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第2章
第54話
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ディランはそんな私に、なおも食い下がった。
「納得いきません……!どうしてですか?最初に俺を専属従者にすると仰ったのはお嬢様の方でしょう!」
「……、お姉様が私たちにあの魔法をかけて『前の人生の世界』を見せたのはおそらくこのためよ」
困ったようにこちらを見ているカイロスに目をやった。彼は、お姉様が人身売買に関わったりその他の悪事や前の人生のことを知った上でお姉様に尽くしている。
……そして、お姉様は聖女になれなかった者の専属従者がどうなるかを知っていてカイロスを傍に置いている。
おそらく私たち双方にもそういった覚悟を持てと言いたいんだろう。
でも私は、例えディランが私のために命をかけると誓おうと、私は従者である前に他人であるディランと運命を共にしようとは思わない。
ああやって私がいない場所でも逞しく生きていた前の人生でのディランを見れば尚更。
「貴方が前の人生で生贄になった私を見てきたように、私も前の人生で自分の専属従者がどうなったか見てきたわ」
「……っ、俺は例え殺されようと拷問されようと構いません!黒髪の呪いだって思ったよりも有用でした、だから……!」
声を荒らげるディランの唇に、人差し指を添えた。きっと自分を守るために専属従者にしないと私が言っていると思っているんだろう、確かにそれは十分に理由としてある。
だけどそれと同じくらい、その方が都合がいいという理由もあった。専属になろうと頑張ってたディランには本当に申し訳ないけど。
「何も貴方を捨てると言っていないでしょう?貴方には学園に着いてきてもらうわ~。私の専属ではなく、今と同じく普通の使用人として」
「貴方が死ぬのをただ安全なところから見ていろと言うんですか……!?俺は聖女制度の廃止なんてどうでもいいんです!貴方さえ生きていられるなら……!」
お姉様が私たち妹のことにあまり関心がないように、私だってお姉様や弟にあまり関心はない。愛着が湧いてしまった己の身と妹とディランが無事であればなんだって。
「ええ、そうね。私だって聖女制度の廃止なんてどうでもいいと思ってるわ」
「え……?」
「えっ」
今まで黙って話を聞いていたカイロスまでもが声をあげた。
「大体ね、お姉様の作戦は甘すぎるのよ~。お父様にバレたら終わりなのに防音魔法も雑だし、まだ学園に入学しない妹にまで事情を話してしまうし。聖女の力だってまるで私たちに見せしめるようにしか使ってないじゃない。
きっとあれじゃ、聖女制度の廃止なんて出来ないわ」
「で、でも二番目のベルタ様……!さっきは協力するって」
「私の手の届く範囲でのことよ。きっとお姉様は前の人生で聖女制度の廃止が成功したから、もうそれしか道はないと思っているんでしょう」
カイロスに詰め寄られるも、軽く流した。
お姉様のそれは愚かで浅い人が陥る典型的な思考だ。そもそも前の人生で聖女制度の廃止が出来たのはかけおちの末の偶然だろうに。
聖女の力を見せて、衝撃的な真実を話して、あんな別世界にトリップするようなパフォーマンスすら見せてくれたお姉様。冷めた私とは逆で、とても劇場型の人間なんだろう。確かに私たちは前の人生でのお互いの未来を想像して心は揺れたけど、それに流されてはいけない。
まあ本当にお姉様が今度こそ聖女制度の廃止をできたならそれはそれで逃げる手間も省けてラッキーだし、情報提供のお礼としてノアの話を聞いてみるくらいのことはしてあげてもいいとは思っている。
でもそれ以上に協力するつもりは全くない。そんなことをするとは、私は一言も言っていない。
……さっきお姉様は、前の人生の私ならともかく、今の私なら協力者に値すると私に言った。それを思い出して、少し笑ってしまう。
「残念だけど、お姉様は前も今も私の協力者に値しないわ」
「納得いきません……!どうしてですか?最初に俺を専属従者にすると仰ったのはお嬢様の方でしょう!」
「……、お姉様が私たちにあの魔法をかけて『前の人生の世界』を見せたのはおそらくこのためよ」
困ったようにこちらを見ているカイロスに目をやった。彼は、お姉様が人身売買に関わったりその他の悪事や前の人生のことを知った上でお姉様に尽くしている。
……そして、お姉様は聖女になれなかった者の専属従者がどうなるかを知っていてカイロスを傍に置いている。
おそらく私たち双方にもそういった覚悟を持てと言いたいんだろう。
でも私は、例えディランが私のために命をかけると誓おうと、私は従者である前に他人であるディランと運命を共にしようとは思わない。
ああやって私がいない場所でも逞しく生きていた前の人生でのディランを見れば尚更。
「貴方が前の人生で生贄になった私を見てきたように、私も前の人生で自分の専属従者がどうなったか見てきたわ」
「……っ、俺は例え殺されようと拷問されようと構いません!黒髪の呪いだって思ったよりも有用でした、だから……!」
声を荒らげるディランの唇に、人差し指を添えた。きっと自分を守るために専属従者にしないと私が言っていると思っているんだろう、確かにそれは十分に理由としてある。
だけどそれと同じくらい、その方が都合がいいという理由もあった。専属になろうと頑張ってたディランには本当に申し訳ないけど。
「何も貴方を捨てると言っていないでしょう?貴方には学園に着いてきてもらうわ~。私の専属ではなく、今と同じく普通の使用人として」
「貴方が死ぬのをただ安全なところから見ていろと言うんですか……!?俺は聖女制度の廃止なんてどうでもいいんです!貴方さえ生きていられるなら……!」
お姉様が私たち妹のことにあまり関心がないように、私だってお姉様や弟にあまり関心はない。愛着が湧いてしまった己の身と妹とディランが無事であればなんだって。
「ええ、そうね。私だって聖女制度の廃止なんてどうでもいいと思ってるわ」
「え……?」
「えっ」
今まで黙って話を聞いていたカイロスまでもが声をあげた。
「大体ね、お姉様の作戦は甘すぎるのよ~。お父様にバレたら終わりなのに防音魔法も雑だし、まだ学園に入学しない妹にまで事情を話してしまうし。聖女の力だってまるで私たちに見せしめるようにしか使ってないじゃない。
きっとあれじゃ、聖女制度の廃止なんて出来ないわ」
「で、でも二番目のベルタ様……!さっきは協力するって」
「私の手の届く範囲でのことよ。きっとお姉様は前の人生で聖女制度の廃止が成功したから、もうそれしか道はないと思っているんでしょう」
カイロスに詰め寄られるも、軽く流した。
お姉様のそれは愚かで浅い人が陥る典型的な思考だ。そもそも前の人生で聖女制度の廃止が出来たのはかけおちの末の偶然だろうに。
聖女の力を見せて、衝撃的な真実を話して、あんな別世界にトリップするようなパフォーマンスすら見せてくれたお姉様。冷めた私とは逆で、とても劇場型の人間なんだろう。確かに私たちは前の人生でのお互いの未来を想像して心は揺れたけど、それに流されてはいけない。
まあ本当にお姉様が今度こそ聖女制度の廃止をできたならそれはそれで逃げる手間も省けてラッキーだし、情報提供のお礼としてノアの話を聞いてみるくらいのことはしてあげてもいいとは思っている。
でもそれ以上に協力するつもりは全くない。そんなことをするとは、私は一言も言っていない。
……さっきお姉様は、前の人生の私ならともかく、今の私なら協力者に値すると私に言った。それを思い出して、少し笑ってしまう。
「残念だけど、お姉様は前も今も私の協力者に値しないわ」
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