ポイント稼ぎ 小話

ゆめ

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アー君の学生時代

 小さな小屋から始まった学問所、主の希望を取り入れ、年々学ぶ子供と規模を広げ、今や世界最大規模の学園に成長した。
 学園にかかる費用は国民に限り国が負担するので全て無料。

 毎月招かれる講師は教会の大司教をはじめ、騎士団隊長、高ランク冒険者、たまに神様が混じっており、真面目な講義から命懸けの講義まで色々あり、中でも人気なのは魔王による魔物の仕組み講座、時節による魔物の変動や弱点、属性などが語られるので刀国に住む子供なら誰でも真剣に授業に耳を傾ける。
 なぜならこの講座の情報、冒険者がいい値段で買ってくれるのだ。

 他国の留学生を受け入れるようになって数年、数多の行方不明者や退学者を出しながらも学生は今日も元気に学園に通っている。

 伝統ある校舎を進む獅子の獣人。
 歩く姿はまるで王かのように威厳に満ちているが、背丈はまだまだ少年の域を脱しておらず、顔もよく見れば幼さが残っている。

「アルジュナ!」

 良く手入れされた純白の毛並みを持つ獣人が中等部にある自分の教室に足を踏み入れると、名前を呼びながら涙目のクラスメイトが駆け寄ってきた。
 学園に入学し、一番最初に出来た友人。
 悪い奴ではないのだが、性癖に少々問題があるのが玉に瑕だった。

「課題やった? 写させてくださいアルジュナ様!!」
「俺も俺も」
「我も我も」
「学食奢るから!」
「最初から無料だよな」
「縛っていいわよん」
「断る」

 下心満載でわらわらと寄ってくるクラスメイト、苦笑いしつつノートを渡せばお礼を言いながら必死になって写し始めた。
 ここはAクラス、課題の量が毎度そこそこある上に難問も多いのに、遊びにバイトに忙しい彼らは課題は二の次にしがちである。

 とにかくこの学園に通う民は逞しい、学園の方針が身分の貴賤なく学ぶというのもあるが、それ以上に身分なんて気にしていたら課題が終わらない、課題の前に身分なんて些細な問題だと必死だ。
 課題が提出出来なければ孤児だろうが王太子だろうが関係なく、楽しい楽しい地獄の補習が待っている。

「サンキュー、助かったわぁ」
「アルジュナ様素敵!」
「いつもありがとうございます!」
「よっ、大将!」
「たまには自分でやろうとは思わないのか?」

 呆れつついつもと同じ問いをすれば、「バイトが忙しくて」と声を揃えて答えた。

「ほらもうじきダンジョン攻略始まるだろ、最低限の防具揃えたくってさ~」
「俺もー」
「ロマンだよなぁ」
「俺、鰻の串焼き買うんだ」
「鮎の塩焼き捨てがたい」
「ネヴォラ君に罵られたい」

 一人変態が混じっているようだが、今日もおおむね平和な始まりである。

 授業を受け、午前中が終われば一時間の昼休み、学園の広さと学生の多さに対し、短いような気もする昼休みだが開校以来、一時間の長さが変わったことはない。
 一日限定十食のランチのため、身体強化を習得してまで食堂を目指す強者もいる。

「まぁ転移最強だよな」
「ア、アルジュ、ナ、ひでぇ」
「はんそく、わざ」

 授業終了とともに食堂に転移し、限定ランチをゲットしたアルジュナを瀕死のクラスメイトが恨みがましく見つめながら、渋々普通のランチを選びに列に並びに行った。

「悔しさをバネに俺らも足早くなったよなぁ」
「おかげで好きなメニュー選べるけどさ」
「アルジュナ以外の連中ってどんな身体能力してるんだろうな、それとも装備か?」
「カレー美味い、今日カツついてるぜ」
「豪勢だな、俺はから揚げ定食」

 好き勝手言いながらアルジュナと同じテーブルにつき、大盛りの料理をぺろりと平らげる。
 ここでは大盛りが標準、少なくしてほしい時は申告が必要だ。

「よし、今日は何する? 予定無いなら鍛錬付き合ってくれよ」
「俺は図書館」
「保健室」
「屋上」
「校舎裏にある用具入れ」

 などなど見事に全員バラバラの返答で、問いかけた友人が潤んだ瞳でアルジュナを見つめてきた。

「付き合う」
「うぅありがとう。おのれリア充どもがぁ」
「純粋に調べ物があるんだ」
「不純な動機があります」
「青姦」
「先生縛ったまま放置してるから早くいかないと、きっと僕が来るのを待ってる」
「神聖な学び舎で何してんだお前」
「女神様の神託で特殊な縛り方を伝授されて、つい実践した」

 最大の問題発言をしたこのクラスメイトの相手、騎士団も真っ青なガチムチの体育教師だったりするのだから世の中わからない。

 恋人の乱れた姿を想像しうっとりする友人にドン引きしつつ、食べ終わったら行くぞと食器を片付けて出口に向かう。
 出口に差し掛かった所で一月に数度の頻度で発生する食堂イベントが発生してしまった。

 内容は女神次第だが、傍若無人な転校生がいきなり「かっこいいな、名前教えろよ!」と馴れ馴れしく話しかけてくるか、貴族の子息が「なぜ汚らわしい獣人がいるんだ」と真正面から喧嘩を売ってくるなど大体パターン化はされている。
 たまにピンクがくねくね、うるうるして縋り付いてくる時もあるが、解決策は変わらない。

 転校生は王道ルートと呼ばれ、放っておくと周囲への被害が大きいのが定番なので、早期排除が推奨されている。
 そもそも転校生を受け入れなければいいはずだが、ピンクと同様、不思議な力でなんかいつの間にかいるのでこの辺は追及しても無駄。

 獣人や身分が下の者に暴言を吐く貴族、考えるまでもなく他国の人間なので、見つけたら荒縄で縛ってその辺の教師に渡せば退学手続きをしてくれる。
 運が良ければ生きて国を出られるが、運が尽きていると運搬中に邪神一家の誰かに見つかって生きたまま食べられて人生終了。

 もっとも、自ら地雷を踏みに行くタイプが多く、生け捕りは実は難易度が高かったりする。
 まだ卒業せずに学園のどこかをウロウロしている双子の王太子に見つかれば廃人、邪神に見つかれば踊り食い、アルジュナに突っかかれば氷像、孤児を虐げると保護者から呪いを受けるなどシャレにならない報いを受けるのだ。
 ただ獣人は意外と温厚で荒縄で捕縛するだけで許してくれる。

「なぜこんな所に獣人がいる!」
「リザム様だめですよぉ、獣人さんにもお食事する権利はあるんですから!」
「ピンクは優しいな」
「ピンクちゃんの優しさに感謝するんだな獣人!」

 今日のイベントはまさかのミックスだった。

「ピンクって名前!? 女神様の手抜き感が酷いな」
「すまない、俺は先に行かせてもらう」
「そうしろ」
「保健室で白衣を乱してくる!」
「屋上で乱交してくる!」
「お前らは自重しろ」

 ツッコミも虚しく鼻息荒く友人が足早に立ち去る。
 午後の授業に間に合わせるためにも、こんな所で立ち止まっている暇などないのだ。

「司書を押し倒してくる」
「……調べ物があるって言ってなかったか?」
「強引さがどこまで通じるか調べるんだ!」

 すっごいイイ笑顔で告げたその手には、いつ取り出したのか媚薬が握られていた。
 休憩時間内に効果切れるのだろうか……不安を抱きつつ見送った。

 数人が離脱したのを逃げたと勘違いした集団が、ニヤニヤ笑いながらアルジュナを見下す。
 相手が学園最大の地雷とも知らずに。

「お前などが人間と同じ場所で食事するなど汚らわしい、さっさと食堂から消えろ――いや、この学園から去るがいい! お前など退学だ!」
「やぁんリザム様かぁっこいぃ」

 刹那、食堂から音が消えた。

「退学? この俺を?」

 不穏な空気に怯え、こそこそ食堂から逃げていく生徒も一部いたが、ほとんどの生徒はその場に留まり列が動くのを待ち、中にはアルジュナに絡む生徒の冥福を祈り始める者もいた。

「アルジュナ、食堂破壊はだめだ! あとスプラッタもやめたげて!」

 食事中だから! と響いた悲鳴に食堂に残っていた生徒がうんうんと頷く。

「血は流さない」
「ふんっ、この僕に手を上げるつもりか? 僕に手を出したら――」

 暴言を吐いた少年の視界からアルジュナが消えた。
 否、少年とピンク、その取り巻きが一瞬にして凍り付いたのだ。

「うん、血は流してないね。良かった」
「アイテムボックスに片付けたら鍛錬に行くぞ」
「そうだね、そうしよう」

 鍛錬の的を手に入れたアルジュナが去る頃には、食堂には昼食時の喧騒が戻っていた。

「で、こいつ誰?」
「他国の貴族だろ、テンプレ的に」

 午後の授業で合流した友人達は、みなどこか艶々していた。
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