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炎で毒 ♥
野島の指が、わき腹に触れる。反射で、ひく、と身体が跳ねた。ぬるい体温は、逃げるほどに不快じゃないが、これからなにをされるかわからなくて怖い。指先がそろそろと上に上ってきて、乳輪に触られた瞬間に身体が反り上がる。
「んっ」
すり、と表面を撫でるように触れる。何度もそこを苛められた記憶のある与埜は、それだけでふつふつと腹の底に熱が溜まっていくような気がした。
「息があがってるぞ」
「あっ、はっ」
「期待、してんのか? この淫乱」
乱雑な言葉を投げつけられて、頭が重くなる。目の奥が熱い。野島の気配が一瞬離れていったと思うと、しばらくしてふいに胸の先に痛みが走る。
「痛ッ」
「それだけか?」
「──ッ、ん、あ」
野島が、小さく芽を浮かせていただけの与埜の乳首を、ひしゃげるほどに常っていた。茶色い部分の皮が山になるほど引っ張られると、ぴりぴりと痛む。痛くて、食いしばった歯の内側で、唾液がじわじわと溢れる。
そう、痛い。そして、気持ちいい。
右の乳首が痛みから解放された。じんじんと響く痛みと、その奥の甘い疼きが尾を引く。そのもどかしい快感に浸っていると、すぐにまた抓られる。引っ張っては緩め、緩めてはまた引っ張られて、痛みと甘い疼きを間断なく与えられて、だんだんと感覚がマヒしてくる。ちらりと下を見ると自分の胸の上で、指を離された茶色い皮膚がひしゃげたように伸びている。
「う゛、あぁ゛、んっ……」
痛みと、痺れが胸の上でごちゃごちゃになって、少しでも痛みから逃げたくて胸を突き出す。でも同時にケツのほうがじわじわと熱くなっていく。
「は、かずひさ、腰揺れてんぞ」
「うあ゛、やめ、んぅ」
「すごいな、実は俺がいない間も、すっげえ遊んでたんじゃないの?」
「あっ、はぁっ……ッ」
野島の手が、ひときわ強く胸の先をつまんだ。同時に、与埜の性器を触る。
与埜のそこはすっかり硬くなり濡れていて、触られるだけではもう敏感すぎて痛いほど気持ちいい。足の間に野島に割り入られて、誰に指図されたわけでもないのに脚をM字に開いていた。
だが、野島はペニスは表面を撫でるだけで、さらにその下、狭い隘路をなぞって、その下にある穴の縁をぐいと押し込んだ。
「あっ、んあっ」
「うん、こっちもひくひくしてるな。まだ何もしてないのに」
求めていたところを触れられて、腰が浮く。触られると、否応なしに、自分のそこが器用に筋肉を収縮しているのがわかってしまう。逃げるように身をよじるが行き場はなくて、そのままバランスを崩して横に倒れそうになったのを野島の腕が戻す。乳首は、咎めるようにすりつぶされて、鋭い痛みが背筋を熱くさせる。
「このまま、またイク?」
「う゛、やだ、あ゛、んんっ」
「……本当に?」
ぴん、と野島が乳首を引っ張り、括約筋を押し広げる。胸の先が痛んで、ケツからは圧迫感――そして痛いほどに、与埜の性器は硬くなっていた。
見下ろす双眸が冷たい色をしていた。目の前が涙で曇っているのをわかりながら、与埜は答える代わりに、そっと目を閉じる。
野島の手が、ケツから離れたかと思うと、一つ、強く与埜の性器を叩いた。
「ッ、――――ッ!!」
そして、往復するように反対からもう一回。ぐりぐりとひねり上げられる胸の痛みとともに、それらの痛みは白熱する欲望に飲み込まれて、完璧に快感にすり替わっていた。背筋が熱くて、目の前がちかちかした。そこの熱がハレーションするたびに、へその奥で快感がじわじわと膨らんで溜まって、ちんこが硬くなって、その下の直腸が、懐かしい快感を欲しがって、ぐねぐねと脈動をはじめている。。
「う゛、あ゛、う゛ーーっ、あ、はっ、いだぁ、うんっあんっ」
びく、びく、と腰が跳ねる。追い立てるように、今度こそ本当につぶれてしまうかと思うほどに強く乳首をひねられて、指の間から肉が弾かれてしまい、快感が弾ける。目の前がちかちかした。
そしてイッた勢いのまま、野島の指が胎内に入り込んでくる。少し乾いている指先の、粘膜を痛めつけるような感触は、正直、快感よりもきつさが勝る。リアルタイムの快感が減った分、そのきつさが浮かび上がってきて、身体が少し強張った。
「あ、すば、る……んっ」
野島の動きが、止まった。そして、しばらくすると、ひんやりしたものが胎内に広がって、すぐぬるくなっていく。なにかクリームのようなものを足されたのだ。粘膜が擦れるきつさがなくなって、内臓に侵入され、身体の領域を冒される圧迫感と、野島の身体の重さに、腹の奥が歓喜するようにうねって、迎えた。
「あ、うあーッ、んぅっ、は」
「ほしかったんだろ、なあ、爽やかな与埜先生が、ベッドでこんな淫乱だなんて、支持者のみんなに教えてやりたいよ」
「やめ、ろっ、んっ、は」
「おまえを犯したい奴が事務所に押しかけてくるかもな」
妄想を搔き立てられる。恐怖と嫌悪は、想像上でなら、どうしようもなく爛れた快感のスパイスだ。野島の欲望は、与埜の記憶の中のそれよりずっと熱くて硬かった。それが、何度も腹の内側を往復する。決して激しい動きではないが、確実に与埜に快感を与えて、狂わせようとする、捕食者の罠だ。
両足を抱えられて、持ち上げられる。往年よりも薄くなったとはいえ、野島は軽々と与埜の身体を扱った。野島の肩までは無理でも、あけっぴろげにされた両足の心もとなさすら、堪らなかった。そのうえで、獰猛に笑う野島の口元が揺れているのを見れば、なおのこと。
深く腰を突き入れられた瞬間、腹を押される。静かに体重を掛けるようなものだが、快楽器官を薄皮一枚挟んだ場所に触れられたのに、与埜の身体は思いがけず、びくん、と大きく跳ねた。
「あ、あ、すば、ああ、るぅっ、んっ」
「お、気持ちいいんだ」
初めてされることだった。マッサージするかのように外側から揺らされるのが、あぶられるような重さと、熱を、感じてしまう。
野島は、ギラギラと光る眼で、与埜を見ていた。そして与埜も、その目を真正面から見返してしまう。
「女の人はさ、ここに子宮があって、揺らされると気持ちいいんだって。経産婦さんとか、経験豊富な人しか感じられないらしいけど」
「あっ、あっ、やめっ、んっ、ふ、なに、あっ――っ」
「与埜は、子宮もないし、俺とすんのもすっげー久しぶりなのにさ」
「だめ、いく、んっ、」
「…………ここで、感じちゃうんだな」
「あっ、――――ッッ」
野島の声が、濡れた声が、耳を舐める。頭の内側まで、冒していくような、すりつぶしていくような、声。
野島の目線が、熱い目線が、与埜のすべてをさらっていく。
「――――ッ、あっ、すば、あっ――――」
「イけよ、かずひさ」
抽出する動きが激しくなって、粘膜が熱いほど擦られて、外側からも押しつぶされて。逃げることなんて微塵も出来なかった。追い立てられるまま、どろどろになった欲望を絞られて、全部見られて、火をつけられて――――
野島の目線に、炙られて、焼かれていた。身体の内側から溶けて、炎に巻かれて灰になってしまう。
与埜自身が出したもので、また胸まで熱く塗れる。汚された感触と、それでもまだナカに居座る硬いものを締め付けるあさましい自分の肉の感触に、押しあげられた快感はきついほどさらに高められる。降りてこられない。もう燃やすものなんて何もないのに、灼熱は容赦を知らない。
野島は、炎だ。毒だ。触れたものを全て溶かして、燃やして、暴いてしまう。本人はその強烈な暴力に自覚がない分、性質が悪い。どこか斜に構えて皮肉めいた目線をするくせに、根っこの熱を隠そうとしない。そのアンバランスさと、渇望めいた情動に、どうしようもなく惹かれてしまうのだと言ったら、どんな顔をするのだろう。
まつりの日に、紛れ込んだ物の怪たちに、かどわかされる子どもたち。
それが、今の与埜だった。
力の抜けた与埜の身体の上で、野島はけもののように呻った。そして今までの余裕綽々とした姿はどこへやら、与埜の身体にしがみついて、肌の音がなるほど腰を打ち付ける。何度も。痛い感覚すらも彼に求められているような気がして、疲れ切った身体で、痛みや疲労にも似た野島の駆動を受け止める。凶暴なけものを宥める、野獣使いにでもなったような優越感。
「ぐっ、あ゛――――ッ」
「んっ、は、あ」
熱いほとばしりが、内側に打ち付けられる感覚。それすら、すべては幻想だ。でも、主義を変えていなければ、野島はセーフティセックス以外をしないはずだから。コンドームさえしていれば、どんな綱渡りにも付き合ってくれる豪胆さはあるから、与埜の知らないところでそっち方面にも大胆になってくれている可能性もあるが。
ぐぐ、と最後まで吐き出そうとするかのように、野島の身体が強く押し付けられる。その重さを抱きしめると、濡れた粘膜に口を塞がれた。
今までの激しさがどこにいったかと思うほど、緩やかで、優しい、キスだった。
「かずひさ……」
こぼれてしまった、というのがふさわしいような声で、名前を呼ばれる。
やめてほしかった。どうしようもなく、心臓が締め付けられて、おまえがほしくなるから。
そっと、手をかざす。与埜を見つめる夜の海のような瞳を、隠すために。
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