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フットサル部にようこそ! です♪
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ちょうどその頃、舞は昨日、志保達と話した公園にいた。
生まれて初めて仮病で学校を休んだ舞。ベンチに座って、暖かな風を身体一杯に受ける。
(返事に困って学校休んじゃったけど、明日はどうしよう。こんな私が、また楽しく部活なんてやれるのかな?)
青空を見上げながら高校に入学し、ハンド部に入部してからの事を思い出してみる。ただがむしゃらにハンドボールに打ち込んでいたのに、次第に苦痛になっていった。
楽しくて、最高の仲間がいて、周囲の期待に応えたい。そんな一心でここまで頑張ってきた。
それがプレッシャーになり始め、次第に自分の思うようなプレーが出来ないようになっていった。ミスを恐れ、大胆にプレー出来ず、周りの目ばかり気にするようになっていた。
軍隊方式の練習にも嫌気が差していた。根性論が必ずしも良い結果を生むとはどうしても思えない。
理論的にもおかしいと思うし、絶対的に楽しいと思えない。
ため息を大きく吐き、また悩みだす舞。フットサル部に入って、同じ思いをしたくない。だが、やはり楽しく高校生活を送りたい。
そして、今度は志保や理沙達の顔を思い浮かべてみる。フットサル部を作ろうと一途に行動する姿は舞にも共感できた。入部しないと言った自分を諭しに来てくれた事で良い子達だという事もわかる。だからこそ彼女達と自分が楽しく過ごせていけるのか、不安ばかりが募っていく。
また1つ、大きくため息をつく。迷っていた舞は暖かな日差しを受け、ほんの少しだけベンチでうたた寝をしてしまった。
夢の中で自分に向かって走ってくる4人。志保、理沙、亜紀、柚季が、笑顔を浮かべながら駆け寄ってくる。そして、自分を中心にしてみんなで抱き合って喜んでいた。
(あれ? なんで私、泣いているんだろう)
夢から覚めた舞は頬に伝う涙を手で拭い、夢の中の出来事を思い出してみた。
最高の笑顔で自分に走り寄って来る志保達。その中心にいた自分も笑顔だった。みんなと抱き合い嬉し涙を流し、充実した笑顔の自分がそこにはいた。
(夢を信じる……か。少しロマンチストっぽいけど、信じてみようかな)
ある決意をした舞は立ち上がり、学校まで走り出した。
舞が学校に到着すると、ちょうど下校を示すチャイムが鳴り響いた。舞はそのまま校舎の中へと向かい、志保たちの教室へと走った。
様々な生徒が帰り支度をする中、一直線で志保達の教室に向かう。志保達の教室に着いた時には、舞は息が切れて汗をかいていた。
「戸崎さん、いる?」
勢いよく教室の扉を開け、志保の名前を叫ぶ。志保や理沙の姿を捜して教室中を見回したが、帰ってしまったのか、見当たらない。
(返事するって言ったのに……帰っちゃったかな?)
小さなため息をつく舞。
「遠藤先輩、戸崎さんの教室は隣なの。間違っているの」
「うわぁぁ~」
突然、目の前に現れた柚季に舞が悲鳴を上げながら尻もちをつく。その時、激しく揺れる舞の胸を柚季は見逃さずに携帯で動画に撮影していた。
「驚かさないで……って、いつの間に携帯を出しているの?」
2度、柚季にツッコミを入れる舞。だが、柚季はそんな事はお構いなしに自分が撮影した動画を確認する。動画の出来に満足そうな笑顔を出す柚季。
「かなりのお宝映像なの、高く売れそうなの」
目の前にいる舞にさえ聞こえるかどうかの声で柚季が呟く。柚季の声が耳に届いた舞は、しりもちを着いたまま疑問を柚季にぶつける。
「売るの? 誰に? 目的は何?」
その答えには応じず、柚季は無言で舞に手を差し出した。舞は柚季の手を握り、引き起こしてもらう。
「あ、ありがとう、えっと、足立さんで良かったよね?」
目の前にいるツインテールの小さな少女の名前をうろ覚えだった舞は、恐る恐る柚季に名前を聞いてみる。する と、柚季は
「柚季って呼んでくれていいの」
と言いながら歩き出した。突然歩き出す柚季に舞は戸惑いつつもさらに質問を続ける。
「え、えっと、ゆ、柚季ちゃん、どこへ行くの?」
「ご主人様のところなの。遠藤先輩も一緒に行くの」
「あ、えっ? ご、ご主人様?」
質問に対して予想外の答えが返答され、さらに戸惑う舞。前を歩いていた柚季は振り返り、無言で頷いた。
隣の教室の扉の前に着いた柚季は「こっちがご主人様の教室なの」と言って、少し身体を横に移動し、舞が扉を開けるための場所を用意する。
決意を決め、舞が教室の扉に手をかけた。そして「戸崎さん、いますか?」と恐る恐る言いながら教室の扉を開ける。すると、志保、理沙、亜紀がこちらに気付いた。
「あ~遠藤先輩だ~」
「今日は返事がもらえないと思っていました」
「で、決めたのですか? これからの事を」
3人が、思い思いの言葉を舞に伝える。柚季が舞を避け、3人の元へ向かう。
「もしかして柚季ちゃんが遠藤先輩を連れてきてくれたの?」
「違うの。遠藤先輩が自分でここに来たの」
志保の質問に柚季は首を振って否定すると振り返り、3人と同じ様に舞を見つめた。
4人に見つめられた舞は意を決し、
「わ、私、フットサル部に入部する。だ、だからこれからよろしくね」
と言って笑顔を4人に見せた。
感動で涙を堪える志保、
優しい笑顔で自分を見つめる理沙。
満足げに小さく頷く亜紀。
無表情だが嬉しそうな雰囲気を出す柚季。
十人十色のしぐさだったが、次の行動は4人が完全にシンクロした。
「フットサル部にようこそ!」
4人の声が完全にハモり、教室中に響き渡った。
生まれて初めて仮病で学校を休んだ舞。ベンチに座って、暖かな風を身体一杯に受ける。
(返事に困って学校休んじゃったけど、明日はどうしよう。こんな私が、また楽しく部活なんてやれるのかな?)
青空を見上げながら高校に入学し、ハンド部に入部してからの事を思い出してみる。ただがむしゃらにハンドボールに打ち込んでいたのに、次第に苦痛になっていった。
楽しくて、最高の仲間がいて、周囲の期待に応えたい。そんな一心でここまで頑張ってきた。
それがプレッシャーになり始め、次第に自分の思うようなプレーが出来ないようになっていった。ミスを恐れ、大胆にプレー出来ず、周りの目ばかり気にするようになっていた。
軍隊方式の練習にも嫌気が差していた。根性論が必ずしも良い結果を生むとはどうしても思えない。
理論的にもおかしいと思うし、絶対的に楽しいと思えない。
ため息を大きく吐き、また悩みだす舞。フットサル部に入って、同じ思いをしたくない。だが、やはり楽しく高校生活を送りたい。
そして、今度は志保や理沙達の顔を思い浮かべてみる。フットサル部を作ろうと一途に行動する姿は舞にも共感できた。入部しないと言った自分を諭しに来てくれた事で良い子達だという事もわかる。だからこそ彼女達と自分が楽しく過ごせていけるのか、不安ばかりが募っていく。
また1つ、大きくため息をつく。迷っていた舞は暖かな日差しを受け、ほんの少しだけベンチでうたた寝をしてしまった。
夢の中で自分に向かって走ってくる4人。志保、理沙、亜紀、柚季が、笑顔を浮かべながら駆け寄ってくる。そして、自分を中心にしてみんなで抱き合って喜んでいた。
(あれ? なんで私、泣いているんだろう)
夢から覚めた舞は頬に伝う涙を手で拭い、夢の中の出来事を思い出してみた。
最高の笑顔で自分に走り寄って来る志保達。その中心にいた自分も笑顔だった。みんなと抱き合い嬉し涙を流し、充実した笑顔の自分がそこにはいた。
(夢を信じる……か。少しロマンチストっぽいけど、信じてみようかな)
ある決意をした舞は立ち上がり、学校まで走り出した。
舞が学校に到着すると、ちょうど下校を示すチャイムが鳴り響いた。舞はそのまま校舎の中へと向かい、志保たちの教室へと走った。
様々な生徒が帰り支度をする中、一直線で志保達の教室に向かう。志保達の教室に着いた時には、舞は息が切れて汗をかいていた。
「戸崎さん、いる?」
勢いよく教室の扉を開け、志保の名前を叫ぶ。志保や理沙の姿を捜して教室中を見回したが、帰ってしまったのか、見当たらない。
(返事するって言ったのに……帰っちゃったかな?)
小さなため息をつく舞。
「遠藤先輩、戸崎さんの教室は隣なの。間違っているの」
「うわぁぁ~」
突然、目の前に現れた柚季に舞が悲鳴を上げながら尻もちをつく。その時、激しく揺れる舞の胸を柚季は見逃さずに携帯で動画に撮影していた。
「驚かさないで……って、いつの間に携帯を出しているの?」
2度、柚季にツッコミを入れる舞。だが、柚季はそんな事はお構いなしに自分が撮影した動画を確認する。動画の出来に満足そうな笑顔を出す柚季。
「かなりのお宝映像なの、高く売れそうなの」
目の前にいる舞にさえ聞こえるかどうかの声で柚季が呟く。柚季の声が耳に届いた舞は、しりもちを着いたまま疑問を柚季にぶつける。
「売るの? 誰に? 目的は何?」
その答えには応じず、柚季は無言で舞に手を差し出した。舞は柚季の手を握り、引き起こしてもらう。
「あ、ありがとう、えっと、足立さんで良かったよね?」
目の前にいるツインテールの小さな少女の名前をうろ覚えだった舞は、恐る恐る柚季に名前を聞いてみる。する と、柚季は
「柚季って呼んでくれていいの」
と言いながら歩き出した。突然歩き出す柚季に舞は戸惑いつつもさらに質問を続ける。
「え、えっと、ゆ、柚季ちゃん、どこへ行くの?」
「ご主人様のところなの。遠藤先輩も一緒に行くの」
「あ、えっ? ご、ご主人様?」
質問に対して予想外の答えが返答され、さらに戸惑う舞。前を歩いていた柚季は振り返り、無言で頷いた。
隣の教室の扉の前に着いた柚季は「こっちがご主人様の教室なの」と言って、少し身体を横に移動し、舞が扉を開けるための場所を用意する。
決意を決め、舞が教室の扉に手をかけた。そして「戸崎さん、いますか?」と恐る恐る言いながら教室の扉を開ける。すると、志保、理沙、亜紀がこちらに気付いた。
「あ~遠藤先輩だ~」
「今日は返事がもらえないと思っていました」
「で、決めたのですか? これからの事を」
3人が、思い思いの言葉を舞に伝える。柚季が舞を避け、3人の元へ向かう。
「もしかして柚季ちゃんが遠藤先輩を連れてきてくれたの?」
「違うの。遠藤先輩が自分でここに来たの」
志保の質問に柚季は首を振って否定すると振り返り、3人と同じ様に舞を見つめた。
4人に見つめられた舞は意を決し、
「わ、私、フットサル部に入部する。だ、だからこれからよろしくね」
と言って笑顔を4人に見せた。
感動で涙を堪える志保、
優しい笑顔で自分を見つめる理沙。
満足げに小さく頷く亜紀。
無表情だが嬉しそうな雰囲気を出す柚季。
十人十色のしぐさだったが、次の行動は4人が完全にシンクロした。
「フットサル部にようこそ!」
4人の声が完全にハモり、教室中に響き渡った。
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