フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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成長しています♪

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 次の日から大会に向けての猛練習が始まった。
 自分達が考えた練習法を健が少しだけ修正し、基礎体力や基本的な技術、連携などを煮詰めていく。自分達が考えた練習法だけあって、きつい練習ではあったが辛い練習ではない。健もそんな練習を進んで選んで行った。
 夏休みに入るとさらに練習は厳しくなり、さらに暑さも加わった。夏バテや体調管理などの心配もあったが、顧問のゆかりや健が計画を立てて対策も考えていた。

「欧州では練習時間はかなり短いんだ。その分、集中してやる。長くダラダラ練習をしたり、根性論の練習は時代遅れだと思う。まあ、全部を否定するわけじゃないけどね。どんな練習でも楽しく集中する事を忘れないで」

 そう言った健の練習スケジュールは実に明確であった。暑くなる前、午前中を中心に基礎体力トレーニング。昼間は休憩やミーティングに当て、夕方から技術練習や連携をメインとした練習。練習の間にも休憩時間は長めに取って、メンバー達の体調を気遣ってくれていた。
 夏休みに入り、スクラッチの男性陣がゲーム練習の為に学校まで出向いてくれ、かなり充実した練習を行った。大学生から社会人。バイトや仕事で疲れているのにも関わらず、夕方から夜までみっちりゲーム練習に付き合ってくれた。

「ゲーム式練習は今まで以上に集中して! 経験は絶対に無駄にはならない。色んな経験をした分だけみんなに上乗せされるから」

 そんな甲斐があってお盆前にはフットサルのチームらしく見えるとゆかり先生からも太鼓判を押してもらった。
 今までは悪く言えばただ前に蹴るだけのフットサルモドキのチーム。それがここまでのチームになった実感を、メンバー全員が感じていた。

「多少だけどスクラッチの男性陣の人達ともゲームになるようになってきたね」

「向こうは3~5分の力で、こっちは全開。男性と女性の差を考えたら健闘している方かもしれないけどな」

「でも、健さんもこれなら奈央さん達ともいい勝負出来ると思うって言ってくださいましたわ」

「兄貴も満足そうに頷いていたの」

 健の妹である柚季は休憩の度に健に質問に行く。兄弟である事を最大限に生かし、ゲーム内容や健の考えている事を聞いてメンバーに伝えてくれた。

「でも、後ろから見ていてもみんなアスリートっぽくなってきているよ。筋肉も付いてきているし。大丈夫、自信持ってやっていこう」

 帰り支度をする舞が着替えながらそう言うと、みんなの視線が舞に集中する。

「なんか、舞ちゃんの胸。また大きくなってない?」

「えぇ。私達と同じ練習をしているのに、この差は何でしょう?」

「私達は筋肉。舞さんは胸。おかしくないか?」

(コクコク)

「えっ、何? そんなにジロジロ見ないで」

 メンバー達の視線に気が付いた舞が慌てて自分の胸を隠した。

「みんなだってスタイルいいじゃない。胸が大きくても良い事ばかりじゃないんだよ。肩こりが酷いし、形が崩れないようにいつも意識しないといけないし」

 舞がそう言った瞬間、志保は泣き出し、亜紀は怒りで肩を振るわせた。

「舞ちゃんは今、全世界の普乳女性を敵に回したんだからね!」

 ビシッと舞に指を差し、そう言い放った志保。そして今度は柚季に抱きついてまた泣き出した。

「不乳?」

「亜紀ちゃん、今、『不足』の『不』で不乳って言ったでしょ! 違うもん、『普通』の『普』で普乳だもん。ね、柚季ちゃん」

「一緒にしないでほしいの」

「えっ? そりゃ、理沙や亜紀ちゃんはそれなりにだけど。柚季ちゃんは、私の仲間でしょ?」

「もう1回言うの。一緒にしないでほしいの」

 そう言いながら柚季は自分の胸に志保の手を導いた。柚季の胸に手を当てた志保の顔色が一気に暗くなり、乾いた笑いが志保からもれた。

「もう、私には何も聞こえないし見えませんわ」

「偶然ね。私も涙でかすんで何も見えない」

「志保ちゃん。色んな意味で残念だね」

 部室には志保の乾いた笑いが無常にも響き渡るだけだった。

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