42 / 44
完成させた。誘われた。
しおりを挟む
「皆さん、今までお疲れ様でした。本日SEまで終わり、映画が完成しました~! これで来週の学園祭で放映出来ます~!」
「「「お疲れ様でした~」」」
とある貸し切りにした小さな居酒屋。若木の一言でそこにいた全ての人間が笑顔になった瞬間だった。映画の完成パーティー。この完成パーティーには久美と千絵も参加しており、遥香と共にこの日を迎えた事を喜んだ。
「やったね、遥香。お疲れ様」
「うん、何とか期限まで間に合ったよ。これで学園祭で上映出来るよ」
「内容はまあ、うん。この場では深く語るまい」
「久美、それは言ってるも同然だからね。でも、映像があるだけでだいぶ違うし、若木君が演出をだいぶ頑張ったから脚本とは大分印象は違うと思うよ」
うん、それだけは自信を持って言える。若木君が演出を頑張ったし、SE班も効果音を頑張った。撮影班やCG班も意見を出し合って、良い作品にしようってみんなが思っていたから。
流石、映画好きが揃っている学校だけあるね。その道で食べていこうって集団でもあるから、みんな妥協って言葉がないんだよね。個人的には確かに脚本は……って感じだけど。つくづく脚本って大事だよね。
「そうなの? じゃあ、学園祭を楽しみにしてるよ。良樹さんと見に来るからね」
「あれから3ヵ月が過ぎているのに、まだそれだけ惚気れるんだね。そろそろ何か問題でも起こって良さそうだけど」
「良樹さんは私が大好きだし、私は良樹さんが大好きだから。問題なんてないない」
「法的には問題ないけど、モラル的には問題だらけだからね。人前でもイチャイチャするのは良くないよ」
「そこまで言われるほど人前ではイチャイチャしてないから!」
完成パーティーも終盤に入り、若木が遥香たちに近づいてきた。若木も他のメンバーからお酒を勧められたのか、赤い顔をしている。しかし、足取りはしっかりしていて、見た目ほどは酔っていない感じを遥香たちは感じていた。
「鈴木さん、お疲れ様。何とか完成まで持って行けたね」
「若木君やみんなが頑張ったからね」
「ううん、鈴木さんが副監督してくれてなかったら、心が折れていたかもしれない。本当に感謝しかないよ。駄目な総監督だったけど、支えてくれてありがとう。それと野々山さんも木本さんも協力してくれてありがとう」
「いやいや、久美の棒読みで何回もリテイク出してこちらこそすいませんでした」
「千絵がそれを言うの。千絵だって緊張して声が裏返っていたでしょう」
「まあまあ。私からも2人。本当にありがとう」
こんな映画馬鹿の私にいつも付き合ってくれる2人には本当に感謝しかない。久美も千絵も学業で忙しいはずなのに、頼めば笑顔でOKしてくれる。こんな友達が出来た事を本当に嬉しいと思っているよ。恥ずかしいから口に出しては伝えないけどね。
「で、鈴木さんに話があるんだけど」
若木のこの言葉に反応する久美と千絵。アルコールの為だけじゃない若木の顔の赤さ。若木の気持ちを汲み取る久美と千絵だったが、遥香には若木の真意は全く伝わっていなかった。
「なんか取り直したいシーンとかあった? あっ、面白い脚本でも見つかったの?」
「さすが遥香。見事なKY。あっ、私たちは少し席を外そうか?」
「あっ、いやいや大丈夫、大丈夫。あのさ、鈴木さん。良かったら学園祭の日に一緒に回らないかな?」
「へっ? なんで?」
遥香、その返事は乙女としてどうだろう? あなたも映画ヲタクでとはいえ、乙女カテゴリーの端っこの方に引っ掛かっているんだからさ。千絵でさえ高校時代のトラウマを克服して彼氏を作ったんだよ。恋愛経験のない監督が恋愛映画を作るって事になったらどうするの? もう少しで良いから恋愛にも目を向けようよ。多分、若木君からしたら、清水の舞台から飛び降りる心境だと思うよ。
「あ、いや、他のやつらの作品も見てみたいし、後で感想会を開くなら、監督と副監督の意見をまとめておいた方が良いかなって思ってさ」
「あ~なるほどね。うん、分かった。いいよ」
「良かった。じゃあ、あと少しだけど、野々山さんも木本さんも楽しんでね」
遥香の元から離れる若木。この時、聞き耳を立てていた周りのメンバーとその場に居合わせた久美、千絵が遥香の察しの悪さに涙を流し、心の底から若木にエールを送っていた。
(察しの悪い娘ですいません)
(頑張れ、監督)
(いや、その男心は気付いてやってくれよ)
色んな考えや想いが交差する中、遥香の対応に大きなため息を付く久美と千絵。
「遥香、マイペースにもほどがある。若木君、青春してるね」
「性春だよね」
「久美。なんとなくだけど、字が間違っている気がするよ」
「「「お疲れ様でした~」」」
とある貸し切りにした小さな居酒屋。若木の一言でそこにいた全ての人間が笑顔になった瞬間だった。映画の完成パーティー。この完成パーティーには久美と千絵も参加しており、遥香と共にこの日を迎えた事を喜んだ。
「やったね、遥香。お疲れ様」
「うん、何とか期限まで間に合ったよ。これで学園祭で上映出来るよ」
「内容はまあ、うん。この場では深く語るまい」
「久美、それは言ってるも同然だからね。でも、映像があるだけでだいぶ違うし、若木君が演出をだいぶ頑張ったから脚本とは大分印象は違うと思うよ」
うん、それだけは自信を持って言える。若木君が演出を頑張ったし、SE班も効果音を頑張った。撮影班やCG班も意見を出し合って、良い作品にしようってみんなが思っていたから。
流石、映画好きが揃っている学校だけあるね。その道で食べていこうって集団でもあるから、みんな妥協って言葉がないんだよね。個人的には確かに脚本は……って感じだけど。つくづく脚本って大事だよね。
「そうなの? じゃあ、学園祭を楽しみにしてるよ。良樹さんと見に来るからね」
「あれから3ヵ月が過ぎているのに、まだそれだけ惚気れるんだね。そろそろ何か問題でも起こって良さそうだけど」
「良樹さんは私が大好きだし、私は良樹さんが大好きだから。問題なんてないない」
「法的には問題ないけど、モラル的には問題だらけだからね。人前でもイチャイチャするのは良くないよ」
「そこまで言われるほど人前ではイチャイチャしてないから!」
完成パーティーも終盤に入り、若木が遥香たちに近づいてきた。若木も他のメンバーからお酒を勧められたのか、赤い顔をしている。しかし、足取りはしっかりしていて、見た目ほどは酔っていない感じを遥香たちは感じていた。
「鈴木さん、お疲れ様。何とか完成まで持って行けたね」
「若木君やみんなが頑張ったからね」
「ううん、鈴木さんが副監督してくれてなかったら、心が折れていたかもしれない。本当に感謝しかないよ。駄目な総監督だったけど、支えてくれてありがとう。それと野々山さんも木本さんも協力してくれてありがとう」
「いやいや、久美の棒読みで何回もリテイク出してこちらこそすいませんでした」
「千絵がそれを言うの。千絵だって緊張して声が裏返っていたでしょう」
「まあまあ。私からも2人。本当にありがとう」
こんな映画馬鹿の私にいつも付き合ってくれる2人には本当に感謝しかない。久美も千絵も学業で忙しいはずなのに、頼めば笑顔でOKしてくれる。こんな友達が出来た事を本当に嬉しいと思っているよ。恥ずかしいから口に出しては伝えないけどね。
「で、鈴木さんに話があるんだけど」
若木のこの言葉に反応する久美と千絵。アルコールの為だけじゃない若木の顔の赤さ。若木の気持ちを汲み取る久美と千絵だったが、遥香には若木の真意は全く伝わっていなかった。
「なんか取り直したいシーンとかあった? あっ、面白い脚本でも見つかったの?」
「さすが遥香。見事なKY。あっ、私たちは少し席を外そうか?」
「あっ、いやいや大丈夫、大丈夫。あのさ、鈴木さん。良かったら学園祭の日に一緒に回らないかな?」
「へっ? なんで?」
遥香、その返事は乙女としてどうだろう? あなたも映画ヲタクでとはいえ、乙女カテゴリーの端っこの方に引っ掛かっているんだからさ。千絵でさえ高校時代のトラウマを克服して彼氏を作ったんだよ。恋愛経験のない監督が恋愛映画を作るって事になったらどうするの? もう少しで良いから恋愛にも目を向けようよ。多分、若木君からしたら、清水の舞台から飛び降りる心境だと思うよ。
「あ、いや、他のやつらの作品も見てみたいし、後で感想会を開くなら、監督と副監督の意見をまとめておいた方が良いかなって思ってさ」
「あ~なるほどね。うん、分かった。いいよ」
「良かった。じゃあ、あと少しだけど、野々山さんも木本さんも楽しんでね」
遥香の元から離れる若木。この時、聞き耳を立てていた周りのメンバーとその場に居合わせた久美、千絵が遥香の察しの悪さに涙を流し、心の底から若木にエールを送っていた。
(察しの悪い娘ですいません)
(頑張れ、監督)
(いや、その男心は気付いてやってくれよ)
色んな考えや想いが交差する中、遥香の対応に大きなため息を付く久美と千絵。
「遥香、マイペースにもほどがある。若木君、青春してるね」
「性春だよね」
「久美。なんとなくだけど、字が間違っている気がするよ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる