィニエだ。ただの……んぉっ♥ ただのぉッ♥ 牝犬ううぅッ♥♥」
――ごめんなさい、父上、母上、兄上。私はもう、皆の下へは帰れません。意固地なまでに騎士で在ろうとした娘は、もういないのです。残されたのは、虚飾を剥がれ、心を奪われて、ただこの身ひとつだけとなった女だけ――いえ、牝犬だけ♥
あぁ、ごめんなさい♥ わんわんっ♥ 私はもう、お家に帰るよりも、ここでゴブリンち○ぽずっとくんくん♥すりすり♥してるだけのほうが良いんだわん♥ わんわんって犬語で話したら可愛いからゴブさんたちも可愛がってくれますよ、って巫女様が言うからやってみたら、本当にみんなでお顔にち○ぽいっぱいゴシゴシ♥ズリズリ♥って可愛がってくれたわん♥ わんわん最高♥ わんわん素敵♥ わんわんっ、わんわんっ♥ わっわっわおおぉーんッ♥♥
……牝犬ごっこは最高だけど、終わった後で好奇心に負けて【過去視】で牝犬ごっこ満喫中の自分を視てしまうと、意味なく叫びながらのたうち回ってしまうくらい恥ずかしくて最低な気分になる。
なら視なければいいのに、と思われるかもしれない。だけど、父上が私に未だ【過去視】の巫術を残している理由を慮れば、察することはできた。こうすることが私に与えられた罰なのだ、と。
アルゴーネの騎士であることを捨て、アーメイの名を汚しただけでも飽き足らず、果ては人間であることさえ忘れようとするなど、浅ましいにも程がある。そんな我が身の浅ましさをその都度、己が目で見つめ直すがいい――父上はきっとそう仰っているのだ。
だから、私が牝犬ごっこの後にその光景を【過去視】で反芻するのは自戒と自省のためであって、けして他意はないのだ。けして、牝犬わんわんしている自分の無様な姿を見ると死にたくなるほど恥ずかしくなるのに、なぜか不思議と胸が高鳴り、腹の奥が熱くなって、そうしながら股間を弄ると病みつきになるくらい気持ちいいからではないのだ。
ないのだったら、ないのだわん。
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