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聖女ですわ!! 1-6
しおりを挟む護衛の二人と聖騎士、聖女の旅は順調そのものだった。
そもそも聖女は光属性持ちなので魔獣は近寄ってこないし、盗賊に襲われても聖女が魔法を使うまでもなく聖女の肩に陣取る神様がぺかぁっとするので、盗賊はその場で改心して聖女を守る兵士として生まれ変わるので護衛の仕事が全くない。
「俺らのポジション、護衛というより道案内……」
「しかも目が綺麗になった盗賊が馬を貸してくれたから目的地ついたっす」
順調にいかないのは王子の率いる兵団だ。
心を入れ替え、イネス神に信仰を捧げた盗賊により進路を妨害され、一番近くの村にさえ近付けないでいた。
森に入り、獣道を進もうとすると異常なほど強い魔物に襲われ撤退を余儀なくされる。
そうして足止めをされている間に視察に出ていた国王が帰還、聖女を一方的に追放した王子に雷が物理的に落ち、聖女探索の命令も撤回された。
やらかした王子の尻拭いのため、王は王子をとりあえず塔に幽閉、王子にへばりついていた女生徒と王子の側近を牢にぶち込むと宝物庫に走り国宝の一つを持ち出すと宰相とともに教会に走りこんだ。
教会を守る司祭を見るやジャンピング土下座をする姿を訪れていた多くの民が目撃した。
国王としての威厳もなにもあったものではない、ここで対応を間違えれば自分の命どころか国がなくなるのは間違いないのだ。
教会に到着した王はまず真っ先に司祭に謝罪と聖女を保護してもらった礼を深く述べ、次いで王子と女生徒、王子の側近らを隔離した旨を報告した。
司祭はにこにことしながら話を聞いていたが、内心は対応を間違えなかった国王に少しホッとしていた。
彼もこの国をそれなりに気に入っているのだ。
しかし問題はここからである。
神の怒りを買わずに済んだものの、次に待つのは人間同士のあれこれ。
聖女は隣国の歴史ある公爵家の人間、家族大好き一家なのは有名で、家族を傷付ける相手に対する苛烈さは有名だった。
そんな聖女が国外追放を命じられ、不当に拘束されて地面に転がされた。正直、この時点で戦争になっても不思議はなかった。
現時点で戦争になっていないのは全て教会の采配のおかげだった。
だがこの話が伝われば怒り狂った聖女の家族が、この国を滅ぼしに来るかもしれない。
そうなる前になんとかせねばならない。
しかし下手に刺激をしてはなにもかもが終わる。
どうしたものかと考えあぐねていると、神の加護を受けた聖女が教会に現れた。
「ご安心を!私が王家に嫁げば全て解決ですわ!!」
聖女はいつも通り、おーほほっと笑いながら自信満々で言い放った。
後ろに控えるのは疲れ切った表情の冒険者と、綺麗な目をした元盗賊団。
なお、聖騎士は教会の敷地に入った時点で胃痛が限界で離脱し、仲間と仕事を交代している。
そして、聖女の言葉を聞いた王は――
「お好きな王子をお選びください」
地面にめり込む勢いで頭を下げ、王子達の未来を聖女の前に差し出した。
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