風が吹く丘

失恋

冷たい風が吹き始めた頃、私は失恋した。

三年付き合ってた。結婚も考え出した頃、突然別れを告げられた。

大学を出て、この会社に入社して3年目。

友達から「そろそろ寿退社じゃないの？」ってよく言われてたのに。

なにもかもが嫌になる。

有給を取って、実家に帰ることにした。

実家には戻らず、ホテルに泊まる事にしたのは両親に説明する事が億劫だったから。



私の住んでたこの街に私の好きな場所がある。

海の見える小さな丘。寂しい時、辛い時、いつもここに来ていた。

高校までここで暮らし、大学から向こうで暮らしている。

久しぶりにこの丘にやってきた。7年ぶりかな。

変わってなかった、少しホッとして涙ぐむ。



なぜ？私は振られたのかわからない。

私に悪いところがあったなら言ってくれてもいいのに、直せるものは直すのに。

理由も聞かせてもらえずただ別れをを告げられた。

出会ってから今までケンカした記憶がない。

今考えると、お互い本音を隠していたのかもしれない。

きっと愛されてなかったんだろう。

私は愛してたんだろうか？

そんな事、もう今更どうでもいい。

夕方の海、夕日を反射して寂しく煌めく。

気温が下がる、私はホテルに戻る。

有給を取って、こんなとこに来て失恋した心が癒されるのだろうか？

癒される訳がない。全てが面倒になって逃げてきただけなんだ。

帰ろう。彼は私の太陽ではなかった。ただそれだけだ。

また私の太陽を探す旅に出ればいい。

いつかきっと見つかるはず。私の太陽。