【完結】やり直し令嬢は義弟の復讐を回避したい

白雨 音

文字の大きさ
12 / 17
本編

11 アリアナ ハワード


◆◆ アリアナ ◆◆

「駄目だった!オフェリーのヤツ、全然話を聞いてくれないんだ。
しかも、ダントリク伯爵に知られて抗議が来て、両親は激怒してるよ」

ハワードはオフェリーとの復縁の為に動いたが、逆に増々悪い立場に立たされてしまった様だ。

「オフェリーの癖に、生意気ね!」
「全くだよ、折角僕が婚約者に戻ってやるって言うのにさ…」
「もっと、確実な手を考えましょう、オフェリーが告げ口出来ない様にね…」

そうして二人で計画を練っている間に、オフェリーはルシアンと婚約してしまった。

「くそ!相手はルシアンだって!?僕の何処があいつより劣るって言うんだよ!」

ハワードはルシアンの事になると怒りが沸くらしい。
アリアナの目には、ルシアンは結婚相手として申し分無く映った。王立貴族学院を飛び級で卒業しているから、優秀なのは間違いない。綺麗な顔をしているし、スタイルも良い。人気もあるが、淡泊で女性を寄せ付けない雰囲気があり、表立っては騒げなかった。隠れファンが多いのよね…ルシアンが相手なら、さぞ羨ましがられるだろう。

オフェリーばかり、ズルイわ!!

折角、ハワードを奪ったというのに、これでは意味が無い。
今度はルシアンを奪う?だが、気真面目で理屈っぽい男はアリアナの好みではない、想像しただけで面倒だった。
ハワード位抜けていた方が扱い易いのよね~。

でも、このままオフェリーを幸せになんてさせない!!

アリアナの対抗心は、修復出来ない程に拗れていた。


◆◆

その日の昼近く、一台の馬車がダントリク伯爵家から出て来た。
店が立ち並ぶ大通りを抜け、住宅街を行き、田園から小さな林に入った時だ、前方から男たちが飛び出して来た。
「死にたくなければ、止まれー!」
馬車はあっという間に囲まれ、御者は馬車を置き去りにして逃げ出した。
馬車のドアが乱暴に開けられ、「居ましたぜ!女だ!」という声と共に、黒髪の女性が引っ張り出された。
後ろ手に縛られ、大きな袋を被せられ、荷物の様に運ばれる。
「よーし、おまえら引き上げるぞ!」
頭の指示で、男たちは木々の間に潜ませていた馬に乗り、その場から走り去った。

◆◆ ハワード ◆◆

茶会の名目でオフェリーをマロイ男爵家に招き、途中の林で賊に襲わせ、オフェリーを拉致させる。
近くの使われていない小屋で乱暴をし、そこをハワードが目撃する。
傷物になれば醜聞は免れない、ダントリク伯爵に口止めを条件に、結婚を認めさせる___

これが、オフェリーと結婚する為に、ハワードとアリアナが立てた策だった。

ハワードは木々に囲まれた小高い場所に身を潜め、今は使われていない古い小屋を伺っていた。
幾らかして手配通り、賊たちの乗る馬が駆けて来た。
賊たちは何やら大きな袋を抱えて小屋に入って行った。あの中にオフェリーが入っているのだろう。

「オフェリーも可哀想にな」

泣き叫んでも今更遅い、俺を袖にするからだ、大人しく俺と結婚していればいいものを、全く、馬鹿な女だ。
だが、これで少しは大人しくなるだろう…
のんびりと煙草を吸い、今後のアリアナとの未来に考えを馳せた。


「おっと、出て来たな」

小屋から賊たちがぞろぞろと出て来た、そして馬に乗り走り去る。
ハワードは急いで煙草を消し、馬に乗ると、一気に坂を駆け下りた。
馬を小屋の脇に結ぶと、身形を整え、小屋の扉を大きく開き、薄暗い内を見回した。
小屋の真中で長い黒髪の女が蹲っていた。

「オフェリー!!」

ハワードは彼女に駆け寄った。
黒っぽい、飾り気の無いドレスで、相変らず地味な女だ、これでは色気も無いが、憐れみは増しそうだと内心で嘲笑う。

「ああ、可哀想に!賊を見たんだ、あいつ等に襲われたんだね!?」

心配そうに言いながら、ハワードは高揚が隠しきれなかった。
これで、オフェリーは俺たちの傀儡だ!ダントリク伯爵家の財産も全て、好きに出来るんだ!

「こんな事が知れたら、あいつはきっと君を捨てるだろうね、だけど、君には僕がいるよ!
君が傷物になっても、僕は受け入れるよ、君を愛しているからね___」

ハワードは肩を抱こうと手を伸ばしたが、それは「バシ!」と強い力で払われた。
オフェリーが立ち上がり、ハワードは少々困惑した。

「オフェリー?ああ、動揺しているんだね…」

「動揺?するのはお前の方だ___!」

ゴツツ!!!

突然、ハワードは後頭部に衝撃を受け、意識が飛んだ。
正確には回し蹴りを喰らったのだが、その速さにハワードは残像すら見えていなかった。
ハワードの体は糸の切れた人形の様に、その場に沈んだ。

「十発は殴ってやろうと思っていたのに、一発で沈むな!」

女は辛辣に言い、ハワードの体を踏み付けた。


ハワードが目を覚ますと、そこは良く知るベラミー伯爵家の応接室だった。
だが、自分の体は縄で縛られ床に転がされている。身動ぎすると後頭部がズキズキと痛んだ。

「父さん!?これは一体、どういう事ですか!?」

ソファには父と母の姿があり、二人は虫けらを見る様な顔で自分を見た。

「おまえというヤツは…つくづく救い難い卑劣漢だな、まさか、オフェリー嬢を賊に襲わせるとは…」

何故それを!?
驚き過ぎて、危うく口から出る処だった。

「ま、まさか!僕がそんな酷い真似をする筈無いじゃありませんか!
誰がそんな事を言ったんです?僕はオフェリーを助けに行ったんですよ!」

「もう、止めて頂戴!全て露見しているのよ!これ以上恥を掻かせないで!」
母が悲鳴を上げ、父がその肩を抱いた。

「ハワード、誰がおまえをここに連れて来たと思うんだ!」
「誰ですか?」

ハワードはオフェリーに会い、殴られて気を失った事を思い出した。
まさか、雇った賊では無いだろう、ベラミー伯爵家の名は出していない。
アリアナとも思えない…大体、縛られているのだから、味方で無い事は確かだ。
まさか、オフェリーが?そんな馬鹿な…
あの内気で地味で華奢な娘に何か出来るとは思えない。

「僕ですよ」

後ろで大きな嘆息がし、何とかして体の向きを変えると、扉に凭れ、黒髪の女が立っていた。
黒っぽい、飾り気の無いドレスだと思っていたが、良く見るとメイド服に似ていた。
女は自分の頭を掴むと、その長い黒髪の鬘を取って床に放った。
女…いや、男だ。
銀色のショート、綺麗な顔立ちだが、女には見えない。

「まさか、おまえ…ルシアン…!?」

「二度も遅れは取りません、この落とし前は付けて頂きますよ、ベラミー伯爵子息」

残忍な笑みが浮かぶ。
静かだが揺ぎ無い怒りが見え、ハワードはゾクリとした。

ルシアンは教会の一件以来、ハワードとアリアナを警戒し、動きを監視していた。
アリアナが裏ルートで賊を雇った事から、何か企んでいると察し、逆に賊に金を渡し寝返らせ、計画を吐き出させた。
賊にはそのまま実行する様に言い、ハワードを現行犯で捕らえる事にした。
こんな計画を立てた二人が許せず、気が済むまで殴ってやるつもりだったが、思いの外、ハワードが弱すぎて叶わなかった。
そんな事を不満気に告白するルシアンに、ハワードは恐怖で青くなった。

「ハワードは廃嫡、勘当し、領地から追放の上、僻地にて労働に従事させる!
今後、永久に、ダントリク伯爵家の者に近付く事を禁ずる!」

父はハワードに厳しく言い放つと、今度はルシアンに向かい、深々と頭を下げた。

「これで、どうか、ご勘弁を…」
「ベラミー伯爵の誠意は分かりました、確実に実行される事を期待します」

ルシアンは満足そうに頷くと部屋を後にした。

「チッ、偉そうに!父さん、あいつは伯爵でも無ければ、ダントリク伯爵家の者でも無いじゃないか!」
「黙れ!ルシアン様は正式な伯爵代理だ、おまえ如きが口を聞けると思うな!
誰か!さっさとハワードを追い出せ!!」

父が人を呼ぶ。ハワードは逃げ出したかったが、縄でグルグル巻きにされていた為、それも叶わなかった。

「父さん!母さん!助けてよ!!僕が何をしたって言うんですか!!」
「煩い!ダントリク伯爵家が納得する処分を下せば、慰謝料は免除、周囲に口止めもしてくれると言うんだ、おまえだって後ろ指を指されたくは無いだろう!」

両親は慰謝料を払いたく無かったのだ、口止めにしたって、自分たちが社交界に出られなくなるのを恐れての事だ___
ハワードは裏切られた気がし、思いつく限りの暴言を吐き散らしたが、両親と弟はただ軽蔑の目で眺めていた。
ハワードは縛られたまま、荷馬車に乗せられ、ベラミー伯爵家から出されたのだった。

あなたにおすすめの小説

年下で可愛い旦那様は、実は独占欲強めでした

由香
恋愛
政略結婚で嫁いだ相手は―― 年下で、可愛くて、なぜか距離が近すぎる旦那様でした。 「ねえ、奥さん。もうちょっと近く来て?」 人懐っこく甘えてくるくせに、他の男が話しかけただけで不機嫌になる彼。 最初は“かわいい弟みたい”と思っていたのに―― 「俺、もう子供じゃないよ。……ちゃんと男として見て」 不意に見せる大人の顔と、独占欲に心が揺れていく。 これは、年下旦那様にじわじわ包囲されて、気づいたら溺愛されていた話。

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。  なんて、か弱く嘆いてなんていられない、私は幸せになるために嫁いだのだから。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

役立たずと追放された空想令嬢ですが、その知識は未来の科学技術でした。私を拾ってくれた冷徹公爵様に溺愛され、世界を変える発明で大逆転します!

aozora
恋愛
侯爵令嬢エリアーナは、頭に浮かぶ未来のビジョンを「荒唐無稽な空想」と断じられ、婚約者である王太子から大勢の前で婚約を破棄され、全てを失う。 絶望の中、追放先へ向かう道中で彼女が出会ったのは、隣国の冷徹な公爵カイウスだった。彼は、誰もが嘲笑したエリアーナの語る「空想」こそが、世界を根底から覆すほどの価値を持つことを見抜き、彼女に最高の環境と絶対的な信頼を与える。 「君の知識で、世界をアップデートしろ」 追放された令嬢が、その天才的な頭脳と最高の仲間たち、そして彼女を溺愛するハイスペックな公爵の支援を得て、自分を捨てた世界に壮大な逆転劇を繰り広げる。愛と情報革命の物語。

【完結】婚約解消ですか?!分かりました!!

たまこ
恋愛
 大好きな婚約者ベンジャミンが、侯爵令嬢と想い合っていることを知った、猪突猛進系令嬢ルシルの婚約解消奮闘記。 2023.5.8 HOTランキング61位/24hランキング47位 ありがとうございました!

ベルガー子爵領結婚騒動記

文月黒
恋愛
その日、王都より遠く離れたベルガー子爵領は、俄かに浮き足立っていた。 何せ、ついに領民一同が待ち望んでいたベルガー子爵の結婚相手がやって来るのだ。 ちょっとだけ(当領比)特殊な領地の強面領主に嫁いで来たのは、王都の男爵家の末娘・マリア。 だが、花嫁は領主であるベルンハルトの顔を見るなり泣き出してしまった。 最悪な顔合わせをしてしまったベルンハルトとマリア。 慌てるベルンハルトの腹心の部下ヴォルフとマリアの侍女ローザ。 果たしてベルガー子爵領で彼らは幸せを掴めるのか。 ハピエン確定のサクッと読めるギャグ寄り恋愛ものです。

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。