『空虚の女王』と『幻術師』

常崎 ひな

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二章 始まりの戦い

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 翌日の夜。時計の針はさらにその翌日へと移ろうとしている時間帯。月もない真っ暗な夜の下で、絢爛豪華な明かりが灯っていた。
 夜の静けさが流麗な音楽によって打ち破られている。眩い灯りに、流麗な音楽。その絢爛豪華なる舞台の上にいるのは貴族や『永霊院』、そして、『空虚の女王』の姿があった。
 要人と呼ばれる存在が一同にしてここに集まっている。
 そして、ここには厳然たる守護を司る兵士たちの姿はなかった。

「どうなってるんだ……?」

 無防備にもパーティを広げているその光景に、ライリーたち『アルト・ロス』の面々は混乱する。突入していいのか、それとも、何か罠があるのかもしれない――そんな不安が押し寄せてくる。
 ライリーだけは内心で呆れてこの光景を見つめていた。

『今度、『永霊院』や貴族たちを集めて豪華な夜会を開こうかと思っている。その時は兵士たちには休むように命じようかと思っていてな。だから、お前らが突入しようと思えばしやすい。思う存分、夜会をぶち壊してやれ』

 不敵に笑うルチアからとんでもない言葉が出てきて冗談かと思ったのだが。
 ――本当にやったんだ……。
 夜会を開く分には構わないが――まさか護衛の兵士すら退けらせるとは。兵がいないということはここには将軍はいないのだろうか。
 そればかりははっきりとしなかった。

「ライリー、どうする?」

 さすがのアファルも戸惑っている。何しろ、王城の内部まで簡単に侵入できたのだから、なおさらだろう。そして、今、無防備にも夜会をしている『永霊院』たちの姿にも困惑している。

「うーん……、言いたいことはわかるけど――。とりあえず、仕掛けてみようか」
「え、そんな簡単でいいのか」
「ここでまごついても仕方がないからね。仕掛けるだけ仕掛けてみて……まぁ、ダメそうだったら、逃げよう」
「あ、あぁ……」

 アファルがまだ納得していないようだったが頷いて、背後に控えていた仲間たちに合図を送る。
 そして――、

「行け!!」

 その号令と共に、それが放り投げられた。



 ドン、という轟音が、会場を揺さぶった。重苦しい衝撃と轟音に、誰もが悲鳴を上げる。

「きゃあ!!」
「何だ!?」
「何があった!!」

 もうもう立ち込める煙と、上がる悲鳴、そして、苦しみにうめく声。びりびりと空気が反響する中を、ライリーたちは突入していった。

「殺せ!」
「『永霊院』のやつらは皆殺しだ!!」

『アルト・ロス』の面々から口から飛び出してきたのは強い殺意だった。今までされてきた仕打ちを考えると当然かもしれない。でも、その憎悪を間近で感じたライリーはぞくり、と背筋に悪寒が走った。

「貴様ら、何者だ!?」
「――こいつら、『アルト・ロス』の?」
「まだ、ごみが残っていたか! 早く消せ!」

『永霊院』の議員たちからもそんな声があがる。
 ――怖い。
 それが、ライリーの率直な想いだった。同じ人間で、同じ国に住んでいるにも関わらずに、お互いを殺せと叫ぶ。一つ考えを変えれば、一つ歩み寄れば、みんな仲良くできたのではないか――? そんなことをいまさらに思う。
 ライリーは叩き付けられる憎悪の言葉を耳に入れないようにしながら、会場の中へと走った。

「どこだ!?」
「『空虚の女王』はどこにいる!?」

『アルト・ロス』の狙いはあくまで一つ。『空虚の女王』であるルチアだった。この国をここまで転落させたのはこの国を担う『永霊院』と、その頂点である女王なのだ。ここで『永霊院』と女王を倒せば――この国は救われる。

「火を! 火を放て!」

 誰かがそう叫んだ瞬間、つん、と鼻の奥を刺激する匂いと共に、小さな火が落とされた。その瞬間、ごう、と爆発するかのように炎が立ち上った。

「逃げろ!」
「兵は何をしている!」

 逃げ惑う『永霊院』の議員たちはそう口々に叫ぶが、ここには彼らを守る兵はいない。彼らは守られていてばかりで、自分の身を守るという方法を知らないのだろう。我先にとこの会場から逃げようと扉へと殺到するが、扉は開かなかった。そこはあらかじめライリーたちが細工したため、開かないようになっている。

「助けてくれ!」
「死にたくない!!」

 先ほどの威勢はどうしたのだろうか。立派な身なりをした議員たちが、みすぼらしい格好をした『アルト・ロス』の人間に、必死になって命乞いをしていた。

「あきらめろ」

 そうして、追い詰められた議員たちは、怒りに狂った『アルト・ロス』の人間たちに殺されていく。
 人々の恐慌がこの会場をかき乱し、さらには、燃え盛る炎によって焼き尽くされようとしていた。その中でライリーはルチアを探していた。
 もし、この中にルチアがいたら――?
 それはそれで好都合かもしれない。何しろ、これは憎悪そのもので行われている殺戮行為。もし、この中にルチアがいて、殺されていれば、この国は救われる。
 それならそれでいい。
 だって、この国は救われる。
 ルチアだって解放される。
 自分だってこの国を救うことに一役買った『偉大』な『理律師』となれる。
 ――でも。


 ルチアが死んで、国は救われる。
 けれど、それでルチアは本当に救われるのだろうか?


 ぴたり、と思考が止まった時だった。ライリーの目は、それを捉えた。
 目の前には一人の少女と、一人の青年がいた。
 少女は月色のような美しい金色の髪を緩やかに結い、そのほっそりとした体に淡い赤色のドレスを身にまとっている。そして、その夜明け色のような紫色の目はどこかぼんやりとしていた。
 もう一人の青年の方は、真っ黒い髪をしている。そして、燃えるような赤い目が印象的で、その頬にはいまだに治りきっていない傷が一閃刻まれていた。
『空虚の女王』ルチアと、『アルト・ロス』のアファルだ。
 現在の女王と、ルチアが期待する次代の王の候補。
 その両者が今、対峙している。
 この二人が出会った時、何が起こるのだろう?
 そう思った時があった。それが今、現実として目の前の光景として広がっている。
 アファルの眼差しはどこまでも真っ直ぐにルチアを映している。ただ、ルチアの目はぼんやりとどこかを眺めていた。けれど、彼女が今、その夜明け色の瞳にアファルの姿を焼き付けているに違いなかった。
 ルチアが死んだ後の、この国を治める者が目の前にいるのだから。
 まるでその空間だけが、この阿鼻叫喚と化している空間から抜き出したかのように静かだった。二人は二人して、周囲のことは目にしていない。お互いのことだけを認識していた。
 それを、ライリーは垣間見ている。

「こんばんは」

 静寂を破ったのは、『空虚の女王』だった。

「……こんばんは。きみが――貴女が女王?」
「そうです。わたくしはルチア・リーネス・ミア・サクリネイズ。この国の女王です」
「俺は『アルト・ロス』のアファル・ドリーと申します」
「そうですか。以後、お見知りおきを」

 そうして、女王は恭しく頭を下げた。一国の女王が頭を下げる姿は気品あるものの、どこか揶揄するかのような雰囲気があった。女王が頭を上げて、再びぼんやりとアファルを見つめる。

「それでは、アファル殿? このわたくしに何用でしょうか?」
「――貴女を止めに来ました」
「わたくしを?」
「はい」
「どうして?」

 人形めいたように首を傾げる女王。人を揶揄するようなしぐさだけれど、女王の仮面の下にルチアという存在を知っているライリーから見れば、そのやり取りは違和感しかなかった。
 愚直なまでのアファルに対して、ルチアは探りを入れているかのように見える。
 本当にこの男は王にふさわしいかどうか、見極めようとしているのかもしれなかった。

「貴女は、俺たち国民を殺し過ぎました」
「そうですか。ですが、殺したのはあなた方が罪を犯したから。それゆえに、処刑したにすぎません」
「些細なことでも、貴女は殺した! 小さな子供のちょっとした悪戯でも!」
「些細なことでも罪は罪。そこに子供であろうと老人であろうと関係はありません。そうではありませんか?」
「貴女には許すという心がないのですか?」
「許す? 許しても、改心しなければ意味がありません。人は一度の過ちは二度犯すもの。わたくしはその危険な目を摘んだにすぎません」
「――そうやってあんたは、俺の両親と弟を殺したのか!?」
「貴方のご両親と弟? ――多くの罪を断罪してきたので、どの方が覚えていませんね」

 そこで、『空虚の女王』はくすり、と笑う。その笑みは明らかにアファルを蔑んだ笑みだった。
 アファルの顔に怒りが滲んだ。
 けれど、それを押し殺すように、奥歯をかみしめていた。その手がふるふると震えながら、懐にある短剣を掴もうとしていたけれど、掴まずに終えた。

「俺は、貴女を殺したくない」
「――あら、どうしてですか?」
「人が死ぬのを、俺はもう見たくないからだ」
「……そうですか」
「貴女にはわからないでしょう。人を失うという辛さがどんなものなのか」

 その言葉がルチアに深く突き刺さったのがわかった。その空虚な眼差しがゆらり、と一瞬だけ揺れる。けれど、彼女が持ちこたえた。揺らいだのは一瞬だけで、すぐにその動揺をかき消した。まるで垣間見たライリーが錯覚でも起こしたかのように感じた。
 ――ルチアだって、人を失う痛みくらい知ってる。
 ルチアの代わりに、そう叫びたかった。
 でもここでそう叫んでしまえば、何もかも終わってしまう。それだけは、絶対にダメだ。ライリーは奥歯をかみしめることで、何とか自分を押し殺した。
 ルチアだって頑張っているのに、ここでライリーがミスするわけにはいかないのだ。

「俺は失う辛さを知っている。だからこそ、俺は貴女を殺さない。――逆に、俺は救いたいんだ!」

 アファルの言葉は、ルチアにどう届いたのだろうか?
 ルチアは今度はその感情を絶対に表には出さなかった。ただうつろな瞳で、アファルに対して沈黙を返すのみ。

「……貴方がわたくしを救うというのですか?」

 そこで、ルチアは笑った。おそらく人々は初めて見るであろう『空虚の女王』の笑み。その笑みは見た者の心を凍り付かせるほどに、冷たく、酷薄とした凄絶な嘲笑だった。

「面白いことをおっしゃいますね? 肉親ですら救えず、仲間も救えない貴方が、わたくしを救おうというのですか?」
「……っ」
「思い違いも甚だしい。……あぁ、でも、肉親や仲間たちは死んで当然でしょうね。こんなふがいない人間が、大口をたたくのですから。いっそ、死んだ方が幸せだったというものでしょう」
「……黙れ」
「何を怒っているのですか? わたくはこう申し上げただけです。死んだ方が幸せだったと――それの、何がいけないのでしょうか?」
「黙れ!!」

 アファルが短剣をルチアに向ける。その禍々しい切っ先がルチアに向けられて、ライリーの心臓が嫌な音を立て始めた。
 アファルが、我を忘れるほどに怒り狂っている。
 それはそうだろう。
 アファルの大切な人を、その死を、侮辱されたのだから。
 おそらく、ルチアもまたそれを狙って、意図的にアファルを刺激したのだろう。その憎悪が、自分に向けられるように。そして、その目論見は見事にはまっていた。
 アファルの憎悪がすべて、ルチアに向けられている。もし、このままルチアがアファルに殺されれば、この国は救われるだろう。
 ルチアも、ライリーも、本懐が成就される。
 ――でも、本当にそれでいいのだろうか?
 そう疑問視する自分自身がいた。
 確かに、ここでルチアがアファルによって殺されれば何もかもが終わる。この悪政からも、国を覆いつくそうとしている『呪い』からも。
 そうなれば、ライリーもまた国を救った〝偉大〟なる『理律師』として名をはせることになる。それは、ライリーにとっては願ってもいないことだ。
 でも、――なんか嫌だ。
 ルチアが殺されるのを見るのは、なんか嫌だ。
 ――嫌?
 何が、嫌なのだろう?
 見知っている人が一方的に殺されるのを見るのが嫌なのだろうか。それもあるかもしれない。何しろ、ライリーは唯一、ルチアの事情を知っている人間だ。そして、彼女の素顔も。『幻』の一角獣と戯れる彼女の姿も。
 ――何を、迷っているんだ。
 自分は〝偉大〟な『理律師』になるって決めた。それなら、最後まで貫き通さなければいけない。ライリーが『理律師』であるためにも、必ずこれは達成されなければいけないのだ。
 見守らなければいけない。
 ルチアに刃を突きつけるアファルを。
 刃が自分に突き付けられているルチアを。
 彼らの、姿を。
 アファルが、一歩、踏み込んだ。我を忘れたアファルは、その殺意がルチアへと集中する。ルチアがその刃を避けるでもなく、ただ、その行く末を見つめていた。その口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた。そして、その夜明け色の瞳が、どこか安堵したかのような――そして、微かな恐怖を滲ませて――。
 ――あ。
 と、ライリーは思った。
 そして、同時に、考えが巡った。
 ――僕は一体、何をしたいんだろう。
『理律師』として〝偉大〟になること?
 少なくとも、彼女自身が望んだこととはいえ、彼女が怯えているのを見て、ただ黙って見過ごすのか? 彼女を見捨ててまで、――自分はこの決着を見守っていなければいけないのだろうか?
 そう、思い至った瞬間、体が動き出していた。腕を伸ばす。その手のひらの先にいるのは、アファルと、ルチアだ。
 無意識に『幻覚』を発動させようとした。
 けれど、その時だった。


「そうだ! すべては女王が悪い!」

    
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